28. 想元山の過去
思わず机の上に置いてあったアイスコーヒーを一口飲んだ。
〈待て待て‼︎ 3000万はやべぇだろ⁉︎ 落ちつけ、オレ! まず、詫び金が約2000万だとして車の修理費が約500万……まだ500万ゴルドも残るじゃねぇか⁉︎〉
500万ゴルドもあればミリにダイヤモンドの指輪も買え、ファンとしてエネゼナにプレゼントを贈ることもできる。小切手を手に入れた時の妄想が止まらない。
「うへへへへ」
「兄貴、コーヒー溢れてるっすよ」
アイスコーヒーが入った紙コップを勢いよく机に置いた。
「ロキョウさん、オレ受けまーーす‼︎」
勢いよく右手を挙げる。
「ええええええ⁉︎ ま、待ってくださいっす! やべぇっとこっすよ!」
こんな素晴らしい報酬金の依頼を受けなかったら、きっと他の盗賊達や依頼を受けに来た人達にロキョウは任せてしまうだろ。
ロキョウはニコッと笑うと今回の依頼書を見せてきた。
依頼書には既に"二組"がこの依頼を受けていると書かれていた。驚いて思わず依頼書を奪い取ってしまう。
「おいおい、何だよ! もう誰か受けてんじゃねえか⁉︎ ロキョウさん!」
「大丈夫。昨日、依頼を受けた彼らからまだ報告を受け取っていないから奥を見に行けていないんだよ」
奥を見に行けていない? ただのトンネルに何をそんなに手こずっているのだろうか。きっと、あまり依頼をこなせていない人達に頼んだのだろう。
「あーあ、プロのオレが行けばすぐ終わんのになぁ」
ロキョウの顔から笑みが消えると、真顔でこちらを見ていた。
「ザンツィル、何故この依頼がすぐに終わらないか説明するよ」
サングラス越しからロキョウを睨みつける。まるで、お前もすぐには奥を見に行けないと言われているかのようだ。
「ああ、お願いしますよ」
「まず、旧五野八トンネルがある想元山は過去の5番と8番が殺し合いをしたと言われている場所なんだ」
「えっ」
初めて聞いた事だった。確かに、先程過去の36番と関わりがあるとは言っていたが……。
「彼らを慕っていた多くの者達も命を落としたそうだ。あの山は悲しい過去があった場所、だが……コール海方面に短時間で着けるため、そこにトンネルを掘り戦った二人の番号から五野八トンネルと名付けられた」
ダラメットは大きなため息をついた。
「それで、変な事が起きまくっていたらしいっすね。通った車の運転手はトンネル内で"立っていた人"を見たとか……」
何故だかは分からないが、背中に少し寒気を感じる。
……トンネル内に人が立っていたとは?
「やめろよ、ホラーじゃねえか。ぐ、偶然、いたとかじゃねえの? おかしいけどさ」
ダラメットはギョロとした目でこちらを向いた。
「それが兄貴、すぐにブレーキをかけて顔を上げたら……いなかったらしいっすよ……」




