春〜新しいがない〜
まだ少し肌寒く感じる4月に大人の階段をのぼった。
校門の上には桜が満開に咲いている。絵に書いたような入学式を迎えた。
中学進学は新たなスタートであるはずなのに、全然わくわくしない。通う校舎や迎えてくれる先生は変わるが、田舎では同級生や先輩達の顔ぶれはほんとんど変わりがない。狭い世界。
入学式が行われる体育館前にはクラスの張り出しがしてあった。その前にはパリパリの制服を着た(制服に着られてる)同級生で賑わっていた。その光景を目にした私はうんざりした。
制服は学生のシンボルなのに。
私には6歳年の離れた姉がいる。歳が離れてなかろうが、2番目以降に生まれてきた子がぶつかる壁。「お古」
人生において悩ましき問題の一つだ。
6年前に任務を終えたはずの制服がタンスから引っ張りだされ、また任務を開始するのだ。すでにくたびれている様子なのに。
「新しい制服を着たい。」
「いいのよ、お姉ちゃんので。どうせ登校の時にしか着ないんだから。」
このやり取りを母と何回しただろうか。
同級生達の「制服似合うね!」「お前だぼだぼじゃん!」「似合ってねーな」と嬉しそうにはしゃぐ姿に、色が少し褪せ、大きすぎずそしてスカートは校則ぎりぎりの長さの制服の私は見えないナイフで傷ついた。
「新しい」がない。