11. 本部へ
慌てて車内から飛び出し、車体を入念に調べる。
どこを見ても現在地を知らせるような機器は見当たらない。だとしたら、ダラメットはどうやって自分の居場所が分かったのだろう。
「何なんだ、あいつ……」
急いで車に乗りエンジンをかけた。ダラメットが来る前に、中央依頼店での用事を終わらせて、すぐに車を走らせれば追いかけてこれない筈だ。
「ヘヘヘ……さすがについて来れねぇだろ。今度こそお別れだなぁああ‼︎ ダラメットぉおお‼︎ 行くぜぇえ‼︎」
ミュージックプレーヤーの再生ボタンを人差し指で強く押した。
〈プレイリスト6.スカイブルーを再生します〉
大音量で鳴らしながら車を再び走らせる。
─────
アスグ平地、フォー森林を抜けて、再び車を走らせてから二時間が経った頃、前方に二階建て程の高さの建物が見えてくる。開けた場所に、全面ガラス張りで円形型の大きな建物が建っていた。
──中央依頼店の本部である。
広い駐車場もあり、多くの車が駐めてあった。いつも混んではいるが、今日は普段よりも混んでいるような気がする。
「げー……何だよ、今日は混んでるのか? お前ら、全員裏依頼受けれんのかよ。全く」
いつも駐車していた場所にも、別の車が駐められている。ぶつぶつ言いながら空いていた駐車スペースに車を駐めようとしていた。
──ガッ
「あっ」
外で何かにぶつかったような音が聞こえた……嫌な予感がする。
「ア、アハハハ! 気の所為だよな! このオレが、まさか他の車にぶつけたなんて……ないない! バッーーク!」
──ガリッ、ガリッ
……血の気が引いていくと同時に、視線をゆっくりとサイドミラーに向けた。
灰色の車にぶつかっていたようだ……。無理に駐車スペースに入ろうとした為、キズがかなり付いていた。そしてこの車は……。
〈まさかの高級車……し、知らねー〉
慌ててハンドルを切って別の空き駐車スペースへ向かった。空きスペースを見つけると、今度はゆっくりと動かしながら車を駐めた。
「オレは何も見ていない。そうだ、何もなかった。あの場所に駐めた誰かが悪い」
自分の中では解決したのだった。
急いで自動ドアの入り口から本部の中へと入る。受付は全部で六番まであるが、全て"相談中"と表示されていた。
〈おいおいおいうぉい! お前ら、そんな相談する事があんのか⁉︎ なんでよりによって今日なんだよ!〉
心の中で怒鳴り続ける。
よく見ると三番受付にミリが座っていた。相談を受けているのは男性のようだ。
〈早くそこをどけぇぇぇえ‼︎〉
サングラス越しに鋭い目つきで睨みつける。
「ん?」
ふと、辺りを見回すと相談待ちで座っている人達が自分を見ている。建物内でサングラスをかけているのが気になっているのだろうか。
〈チッ、何見てんだよ……たっく〉