21. 言い訳を
「はい……」
次に言う言葉はもう分かっている。ロビーでの出来事をどうやって言い訳しようかとばかり考えていると閉じている目の近くに皺が寄っていた。
きっと"君は明日から中央依頼店出入り禁止だ"と言われる筈だ。
金持ちになる為に、もっと裏依頼も受けていこうと思った矢先にこれだ。とことん自分の人生はついていないように感じていた。
「はぁあああ……」
思わず大きなため息をついてしまったが、ため息をつくと幸せが逃げるという話を思い出し慌てて吸い込んだ。
何故かロキョウはニコニコとずっと微笑んでいる。
「ザンツィル、君の迷惑行為は警備カメラの録画映像で観せてもらったよ」
このままだとまずいと思い、何か言い訳をしなければと焦り始める。
「あれは……そうだ。起きたばかりでオレは寝ぼけてたんです! オレは故意で叫んだんじゃないんですよ〜。分かってくださいよ、ロキョウさん」
〈とりあえず、少しでも自分は悪くないように思わせないと〉
サングラス越しに焦った表情でロキョウを睨みつけていると、ロキョウから笑みがなくなり真顔になっていた。
「眠気かい? 君は車でここに来たようだね。入って直ぐに叫んでいたように見えたけど、まさか、運転中に寝てたなんて事はないよね?」
「へっ?」
〈やべぇ! 眠気運転は物凄い重い刑に処せられるんだった! くそっ、何で車で来たって分かったんだ……⁉︎ この嘘だとまずい!〉
ふと、視線を天井へ向けると駐車場の方を向いている警備カメラがいくつかある事に気が付く。
「はーん、なるほどなぁ……!」
すぐに言い訳を変えないと保安雇人を呼ばれかねない。
「あと、もう一つ。依頼を受けに来た方で灰色の車に酷いキズがあったんだけど……君は知らないかい?」
「し、知らないですぅ〜」
目線を思わず逸らしてしまった。まさか、車をぶつけた瞬間も警備カメラに録画されていたのだろうか。
ロキョウは両手を組んだまま、黒い目はこちらを睨んでいた。
まるで、何もかも分かっているかのようだ。
──ドッドッ
焦りで自分の心臓が高鳴っているのが分かる。車の事までバレてしまうとは思ってもいなかったからか、言い訳を考えようにも思い付かない。
〈くそっ! このままだと高級車の修理費まで請求されちまう! このロキョウって受付長、とんでもねぇ野郎だ……!〉
ニッコリとロキョウは再び微笑んだ。
「まぁ、請求されるだろうし、とんでもない野郎で申し訳ないね。迷惑行為は見逃すわけにはいかないんだよ」
「はっ……?」
何故、自分の心の中で考えている事が分かる?




