34. コール海南方面
「ぁぁあああ、マジかよぉ」
だが、これは自分がやってしまった事である。今考えれば、ぶつかった時にもっと早く謝っていれば車の修理費を下げてくれていたかもしれない。ミリにダイヤの指輪をプレゼントすることができなくなってしまった。
「車にキズとヘコミがあるまま走らせるわけにもいかねぇからなぁ……」
残りの200万ゴルドで何かプレゼントを考えなければならないようだ。ダラメットは不思議そうに自分を見た後、何かを思い出したように手の平を叩いた。
「あっ! 兄貴、世界財産の情報を知っている人を酒場で一人紹介してもらったんすよ。その人かなり遠い街にいるみたいなんで、報酬金はその移動に使いましょう!」
更なる出費が必要となりそうだ……。
「だぁあああ! 報酬金の使い方は後だ! 後‼︎ さっさとトンネルに行くから早く乗れ!」
車のドアを強く引っ張った。運転席に座りクラッチを踏み込みエンジンキーを挿れエンジンをかけ始めると、ダラメットも慌てて助手席に座った。
ハンドルを握り、前を向く。
「さーて、想元山とやらに向かうか」
行き方としては、再びフォー森林とアスグ平地を抜けてコール海南方面から周って想元山へと向かう。約三時間程でコール海南方面に着くと予測していた。
「ダラ、暇だから何か曲流して。そこにミュージックプレーヤーがあるから」
「はいっす……あ、自動再生になってるっすね! とりあえず再生ボタン押しとくっす」
〈プレイリスト5.ラストを再生します〉
「フォー!」
「フォー!」
音量を少し上げると、ダラメットと共にリズムに合わせて身体を左右に揺らしながら車を走らせた。
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「へー、ザンツィルとダラメットに頼んだんだ」
ピンク色の髪のロングポニーテールの女性が左から右へ行ったり来たりしながら、ライトフォンで通話をしていた。
「ああ、ロキョウから連絡があった。アネア、必ず彼等より先に世界財産を見つけるんだ」
「分かりました、お任せください」
ライトフォンの通話を切った。
「どうせ、あの二人も見つけられやしないんだから」
旧五野八トンネルの前に立っていた。ラグファミリーが来る前にトンネルの中に入って奥まで行ったのだが……。
「奥をライトで照らしても、"真っ暗なだけ"で何も無かったし……本当に世界財産なんてあるのかな」
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コール海南方面までやって来た。セレン海と並ぶ程有名な海で海水浴をする人達にも人気である。だが、コール海には幽霊船といった話なども多くあり怖い海でも有名である。
特に夜のコール海は危険だと言われている。