27. 聞き間違い
どうやら有名なトンネルらしいが、初めて聞いた名前だった。
よく車で各地をドライブするが聞いたこともなければ通ったこともないので、少し気にはなるが……。
ふと、誓約書に視線を向ける。
「何があっても……報告すること。……何があっても……中央依頼店は責任を……負わない⁉︎ 何だよ、これ‼︎ 相当やべぇじゃん‼︎」
中央依頼店が責任を負わないということは、自分の心体に何か影響があるかもしれないということだ。そして、この誓約書を書かされる場合は、依頼を達成すると超高額な報酬金が必ず得られるということでもある。トンネルの奥を見に行くなんて簡単な依頼だとは思うが何故誓約書まで書かされるのだろう。
……ダラメットの震えている様子を見ると、ただのトンネルではなさそうだ。
「なぁロキョウさん、その旧ゴーヤトンネルって今はまだ使われているのか?」
ダラメットの震えが急に止まり、真顔で左耳に右手を近付けて話しかけてきた。
「ザン兄貴、五野八っす」
「フフ」
ミリは冷たい笑みを浮かべていた。まるで……馬鹿がいるよ、と言わんばかりの笑みである。ぼーっと聞いていたせいか、ゴーヤと聞こえていた。恥ずかしさのあまり顔の内側が熱くなってくる。放っておくと顔が真っ赤になってしまうので慌ててダラメットの方を向いた。
〈えっ? ゴーヤじゃねぇの⁉︎ はっず‼︎ おかしいと思ったんだよなぁ‼︎〉
ダラメットを睨みつける。
「オレ、"ごのや"って言ったよ。何だよ、ゴーヤってゴーヤが収穫出来るのか? なぁ?」
「いや、今兄貴がゴーヤって言ってたっす」
「……やめようぜ、空耳の話を延ばすのは。ダラ、お前の聞き間違いだよ」
ダラメットの視線が冷たくなっていたが、気にしないことにした。ロキョウはニコニコと笑っている……また心を読んでいたのだろう。6番力は本当に嫌な力だ。
「んでっ‼︎ その、ごのやトンネルってのは今も使われているんですか⁉︎」
機嫌が悪いのでキレ気味に話していた。ミリの前で恥をかかせたダラメットから少し離れる。自分なりの報復だがダラメットは気付いていないようだ。
「使われていないよ」
「はぁ? だったら奥なんて見に行く理由は?」
使われていないのなら放っておけばいいだろう。まだ使われていて補修等を頼まれているから自分達に見てきてほしいのかと思っていたが違うようだ。
「あー……ザン兄貴、噂とか聞いた事ないんすね。想元山自体が有名な場所っすよ」
「へー、そうなんだ。知らね」
ロキョウは今回の依頼の報酬金額が書かれた小切手を出してきた。
「はいはい、どうせ200万ゴルドぐら……はぃいいいいい⁉︎」
小切手には"3000万"ゴルドと書かれている。




