139. 廃材が有る部屋
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……首筋が痛む。
「……い」
誰かが、何か言っている。
「お……」
何を言っているのか分からない。起き上がろうとしても、何故か身体も全く動かない。何が起きたのだろうか……急いで目を開けなければ。
「おい、ヤング‼︎」
「!」
目を開けると、目の前にウルフが立っていた。
「え」
唖然とした表情でウルフと目が合う。何が起こったのか全く分からない状況だ。自分は確か、雑木林のテントにいた筈だが……上半身を起こし慌てて辺りを見回す。
廃材が置かれている何処かの建物内のようだ。ここは何処なのだろうか。
──ズキッ
「いてててて‼︎」
首筋が痛むので押さえようと右手を上げると、金属のような音が鳴った。驚いた表情で視線を下に向ける。何故か自分の両手には銀色の手錠がかけられていた。
「な、な、な、な、何だ、こりゃあああ⁉︎」
笑いながらウルフはこちらを見ている。
「いやぁ、死んだかと思って焦ったぁ〜。軽く首筋を叩いたつもりだったんだが、大丈夫か?」
……全てを思い出した。
ウルフ達が眠っている隙に、テントの中から審判のコインを盗もうとして見つかり捕まっていたことを。
だが、何故手錠をかけられているのだろうか。焦りからか冷や汗が止まらない。
〈や、やっばぁ……どうする? とりあえず大人しくしておいた方がいいな。こんな手錠かけられてたら攻撃も出来ないし〉
再び自分の演技力を発揮させる。
「大丈夫じゃね……大丈夫じゃないですぅ。何ですか? この手錠」
「あー、ヤング逃げそうだからさ。俺の仲間が来るまでここにいてくれ。ヤングを仲間にしていいか聞くからよ」
頭の理解力が追いつかない。誰を、何の、仲間にするのだろうか?
真顔のまま無言になっていた。何から聞けばいいのだろうか……聞きたい事がありすぎて順位が付けられずにいた。とりあえず、手錠が邪魔なので、外してもらえるか聞いてみることにする。
「あのぅ〜、ウルフさん? 逃げないので手錠を外してもらえません?」
「すまんな、ヤング。仲間に出来ないと言われたら、その後のヤングの処遇を考えないといけないんだ」
処遇……? どういう意味なのだろう。
ウルフはどこかの組織に所属しているのだろうか? てっきり、テレビに出ている有名人なのかと思っていたのだが。組織名を聞いてみるべきだろう。
〈まぁ、絶対にスールイティ団ではないよな〉
「あのぅ〜、仲間ってどこかの組織か何かですか?」
そう聞いた瞬間、ウルフは鉄になった鋭い手を自分の顔の前で止めた。
「……」
今、自分が少しでも動いていたら……。
「名前が分かったら、ヤングを生かして帰すわけにはいかなくなる」




