10. キャプチャー
車を走らせてから三時間が経った。
セレン海からアスグ平地へ入ったようだ。辺りは僅かな雑草が生えているだけの広大な平地で、建物は一軒も見当たらない。
「チッ、小売店があればアイスでも買っていこうと思ったのになぁ。何にも無いんだな」
──ポポン
「んっ?」
ライトフォンが鳴ったので、道路の端に車を停めた。表示されている名前を見るとダラメットからの着信だった。向こうから通話を切っておいて、また電話してくるとは……。
「ケッ、無視してやる」
車を再度走らせた。あと二時間程でやっと中央依頼店に着く。
「今日はミリちゃんいるのかなぁ〜。まぁ、いてもらわねぇと困るんだけどな……」
──ポポン、ポポン、ポポン
ダラメットからの着信が五分経っても鳴り止まない。あまりにもしつこすぎる……。ハンドルを強く叩き、再び端に車を停めた。
ライトフォンの通話ボタンを強く人差し指ではじいた。
「うるせぇええ‼︎ しつこいんだよぉ‼︎」
「あー! ザン兄貴、やっと繋がったっす! もー、何で早く出てくれないんすか⁉︎」
怒りで強く握っているライトフォンからミシミシと小さな音が鳴っている。
「さっき通話を切った奴はどこのどいつだよ? おい」
「ザン兄貴、さっきは申し訳ねぇっすよ。ところで、これからどこへ行くんすか?」
凄い早さの切り返しだ。
「さぁ? 世界財産を探しに行かないといけないんでね。果てしなく遠い場所にでも行こうかねぇ〜。じゃあな……」
もう、向かう場所は言わない……ダラメットとは離れるつもりだ。
「あっ、中央依頼店っすか! もしかして、今アスグ平地にいるっす? 自分も今から向かうっすよ! 兄貴、後でまた!」
──ピーピー
「……」
何故、居場所が分かったのだろうか……。ここまでくると、さすがに恐怖すら感じてくる。ダラメットはもしかしたら、一生ついてくるつもりではないだろうか。恐ろしさのあまり手が震え始めていた。
「つ、捕まえてもらおっかな……」
──アミトレアで悪事を働いた者や盗賊達を捕らえるのは、"保安雇人"と呼ばれている者達の仕事だ。
自分がスールイティ団に所属していた時も、ミスをした団員が数人保安雇人に捕まっていた。捕まった者は二度と帰ってくることはない。スールイティ団のリーダーも諦める事は嫌いだったようだが、団員が捕まった時は"どうしようもない"と言っていたのが、自分の中では印象的だった。
……厳しい罰を与えられるという噂があるが。
「通報したらオレもダメじゃん」
自分も盗賊なので捕まってしまうだろう。




