140. 銀色に変わる
こちらに向けているウルフの手をよく見てみる。
鉄になっている状態の手の皮膚は銀色に変色していた。どうやら鉄にした際に皮膚の色に変化があるようだ。もし、ウルフが20番力を使って攻撃してきた時には、身体の何処の部分を鉄の状態にしているのか色で分かるだろう。
だが、今は自分も審判のコインを持っていないので無闇に暴れれば危険だ。
いったいウルフは何者なのだろう……分かる事は唯のテレビでの有名人なんかではないという事だ。ウルフの彼女だと思っていたアケリーという女性も組織の仲間なのだろうか? 分からない事ばかりで頭が混乱していた。
ウルフも笑ってはいるが、こちらを見ている鋭い目付きからして間違いなく自分を殺す事を躊躇しないだろう。
〈チッ〉
心の中で舌打ちをすると顔を上げた。
「え、えっとぉ、組織の名前を聞いたら殺すって事ですかぁ?」
自分は何も出来ない人だと演じながら、惚けて聞いてみる。
「だなぁ。まぁ、どちらにしろあいつらが仲間に出来ないと言った時点で生かして帰すわけにはいかなくなると思うけどな」
〈なるほど、生きては絶対に帰さないと? いや、もうダメじゃんオレ〉
……絶体絶命である。
部屋は壁の上にある小さな窓から僅かに陽の光が入ってくるぐらいで薄暗く、壁には亀裂や塗装の剥がれた跡がいくつもある事から、自分が今いる建物はもう使われていない廃墟なのだろうと予測する。……ウルフ達は確か、ガメバの街に向かっていた筈だ。
だとしたら、自分が今いる場所は……。
〈ガメバの街の何処かという可能性が高いよな。くっそぉ〜、こんな所で死んでたまるかぁあああ‼︎〉
ウルフは更にこちらに近付くと、しゃがんで自分の左目を見ていた。
「それにしても本当に目の色が違うなぁ。色んな人に驚かれたりするんじゃないのかヤング?」
「そうなんですよぉ〜、驚かれる度に傷付いているんですよぉ? ところでサングラスをいい加減返してくれません?」
幸い前の方で手錠をかけられているので、両手を横へ広げる事は出来ないが動かす事は出来る。
睨んだまま、指を鳴らし力を入れた。
〈今ならウルフの両目を潰せる距離だな……武術とか全然やった事ないし出来るか分からないけど、何もしなのは本当にまずいって〉
「ああ、サングラスならヤングの車の中に置いてきたぞ。エスラン08の車も運転してきたからな」
どうやら、自分の車も近くに停めてあるようだ。車が何処にあるのか気になっていたので安心していた。
「おー! それは有難いですぅ〜……」
〈……やるなら、今だ!〉




