145. 語るか
「ん? サングラス? そういえば……」
考え込んだ表情で何故かウルフはこちらを見ている。
何か言わなければ。
「あっ……あっー! 最近、サングラスってブームになってますよな! オレもサングラスが好きなんでザンツィルって人と気が合いそうですぅ〜!」
全くブームにはなっていないが、今は夏の季節なのでサングラスをかけているのは自分だけではない筈だ。とりあえず、今は自分もとてもサングラスが好きだという事をアピールした方がいいかもしれない。
サングラスをかけていたのに、全く興味が無いような態度を見せたら逆に怪しまれるかもしれないからだ。左目を隠すためにかけている事も言わない方がいいだろう。
自分の本名は教えていない。落ちついて小さく深呼吸をする。
自分が、ザンツィルだとバレる筈がない。
嘗てない程のストレスを感じているのか、自分でも気付かない内に歯を食いしばっていた。
〈一人だと……色々大変だ〉
誰かに頼れない事が、こんなにも不安になるとは。
「てかさ、その捕まえている奴の名前って聞いた?」
「ああ、ちょっと聞いてみる」
ウルフが再びこちらに近付いて来た。思わず睨み付けようとしたが、喧嘩を売るわけにもいかないだろう。
満面の笑みで微笑む。若干、口元がひきつっているが気にしない。
「ヤング、名前は何ていうんだ?」
「"ザンベール"ですぅ〜。さっきも言ったじゃねぇ……言いましたよぅ」
偽名を言ったとバレたら、今度こそマズイかもしれない。だが、本名を言うわけにもいかないだろう。
「それは……本当だな?」
何なのだろうか……ウルフの目を見ていると変な感覚に陥りそうになる。まるで、自分の背後に狼が立って今にも首を噛みちぎりそうな……。
〈……ダメだ、しっかりしろ! オレ!〉
「本当ですぅ〜! ザンちゃんって呼んでね!」
全く出来ていないウィンクをした。
「そうか、ヤングはザンベールっていうんだな。ジェネレー、ザンベールっていう名前らしい」
どうやら、今度は嘘だとバレてはいないようだ。安心すると身体中の力が抜けていた。
「へー。じゃあ、ザンベールよろしくな」
「よろしくですぅ〜」
〈あっぶねぇ……心臓に悪過ぎる〉
「それじゃあ、一旦ライトフォン切るぜ。もう着くから待っててくれよー。デアの件もさっさと終わらせちまおう」
「分かった」
「⁉︎」
まさか……三人でデアを連れ去るつもりなのだろうか。
──ピーピー
通話が切れて、静かな部屋で再びウルフと二人きりになってしまった。焦りから思わず目が泳ぎ始める。なるべく視線をウルフに向けないようにして、話しかけてこれないようにしなければ……。
「ヤング、あいつらが来るまで少し語るか」
「結構ですぅ〜」
〈話しかけてくるなぁああああ‼︎〉
あり得ない速さで首を横に振る。




