143. 心の中で誓う
〈クラム何だって⁉︎〉
「は、入るつもり無いなの……」
緊張からか何故かナノンの口癖が移っている……。だが、本当に入るつもりは無い。ここで嘘でも入ると言ってしまったら、アジトに連れて行かれてしまうかもしれないと焦っていた。何をしてくるか分からないウルフが近くにいる間は無闇に動く事も出来ない状態だ。
〈くそっ、審判のコインが無い今、一人だと何も出来ねぇ〉
……ダラメットがいれば、状況は変わっていただろうか。
慌てて首を横に振る。来る筈が無いダラメットの事なんて考えてはいけない。この状況を自分一人で何とかしなければ。
自分の首にウルフの鉄の手を当てられている以上、動く事は出来ない。ウルフ達の仲間が来るまでは大人しくしていなければならないだろう。
「仲間に入るつもりは無いって言ってるなの。どうするなの、ウルフ?」
ウルフは突然、腕を自分の首に回してきた。
〈はっ?〉
「ヤング、俺は出来れば若い命を殺したくはない。もう一度聞くぞ、入るつもりは……あるよな?」
その言葉を聞いた途端、無言で固まってしまった。
入るつもりは無い、と言った瞬間に回している腕を鉄にして自分の首を潰すつもりだ。
「……」
どうすればいいか思い付かず、冷や汗が止まらない。もし、自分がザンツィルだとバレてしまったら殺されてしまうのだろうか。こんなに焦るのは久々かもしれない。
……逃げ出す方法は無いだろう。
〈脅しかよ‼︎ この野郎、ふざけやがってぇええ‼︎〉
「何も出来ないから入ったところで役に立たないと思うんですぅ〜。盗みとか全然やった事ないですしぃ」
手を弱々しく小さく左右に振る。とりあえず、自分は何も出来ないという事を演じなければ……仲間にしたところで意味がないと。
だが、ウルフは首に回している腕に力を入れ始めた。
「あの気配の消し方をしていて盗みをして無いは無いな。本当に……いい加減、嘘をつくのはやめろ」
──ミシッ
「がっ……!」
首の骨が押しつぶされそうだ。気道まで押しつぶされているのか、このままだと呼吸が出来なくなってしまう。苦しさの余り、声が出せない。
「あれ? そいつを殺してしまうなの?」
ナノンがそう言った途端、ウルフは腕の力を緩めた。
「ゲホッ! ゴホ!」
〈いやいやいやいやいや、危なかったぁああ‼︎〉
隣にいるウルフから物凄い殺気を感じる。次に何か変な事を言えば、間違いなく……。
「どうだ? 入るつもりは?」
「ちょ、ちょっと興味がありますぅ〜」
ウルフの審判のコインを盗ったら絶対に本気で殴る、と心の中で誓った。




