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36  作者: 川之一
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138. 嫌味を言う兄貴


 ザンツィルはこちらを一瞬だけサングラス越しに睨むと再び前を向いた。


 ──『盗みたい気分じゃなかった、それだけ』

有り得ない理由に思わず大きく口を開けたままザンツィルを見ていた。まさか、その時の気分の所為でとんでもない金額の詫び金を払わなければならなくなるとは……。


 裏依頼を甘く見過ぎているのではないだろうか。


 裏依頼を受ける為には、中央依頼店(オーダーセンター)が受けたいと希望している者の依頼の達成率を見て判断する。現在、裏依頼を受けられる者は多くはいない。ザンツィルは36番力と盗む腕前の良さから依頼の達成率も良かったので裏依頼を受けられていた。


 殆どのカジノを出入り禁止になってしまっている今、詫び金をどうやって集めるつもりなのだろうか。


 少し厳しく言っておいた方が良いだろう。

 ──『あれ? 大好きなミリさんから受けた裏依頼なのにいいんすか? 失敗するなんてダッセェすぅ〜』

車の速度を落とすと、ザンツィルは再びこちらを睨んだ。恐怖の余り、思わず目が泳ぎ始める。

──『ダラちゃん、挑発のつもりか? もっとオレが怒りそうな事言えないんでちゅか? ふっ』

ザンツィルは鼻で笑っていた。


 何か言うと何倍もの嫌味で返してくる……。だが、ここで引くわけにはいかない。絶対に理由を聞き出さなければ、今後も失敗してしまうかもしれない。


 ──『ザン兄貴‼︎ 理……』

──『お前、次に"理由"って言葉を言ったら車から降ろすからな』

……声のトーンが低くなっている。


 フォー森林に本気で降ろすつもりのようだ。こんな場所で車から降ろされてしまったら、野生動物に襲われてしまう。理由という言葉を言うのはやめておくべきだろう。

──『り、りんりんるんるんっすね!』

──『意味分かんねえよ』


 ──〈おっかねぇ、兄貴っす……〉

やはり、理由は教えてくれなかった。




 結局、怖くてあれから失敗した理由を聞けずにいた。もしかしたら、ミリには話しているのではないだろうか。だが、今は忙しそうだ……さすがにロキョウに呼ばせるわけにもいかないだろう。

「ロキョウさん、すいませんっす。理由は分からないんす。二回ぐらい聞いたんすけど教えてくれなくて」

「そうですか……分かりました。私達の方でも旧五野八(ごのや)トンネルの入り口の施錠をしなければならないので、関係者を向かわせながらザンツィルがいないか確認してみますね」

確かに、もしかしたらまだ旧五野八(ごのや)トンネルにいる可能性もある。見に行ってもらえるのはとても有り難い。

「お、お願いしまっす!」

ロキョウは小さく頷いた。


 椅子からアネアは立ち上がると、人差し指の先で車のキーを回していた。

「早めに出発しましょ。遅くなったら、あいつ危ないかもしれないし」

「そうっすね。それじゃ、ロキョウさん行ってくるっす!」


 「二人とも、気を付けてください。もし、奪略商(クラムダータ)のアジトに入るような事があったら必ず私に連絡してください」


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