22. 読む者
驚きのあまり鼻の穴を広げたまま、物凄い形相でロキョウを見ていた。
心の中で思っていた事が自然と口から出ていたのだろうか。いや、間違いなく自分は黙っていた筈だ……あり得ない。驚いて思わず"はっ? "と言ってしまった。怒らせてしまっていないかと焦っていると、ロキョウは何故かまだ小さな笑みを浮かべていた。
「ハハ、びっくりしたかい?」
「何がですか?」
……ここは惚けるしかない。
「気付いているでしょう、ザンツィルさん」
再びため息をつきながらミリが話しかけてきた。
「……」
気付いている。
もしかしたらロキョウは人の心を読むことが出来るのでは、と。
ロキョウは多分……。
「すまないね、勝手に心を読んでしまって。どうも"6番力"を抑えきれないんだ」
そう言うと、ロキョウはスラックスのポケットからコインケースを取り出した。中から審判のコインらしき物を抜き出し裏返しにすると自分に見せてきた。
コインの裏側には"6"の数字が彫られている。
「審判の……コイン……⁉︎」
まさか、中央依頼店の受付長が6番の審判のコインに選ばれた人物だったとは。驚きのあまり、無言のまま前に座っている二人を見ていた。
中央依頼店の本部に、6番と15番の審判のコインに選ばれている人物がいるとは思ってもいなかった。
「……」
……今、自分の目の前には世界財産の一つである6番の審判のコインがある。
「ザンツィル、君が何を隠そうと読めてしまうということだ。これでもう言い訳はやめるかい?」
ロキョウは机の左端に審判のコインを置いた。いつ盗ろうかと鋭い視線でコインを睨む。だが、ロキョウはもしかしたら、わざと審判のコインを机の上に置いたのではないだろうか。
自分の力を試そうと。
「さて、話を戻そうか。ザンツィル、君には多額の詫び金と車の修理費を支払ってもらわなければならない。叫んだことは二度としないのなら許すとして、お金はそうはいかない。依頼主達が待っているからだ」
叫んでいたことは許してくれるようだが、口調からして詫び金等の金額は支払えなくても下げるつもりはなさそうだ。
「んじゃ、カジノ行きますよ。俺もさっさと金を集めにいこうと思っていたとこなんです」
「カジノかい? お金の件なんだが、もし君が良ければミリさんあれを……」
ロキョウは微笑んだままミリの方を向いた。
ミリも今、自身の両手で持っている紙の束から資料を探そうと下を向いている。
自分は36番力で二人が気付かない程度に、机上に置いてあったロキョウの審判のコインをこちらに向けて動かしていた。今なら僅かに手を伸ばせば盗れる距離だ。
……盗るなら今しかない。




