15. 二色の左目
まさかとは思っていたが……。
「⁉︎」
自分がかけていたサングラスを金色の髪の女性が勝手に外してしまった。しっかり聞こうと思い、油断して顔を近付けた瞬間を狙っていたかのような素早い手付きだった。
久々に自分の瞳に中央依頼店の眩しい電灯の光が当たる。
「マジかよ……全く手付きが見えなかった。チッ!」
女性と目が合い、慌てて左目を左手で隠したが、どうやら見られてしまったようだ。
自分の左目を見た女性の顔からは笑みが消え、驚いた表情をしている。
「左目だけ……不思議な瞳の色ね」
さすがに女性には怒らない自分も少し怒りが湧いてきていた。勝手に取るのはあまりにも失礼だろう。
「サングラス、早く返せ。こんな目見て怖くないのか?」
自分の両手が少し震えている事に気が付いた。
左目の二色の瞳を気味悪がり、金色の髪の女性も逃げてしまうだろう……いつもの事だ。
「……?」
サングラスを渡そうとしてこないので、気になり俯いていた顔を上げた。
何故か金色の髪の女性は微笑んでいる。サングラスも自分に返そうとしない。
「隠さないで」
そう言うと、女性は自分の左目を隠していた左手を掴み無理矢理下げてきた。
「何すんだよ! さすがに怒るぞ!」
女性はジッと自分の左目を見ていた。こちらを見ている目は輝いているように見える。
「その瞳は本物?」
意味が分からない質問に自分の頭上にはたくさんのはてなのマークが浮かんでいた。
「本物かどうか取って見せてやろうか?」
少し怒り気味に言い返す。
「本物なんだぁ! 薄い茶色の中にある赤い色凄く綺麗ね。何で隠しているの?」
……少しの間の沈黙。
初めて綺麗な色と言われ、どう反応すればいいのか分からなかった。こんな変な色の何が綺麗なのだろうか。思い出したくない幼い頃の記憶を思い出してしまいそうだ。
「綺麗? オレはこの瞳の色の所為で何度も死にかけた」
「えっ?」
女性の顔から再び笑みが消えた。
「こんな目で貧しい街に居てみろ。皆んな怖がって近寄りもしないから食料も貰えないし買えない。挙句には気味が悪いだとよ」
「……」
金色の髪の女性は黙ると、そっとサングラスを机の上に置き、座っていた椅子から立ち上がった。
立ち去るのだろう……せめて名前だけでも聞いておけば良かった、とため息をつく。落ち込んでいると、何故か金色の髪の女性が自分の方へと近付いて来ていた。
〈へっ?〉
自分が座っている椅子の肘掛けに長い脚を組んで座る。
〈な、な、な、なんだぁあああ⁉︎〉
心の中で大きく叫んでいると、女性は顔を自分の顔へと近付けてきた。
「物凄く気に入っちゃった。私は"エネゼナ"、あなたは?」
「ザ、ザンツィル」
「ねぇ、キスしていい? ザンツィル」
更に顔を近付けてくる……。
〈ワーォ……えっ、今日何なのオレ?〉




