神徒リシ
「ふーむ、寂しいって何だろ?」
前回の壮年の男の友達がいない件を解決してから、
私は友達というのを意識していた。
正直、友達がいた事も無いのでわからない。いなくて、寂しそうだった男を思い返しても、寂しいという感覚もわからない。
「うーん、生まれてからこっち、トト様に拾われて神様になったからなー。でも、作ってみるか、友達」
エイヤッ!とかけ声と共に、瓶を目の前に著現させる。
神様便利だね。思っただけで出るんだから。
中に、お供え物の油揚げを突っ込んで準備OK。
後は、3分待って出来上がり。
言わなくてもいいんだけど、言った方がハクがつくらしい決め台詞。
「でませい!!我に使役する者よ!」
ぼわわ~んと、瓶から紫色の煙が立ち上ぼり、中から一匹のいたちが出てきた。
「初めまして。可愛いらしい神様。末長くお願いします」
「あれ?油揚げだからキツネかと思ったんだけど。まあ、いいか。レアってとこかしら」
「あいすいません。ハイパー・ウルトラとはいかない並のレアです。もっかい回します?チェンジで?」
「いいわよ、別に。能力うんぬんじゃなくて、ただ友達作ってみたかっただけだから」
「さいですか。.......そいつは、どうかなあ?まあ、ささっと名前を下さいまし」
「名前ないの?」
「無い事はないんですが、呼び出されて使役されるには名前つけてもらわないと駄目なんでさあ」
「わかったわ。.......シリ、シリ、リシ!お前の名前はリシよ!」
「色々、大丈夫かなあ......?まあ、いいか。ほいほい、ご用命ありがとうございます!なんなりとリシをお使い下さい神様!」
「なにかしら?友達というより、キャバ嬢と遊ぶ前みたいだわ」
「遠からずってとこですかね?それより、神様お客さんですぜ!」
ピンロ~ンと鏡に若い男が映る。イヤホンをつけて私は男の願いを聞いてみる。
(神様!神様!私はウルド、ベルダンディーよりスクルドが好みでした!お願いです!私の前にお姿を現して下さい!私の家に電話をかけて下さい!)
まともな客じゃなかった私は、冷めた目で声を発する。
「ヘイ、リシ?こいつに適当な罰を与えなさい」
「了解しました神様。秘技薔薇のオイル!」
ばしゃしゃーと、薔薇の入ったオイルが男にぶっかかる。
ちょっといい匂いがしてた。男は、若干息苦しかったようでプハア!と息をつく。
「神様!僕はペイオースより、スクルドなんです!」
「ヘイ?リシ。なんでこの技にした?」
「合わせてみました。神様」
「とりあえず、叩き出せ」
薔薇のオイルの濁流で、男は神社の外に流されていった。
不快な.......。
しかし、対応は今一だな、リシ。
「申し訳ありません、神様。しょせんレアですから」
それでも、せっかく呼び出したし、これで帰すようなら多分友達じゃないだろ、と思い私はリシを抱えてヨシヨシと撫でる。
「うへへ。幼女のヨシヨシ、ぐふっ」
貴様もか!
リシを投げ捨てて、本気でチェンジしようかと考える。
世の中、人間だけじゃないのか?ロリコン。まさか、トト様も?
恐ろしい想像をして、身震いする私だった──
続く