35. コール海パニック
「来た来たぁ! コール海‼︎ 一ヶ月ぶりだなぁ」
腕時計を見ると時刻はそろそろ夕刻になる。このまま旧五野八トンネルに向かえば、山道は間違いなく暗くなっており危険だ。どこかに泊まれる場所はないだろうか。
「なぁ、今日はどこかで休まないか? 暗い山道はオレでも危ないからな」
「ザン兄貴の運転なら大丈夫っすよ!」
「大丈夫じゃねぇよ。さっさとどこか泊まれる場所探せ!」
何故かダラメットは自分の方を向いたまま不気味な笑みを浮かべている……。
気になりダラメットが見ている視線の方を向くと、二人の女性が乗ったオープンカーが隣を走っていた。
「ワォ‼︎」
慌ててハンドルを切り、車を少し近付ける。
「へいへーい、そこのお二人‼︎ 眩しいね‼︎ オレの車に乗ってかない⁉︎」
女性達は小さく笑うと車の速度を上げて先に行ってしまった。
ダラメットが冷たい視線でこちらを見ている。
「……何だよ? こっち見るな」
「ダメっすねぇ。眩しいって何すか? 太陽がすか? 何が眩しいんす? ププッ」
「うるせぇ、お前も失敗するくせに」
話しているうちに、髪の長い女性二人が乗っている別のオープンカーが見えてきた。
「いいっすか? ザン兄貴、俺のナンパを見てるっすよ。ちゃんと学ぶっす」
随分と自信があるようなので見させてもらおうと、車の速度を上げてオープンカーに近付いた。少しオープンカーより後方にいるので二人の顔はよく見えない。自信満々のダラメットのナンパ方法とは……。
「美人っす、美人っすねぇ〜‼︎ そこのお二人さん‼︎ 俺の車にカモーンっすぅうう‼︎」
「……」
思わず口を開けたままダラメットを見ていた。ダラメットの車ではなく自分の車で嘘をついているうえに、自分より酷い気がするが女性達は反応してくれるのだろうか。オープンカーに乗っている髪の長い女性達がこちらを振り向いた。
「あらん、もしかして……ナ・ン・パ?」
……よく見ると、二人共髭が生えている。どうやら髪の長い"男性"だったようだ。
自分とダラメットは氷の像のように凍りついていた。慌てて離れるが、今度はオープンカーの方から近付いて来た。
「ああん、離れないでぇええ‼︎ 遊びましょうよぉおおおお‼︎」
ぶつかりそうになるぐらい近付いて来ている。このままだとぶつかって更に自分の愛車にキズが付きかねない。もっと離れようとするが対向車線にかなり入ってしまうので危険だ。
「ちょっ⁉︎ こっち来んなぁああ! ダラメット、お前あっちの車に乗ってこいよ!」
「い、嫌ぁあああっすう‼︎ 兄貴ー助けてー‼︎」
「くそっ! しっかり掴まってろ‼︎」
車のアクセルを踏み速度を更に上げて、オープンカーを超えると急いで先へと進んだ。




