未決の囚人たち4
まぁ同囚には、ここまで話はしていない。
赤裸々に語るものでもないし。
こういう話は馬鹿話に留めておくものだと俺は思っている。深刻に話す場合はタイミングを選ばねばならない。ただし、絶対に嘘はつかないことにしていた。
ここで嘘つきはタブーだ。
言いたくなければ黙ってるか、適当にはぐらかせば良い訳で、嘘をつく必要はない。なぜだか分かるか?
嘘は意外とバレてしまうんだ。
もちろん、2〜3ヶ月とかの短期間しか拘置所にいないなら別に構わない。バレる要素がないからな。
でも罪状が重かったり否認していると長期間いることになる。
最初に嘘をついてしまえば段々と苦しくなるんだ。
それに同囚の話は他の部屋でも結構するものだからな。罪状、事件の状況、娑婆での仕事なんかで嘘をつく奴はそれなりにいたが、大体バレていた。
ある奴は繁華街でバーを経営しているという嘘をついたが、知り合いが同じ舎房に入所してきてバレたし、ある奴は罪状が窃盗という嘘をついたが、刑務官との雑談で実は強姦だとバレた。
囚人の罪状を知っている刑務官もいるからな。
普通は言ってはいけないが、ぽろっとこぼす刑務官もいる。
一度嘘がバレたら、陰で嘘つき呼ばわりをされるから、そんな目に遭わないように捕まった時はよく考えることだ。まぁこれは娑婆でも同じだかな。
こんな感じで色々なことに注意しながら拘置所生活を送っていた。ここで俺が気付いたことの話をしよう。前も言ったが、犯罪が身近な人、そうでない人の存在である。
松山さん、相田さん、吉富さんは明らかに前者だった。なぜなら彼らは他の部屋にも知り合いが結構いた。普通の人は拘置所で「お前も捕まったか。何がバレたんだ」と笑いながら話せる知人などいない。
でも彼らは、平日の運動時間に屋上に上がると別の部屋の知人と話し始める。聞くと娑婆で顔見知りらしい。また、知人の知人という形で辿ると、顔は知らなくてもどこかで繋がる人が少なくないという。
繁華街のバーテンダーという松山さん。彼は昔相当ヤンチャしていたらしく、暴力団の知人が沢山いて、刺青が入った人と屋上でよく話していた。
相田さんもシャブの売人との付き合いがあり、その知り合いがいる。
吉富さんもチームを組んで窃盗するくらいで、窃盗仲間の繋がりがあるらしい。世の中は意外と狭い。だからこそ、嘘もバレやすいんだが。
彼らと話す中で前科者というのは意外と多いことに気付く。この事は自分の首も締めるから言いたくないがな。前科者は回りに隠しているだけで世の中には結構多い。
現在、日本の年間逮捕者は30万件前後である。
日本の平均受刑者数は5万人を下回るくらいで、新たに拘置所・刑務所で受刑するのが2万人前後。
ある統計では人口に対する前科者がいる割合は2〜3%と言われている。これは乳幼児や女性も含む割合だから、成人男性でみるともう少し多い。女性の犯罪者の割合は男性の10分の1だからな。
刑務官に話を聞くと、繁華街の夜の店に飲みに行くと拘置所で相手をしていた囚人の顔を見ることが少なくないという。
もちろん刑務官が収監されていない一般人に横柄な態度を取ることはない。だから敬語を使うらしい。仲の良かった囚人であれば、「どうした?元気にやってるか?」と友達のように話しかけたりもする。刑務官も人間だからな。
そんな訳で意外と身近に前科者はいる。
多くの人は前科が明るみにならないように必死に隠して生活しているが。
これは拘置所生活での話題にもよく上がったな。
前科がある状態で俺らはどうやって生きていくか。
答えはない。
必死でがむしゃらに生きていく。
それしかないんだが、この話題も盛り上がる。
自分の事で切実な問題だからな。




