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芽夢の話を聞き、ミラノは少なからずショックを受けたようだった。
それは当然の反応だ。自分の好きな人が死体から作られたなどすぐには信じられないのも無理はない。
それでもミラノはその話を受け入れ、さらには新たな情報についてしっかりと話してくれた。それはむしろ褒め称えてもいいほどの精神力のようにも思えた。
今回、御厨ミラノが持ってきたのは、正月の頃の話だった。
その少女は神社近辺で何度か目撃されていた。何を祈っているのか、頻繁に神社に通っては祈り続けていたらしい。
その少女が目撃されなくなったのが2月。
百花のメンバーが行方を消した時期に一致している。
「曖昧な話ですね」
「仕方ないでしょ。もともとが曖昧な話なんだから。それともこれはあなたたちが知りたい情報とは違っているの?」
挑戦的な口調でミラノは言った。
「いえ、たぶんそれは私達の欲しい情報だと思います」
意外にも芽夢はハッキリと言い切った。「そうですね。まだ見つかっていない女子生徒といえば杉村美波です」
「あれ? もう一人いなかった?」
思わず美空が訊く。
「雛形静香ですね。しかし、彼女は足が悪いという特徴があります。今の話では、この目撃されている女性にその特徴はありませんでした。それを考えれば杉村美波と考えるのが自然でしょう」
「ああ、そうか」
美空は納得して頷いた。
「その人のことも助けるの?」
ミラノが芽夢を見つめながら訊く。
「助ける? そんなつもりはありません」
「でも、これまで見つけた人たちは助けたんでしょう?」
「それも違っています。私達は彼らを捜しているだけです。その課程で彼らの力を封じたまでです。彼らが救われたかどうかは私達の知るところではありません」
「ずいぶん捻くれた言い方ね」
「そうですか。私は事実を話しているつもりです。私の情報に嘘はありません」
「それって嘘をつく人が言うセリフよ」
「好きなように取ってください。また、情報を耳にしたら教えてください。期待していますよ」
「わかったわよ」
ミラノは立ち上がろうとしてから思い出したように言った。「そういえば遠野火輪さんには会った?」
「遠野? ああ、一条家の関係者ですね。どうしてそんな話を?」
「この前、そこに行ったの」
「矢塚神社ですか? 草薙響を捜しにですか?」
「……そうよ」
「いなかったのですね」
「どうしてわかるの?」
「見つかっていたらあなたが私たちのところに来るわけがないでしょう」
「……そうね。あなたたちは調べないの?」
「なぜ?」
「なぜって……何かあの人たち隠してるわよ」
「隠してる? 何を?」
「それはわからない。でも、そんな気がしたの」
「なら、あなたが調べたらいいではないですか」
「バカじゃないの。私が調べてもわからなかったからあなたたちが調べれば何かがわかるんじゃないかって思ったんじゃないの。それにあの人たちならあなたたちの調べてることだって知っているかもしれないでしょ」
「しかし、なぜ今になってそんな話を? 何か疑うようなことがあるのですか?」
「あそこには遠野火輪さんと、その奥さんの二人が暮らしてるの。でも、ある人がもう一人別の人を見たらしいの」
「それが草薙響ではないかと?」
「そう」
「しかし、それが草薙響だとすれば、そこには双葉伽音もいるということですよね?」
「一緒だとは限らないわ」
ミラノの眉間に皺がよる。
「しかし、双葉伽音本人が草薙響と一緒にいると言っていたのですよ」
「言っていたからって本当だとは限らないでしょ」
あくまでもミラノは草薙響と双葉伽音が一緒であることを否定したいようだ。
「いいでしょう。時間が出来たら行ってみましょう」
「すぐに行きなさいよ」
「そうもいかないのです。取り急ぎやらなきゃいけないことというのが他にもありますから」
「そんなことしていて、もし彼がいなくなったらどうするの?」
「大丈夫ですよ。あなたが見張っていてくれるのでしょうから」
少し意地悪そうな目で芽夢はミラノを見た。芽夢の指摘にミラノは思わず気まずそうに視線をはずした。




