1-序章
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一国を統べる王城の一室。暗澹とした深い暗闇の中で炎が揺らめき、二つの影を壁に落としていた。
「さあ、占師よ。この国の未来を占ってくれ」
奥の部屋からは耐え難い女の呻き声が響く。男はそんなものは一切耳に入っていないかのように、一心に占を請うた。
占師は静かに頷くと、すっと白い手を伸ばし、卓に広げられた紙に生臭い赤い液体をゆっくりと垂らした。どす黒い赤が紙にじんわりと染み渡る。
男は息をのんだ。
赤が意志を持つかのように紙の上を滑り、蠢く。それは少しずつ形を成していく。
生まれ出づる子、女子なり。汝、この国の未来を憂うならば、この娘をただ男子として育て、太子に据えよ。さすれば汝の治世、この国の未来は明るいものとならん。
わなわなと震えながら、男は燭台を引き倒した。紙はあっという間に火に包まれ、黒々とした灰が舞い上がる。
奥の部屋から赤子の泣き声が響き渡った。
占師はその様子を――一国の主が狂ったように叫ぶ様子を静観していた。暗がりの中、占師の白銀の髪と黄金の瞳に、橙い光が反射していた。
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