未決の囚人たち1
拘置所生活も一週間が経つと、だいぶ慣れてきた。そして同じ部屋の囚人がなぜ逮捕されたのか、その理由も知ることができた。
相田さんは覚醒剤常用者。
捕まるのは今回2回目で、覚醒剤は10年以上前から使用していたという。シャブを打った後、朝から繁華街のヘルスに行き、スッキリした状態でパチンコ屋に並ぶのが好きだったと得意げに話す。頭が馬鹿になった状態でパチンコを打ち続けるのは最高らしい。
そんな金はどこにあるのかと尋ねると、なんと親だそうだ。親にはシャブ代とは言わず、遊ぶ金と言っていたらしいが、実家暮らしだからおそらく気付いていただろう。彼は実家が金持ちだと胸を張って言う。
30代の男が仕事もせず、親の金でシャブとパチンコ。親が悲惨だし、本人の自覚がないのも悲しい。
吉富さんは本職で万引きをしていたらしい。
ターゲットはドラッグストア。仲間うちでチームを組んで、一人が下見、別の一人が実行犯となり高値で売れるサプリメント系を一店舗でガッツリ盗る、別の一人がそれをネットで売り捌く。犯行ごとに店の系列はもちろん、地域も変える。これを繰り返して1人あたり月30万以上の収入があったらしいが、内容を聞くと長期間はできなさそうな犯行だった。ただ、話しぶりから、その他にも色んな悪事に手を染めていそうだった。
林さんは民家への不法侵入だ。
住人に見つかって通報され逃走したものの、逃走手段に原付を使い、その原付のナンバーを住人に写メで撮られ、逮捕されたらしい。
おマヌケ。その一言に尽きる。
彼も逮捕は2回目との事だった。前回も不法侵入。
不法侵入は窃盗などの犯罪の前段階のものだ。不法侵入が目的の犯罪などほぼない。それにも関わらず罪状が不法侵入のみということは、優秀かポンコツかのどちらかである。どちらかは敢えて言うまい。
松山さんは放火。
ご存知だろうが、放火は殺人に並ぶ重罪である。
人が住んでいる現住建造物等放火は懲役5年以上、人が住んでいない非現住建造物等放火は懲役2年以上と放火の対象物で量刑は大きく変わるが、松山さんは重い方だった。といっても、燃やしたのは借りていた自分のアパートの部屋だ。
仕事がうまくいかず、イライラして会社が松山さん用に借り上げていた部屋に火をつけて家を出たらしい。数時間後に帰ってきたら大騒ぎになっていたという訳だ。仕事がうまくいかないからといって、自分の部屋に火をつける思考回路は本当に理解できなかった。
最後に村山さん。彼は傷害罪である。
暴行罪と傷害罪の違いは、相手が怪我をしたかどうかであり、村山さんは相手が大怪我をした為、傷害罪で立件された。
村山さんには同情できる余地が十分にあった。
村山さんの彼女の友人Aが男Bにレイプされ、そのことを彼女から相談された村山さんは男Bを喫茶店に呼び出した。問い質し、友人Aに謝罪させる目的だったらしいが、相手は全く反省しておらず、ふざけた態度だった。そのことに激昂した村山さんは喫茶店という公共の場にも関わらず、相手を殴り続け、全治3ヶ月の重症を負わせたという訳だ。
気持ちはとても分かる。そんな腐った奴は殴られても仕方ない。全治3ヶ月はやり過ぎだが。
事件の話は本当に盛り上がる。
囚人同士でしかできないからな。
家族や友人にできるか?
笑い話にしたら、さらに深刻になるだけだ。
反省していないと非難の目でも見られるだろう。
囚人以外には重い話題にしかならないんだ。
ん?
俺の事件の話がないって?
俺の事件は本当に馬鹿だと言われるものだからな。
林さんや松山さんを馬鹿にできないくらい、俺の事件も馬鹿なものなんだ。村山さんのような武勇伝を聞いた後だと、余計言いたくなくなる。
ただ、皆が暴露する中で一人だけ言わないと盛り下がるのも事実だ。
しょうがない。
語るとするか。




