37. お腹が空いて
目を閉じてゆっくりとサングラスを外す。
そして、直ぐに色が付いている眼鏡をかけた。薄い茶色の色眼鏡ならば両目を隠すこともないので顔は分かる筈だ。
こんな事もあろうかと、ズボンのポケットには常に色眼鏡を入れていた。
若干、左目の瞳の下部分の赤色が色眼鏡をかけても少し濃い茶色のように映ってしまうが裸眼でいるよりかはマシだろう。
「さすが、オレ頭よすぎだな」
「……何が何でも外したくないんすね」
よく考えれば、旧五野八トンネルでもライトは使うが中はほぼ真っ暗だろう。トンネルの中で更に黒いサングラスなんてかけていたら前は見えるのだろうか……。
「暫くはこの色眼鏡を使うかぁ。あんまり左目、目立ってないよな?」
「何だか充血っぽく見えるから大丈夫っすよ!」
「瞳が充血する奴なんていねぇだろ」
ダラメットに聞いた自分が馬鹿だったとため息をついた。
「とりあえず、早くチェックインしようぜ。腹減ったし、風呂も入りたいし」
「そうっすね!」
この時は何も考えずに浮かれていた。"所持金"の事を思い出すまでは。
ホテルの入り口の前に立つと、左右にある警備カメラがこちらをジッと見ながら止まっていた。
──ピピピ
どうやら自分達の顔をメモリに記録したようだ。記録が終わると、警備カメラが再び外の方向へ向くと同時に入り口のドアも左右に開いた。色が付いた眼鏡なら大丈夫なようだ。
広々としたロビーにダラメットと自分は目を輝かせる。
「すっげぇええ! ひっさびさだよ、こんなホテル!」
「車内泊じゃなくて良かったっすぅ〜‼︎」
受付の方を見てみると、客の男性と女性のホテルスタッフが何やら揉めているようだった。受付は二箇所あったが、もう片方はスタッフがおらず閉まっている。お腹が空いたイラつきもあり片足をパタパタと動かしながら仕方なく待つことにした。
「なぁ、このガラス細工あんた達に預けて何で壊されなきゃいけないんだよ? 見ろよ、ここ! 少し欠けてんじゃねぇか‼︎ どうしてくれんだ⁉︎」
よく見ると客の男性が持っているのは鷹のガラス細工のようだ。だが、遠目からではあるがどこが欠けているのかよく分からない。
「も、申し訳ございません! 決して欠けるような事はしておりません!」
女性のホテルスタッフは涙声で何度も謝っていた。
「おい、上を呼べ‼︎ 上を‼︎ クビにさせてやる‼︎ ふざけんなよ」
「そ、それだけは……! 誠に……誠に申し訳ございません!」
女性のホテルスタッフは深々と頭を下げていた。見ているこちらも不快な気分だ。
「うわぁ……ひでぇっす。面倒な奴に捕まってかわいそうっすね、兄貴……あれ? 兄貴⁉︎」
男性客の肩を掴むと後方に投げた。
「な、何だ⁉︎」
「邪魔なんだよ、さっさとどけよ」




