表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仙果記  作者: 藤 細雨
1/10

1-序章

多くの作品の中から、この作品に興味を持ってくださり、ありがとうございます。


 一国を統べる王城の一室。暗澹とした深い暗闇の中で炎が揺らめき、二つの影を壁に落としていた。

「さあ、占師よ。この国の未来を占ってくれ」

 奥の部屋からは耐え難い女の呻き声が響く。男はそんなものは一切耳に入っていないかのように、一心に占を請うた。

 占師は静かに頷くと、すっと白い手を伸ばし、卓に広げられた紙に生臭い赤い液体をゆっくりと垂らした。どす黒い赤が紙にじんわりと染み渡る。

 男は息をのんだ。

 赤が意志を持つかのように紙の上を滑り、蠢く。それは少しずつ形を成していく。



 生まれ出づる子、女子なり。汝、この国の未来を憂うならば、この娘をただ男子として育て、太子に据えよ。さすれば汝の治世、この国の未来は明るいものとならん。


 わなわなと震えながら、男は燭台を引き倒した。紙はあっという間に火に包まれ、黒々とした灰が舞い上がる。

 奥の部屋から赤子の泣き声が響き渡った。

 占師はその様子を――一国の主が狂ったように叫ぶ様子を静観していた。暗がりの中、占師の白銀の髪と黄金の瞳に、橙い光が反射していた。


気に入ってくださったら、下部の☆を押して応援してくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ