33. T08
「兄貴ー! アイスコーヒー持って来たっすよー! 氷ギュウギュウに詰めたっすー!」
ダラメットの走って来る音と共に、コップの中に入っている氷の音も聞こえてくる。本当に氷を多く入れてくれたようだ。
「あれ?」
先程まで座っていたロキョウとミリがいないことに気付きダラメットは驚いていた。
ロビーが混んできたので、ミリは相談の対応をする為受付カウンターに戻り、ロキョウも他の依頼の承認をしなければならないようで受付の奥の部屋へ行ってしまった。
「あの二人なら、もう行っちまったよ。忙しいんだって。依頼紙、お前のも認証印は押してもらったからな」
「そうなんすね。俺達もそろそろ行きますかい?」
左手に持っている"何か"を忘れているようだ。
「ん」
右手を差し出す。
ダラメットの左手に持っているアイスコーヒーを飲んでから出発するつもりでいた。
「はい? 嫌だなぁ〜、ザン兄貴。車の鍵なら兄貴が持っているじゃないっすかぁ〜! もぅ、笑わせないでくださいっすぅ〜」
アイスコーヒーを持っていることを忘れているのだろうか。
「アイスコーヒーまだかなぁあああ‼︎」
……ロビーにまた自分の声が響いた。
─────
「はぁ、めんどくせ。何でトンネルの奥に世界財産なんて隠してるんだよ……」
ぶつぶつ言いながら駐車場に来ていた。旧五野八トンネルを見にいくのも面倒だが、助手席に座るのがダラメットであることもげんなりする理由だ。隣が美女だったらどれほど嬉しいか……。
「ザン兄貴、寝たらすいません‼︎」
「すいませんじゃねーよ、地図見とけよ。山の中で道間違えたら許さねぇからな!」
自分が長時間運転をすると、必ず助手席に座っているダラメットは寝てしまう。今回は山の中にあるトンネルということなので、迷わないようダラメットに地図を見てもらいながら行くしかない。
だが……もう既に旧五野八トンネルへ向かう道路は草木に覆われかけているそうだ。
〈崖になってるだろうし、慎重に行かねぇと……〉
「あ」
自分の車が駐めてある場所に着くと、車を見てとんでもない事を思い出していた。
「ぬぉおあああぁぁあああああ‼︎」
「な、何すか⁉︎」
そう、自分の車のキズだ……。
先程の3000万ゴルドの計算ではまだ手元に500万ゴルドが残る予定だったが、自分の車の修理費を入れて計算すると500万ゴルドも残らないような気がしていた。
「おい、ダラ! T08のキズ消しとヘコミ修理っていくらぐらいだっけ⁉︎」
「確か300万ぐらいっすかね。スカイラン社しか修理出来ないうえに、古いタイプだからとか何とか言ってて……兄貴?」
頭を抱えてしゃがみ込む。
「ダ、ダイヤの指輪が買えねぇ……」
「何言ってるんすか?」




