18. TB大好きダラメット
自分の愛車は、"Srun"という車名の車だ。
アミトレアでは有名な車メーカーの一つである"スカイラン社"が製造している。自分が乗っているのはタイプ8という少し古めのタイプで、最新タイプは11まで販売されている。六年前、自分がカジノで大儲けして買った初めての車がタイプ8で、思い入れがあるだけに最新タイプにするつもりは全くなかった。
どうやら、エネゼナはタイプ8が発売された時からCMに出演していたようだ。その時からTBの一人だったのだろうか。TBになるための基準とは何なのだろう。そんなに凄いモデル達なのか自分にはさっぱり分からなかった。
〈待てよ……〉
ふと、思う……自分もなれるのでは?
ロビーに設置されている無料のドリンクサーバーからアイスコーヒーを持ってくると、ダラメットは正面に座った。
「なぁなぁ、オレもTBになったら凄いと思わね?」
「ぶほっ!!!!」
ダラメットは飲んでいたアイスコーヒーを吹いた。首をあり得ない速さで横に振っている。
「アハハハハ! 笑わせないでくださいっすぅ〜兄貴〜! 冗談きつすぎっすよぉ〜!」
笑っているダラメットの胸倉を掴んだ。
「なぁ〜にが、そんなにおかしいんだ?」
大きく口を開けたまま、ダラメットは自分を物凄い形相で見ていた。
……三分は経っただろうか。
まるで石像になったかのように、ダラメットは唖然としたまま喋ろうとしない。モヒカンを潰そうと強く叩いても反応がなかった。
「おーい、帰ってこーい」
「ハッ! 危うくザン兄貴の所為で意識が飛ぶところだったす! 危ねぇっすぅうう!」
意識が飛びかけていたダラメットをおいて、中央依頼店を出ればよかったと後悔する。
アイスコーヒーをゆっくりと一口飲むと、ダラメットはこちらを睨みながら話し始めた。
「TBになるには、いくつものオーディションをクリアしなければならないと雑誌で見たことがあるっすよ。その中でも、物凄く厳しいおっさんがいるっていう噂らしいっす」
「へぇ〜」
鼻に詰めていたティッシュを抜いた。
「何人もの"夢"を潰してきた人物らしいっすからね……そのおっさんから合格を貰えた人達は、オーディション中でも号泣だったらしいっすよ」
「ふ〜ん」
ティッシュをゴミ箱に捨てた。
……殺気を感じる。
ゆっくりと視線をダラメットの方へと向けた。ダラメットは不思議なオーラを纏いながら、こちらを鋭い目つきで見ている。
〈まさか……間違いない‼︎ こいつはTBファンの中でもガチな奴だ‼︎〉
「アニキィ、キイテタッスカァ?」
不気味な笑みで、こちらを見るダラメット。
「あ、ああ、当たり前じゃん! オーディションは大変だよなぁ! うん、分かる分かる」
紙コップを持っている右手が震え、中に入っているアイスコーヒーは小さく揺れていた。




