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百合神社





その少女の佇まいに、なにか幼いものを感じた。

いや、私の方が年齢的に遥かに幼いのだが。私は、神様成り立ての幼女だし、その少女は女子高生。

相手は年上だ。とにかく、まずは自己紹介ね。


「はじめまして、お姉さん。私はこの神社で神様をやってます、巫女と言います」


「は、はじめまして!はわっ!」

ゴチン!


その少女が慌てて頭を下げたら、私の頭と頭が、ごってんこした。頭突きって、地味に痛い。お姉さんは、すいません!すいません!と平謝りしている。なんか、腰の低い年上だなあ......と、特に怒りも沸かなかった。


「ごめんなさい、私いつも、どんくさくって。は、初めまして。私は、飯野琴美。宜しくね巫女ちゃん」



「はい、琴美さん。とりあえず百合って何したらいいんでしょう?」



「.......。私も、よく分かってないのよね。ただ、伯父さんに連れてこられただけで」


チラリと横を見ると、ユリスキーの老年紳士がカンペを出している。何々、2人でいい雰囲気でお喋りして下さい。なるほど、そんな感じで誘導してくれるわけね。助かる。ハンディカムで撮影されてるのは、ちょっと気になるけど........。


「じゃあ琴美さん。神社の境内で少しお話しましょうか?」


「うん!」


パアッと顔が輝く琴美さん。迷子の子犬が主人を見つけた時のような笑顔だった。やはり、最初の印象の幼い感じが当たっている気がする。


「琴美さんは百合なの?女の子が好き?」


「どうなんだろう.......?えっとね、巫女ちゃん。恥ずかしい話しなんだけど、私この年でまだ本当に好きな人、出来た事ないんだ。き、聞いていいかな?巫女ちゃんは、好きな人いる?」


えっ!

えらいとこに矢が飛んできた!

いや、でも話し振ったの私だしなあ......。まさか、流以外の人と恋バナをする事になるなんて.......。まあ、この人ならいいか。



「少し、年上の男の子でね。その子の事を想い浮かべると、胸が暖かくなって、会えないと思うと胸が締めつけられるように切なくて......。うん、幼女の言葉じゃないな。こんな感じなんだけど、わかる?」


「ううん。分からない。私にも.......こんな私に近づいてくれた良い人はいたんだけど、ああ、この人わたしの事好きなんだなあ.......って、まるで他人事のように思うの。ドキドキした事もない

の。だから、百合もよく分からない」


「そうなの........」


「でも、こんな事話したの巫女ちゃんが初めてです。何か不思議な気持ち。アハッ楽しい。ねえ、巫女ちゃんは私の事どう思う?」



「えっ。えーと素直に答えたら、年上なんだけど自分より幼い感じがする.......かな?」



「幼い感じかあ.......可愛いとこがあるって捉えていいのかな?」


「う、うん。琴美さんは、可愛いと思う......」


「やった!ふふっ。そんな風に言われたのは初めて。嬉しいな。なんか身体が、フワフワする」


あれっ?なんか、百合っぽくなってる気がする。

ユリスキーの老年紳士がカンペで、いい調子!そのままの自然な感じで!と伝えてくる。

自然に任せられないよ!自然怖い。


私には、心に決めた人がいるんだから!

タケル......どうしたらいい?


「うん。なんでか心があったかいな。好きってこういう気持ちなのかも知れないな。ごめんね、巫女ちゃん。私は百合だったのかも知れない」


「こ、琴美さん.......」


好きになられても困ると思っていた私だけど、琴美さんは笑顔で涙を流していた。その顔を見て私は、心臓がギュッと掴まれたような気がした。


「今まで誰も好きになった事なかったのに......。こんな簡単に好きになるなんて.....。巫女ちゃんだったからかなあ?ごめんね、巫女ちゃんには好きな人いるのに、私が勝手に好きになっちゃって......」


「.......うん。ごめんなさい琴美さんの気持ちには答えられない。でも」


私は、でもと付け足す。琴美さんは、大人しい見た目をかなぐり捨てて叫ぶように、心を放つ。何故かその姿が美しく見えた。だから


「でも!でも!やっと好きになった気持ち手離しなくない!巫女ちゃん......?このまま好きでいていいかな?」


「うん。好きな気持ちは止められないもの。それは知ってるから」


私達は、両手で握手をした。

キマシタワー!別れのキスを!カンペを出してる紳士。そこまでは野暮だ。私は無視する。


「私は神様に戻って、琴美さんも日常に戻る。だけど」


「うん。だけど、好きになった気持ちは忘れない」


「そう。神様でも、女子高生でもね」


私達は、ニカッと笑って別れを告げる。

琴美さん。また心に残る人が出来た。いいことなんだろう。鏡を潜り、神座に戻る。リシが、ニヤリとした顔で出迎えた。


「神様。守備範囲広いっすね~」


その憎まれ口に、返す事なく、素直に答える。


「ええ。神様だもの。好きになる、なられるって良いことよ。性別を抜いてもね。リシも好きよ」


「ちゃっ、ちゃっ!」


照れたようにして、奥の間に逃げていくリシ。神様どうしちゃったんですか!らしくない。こんなんじゃオチらしくないですよ!っと。


別に落とさなくていい日もあってもいいんじゃないかな?と、1人呟いて、タケルの事、琴美さんを思い返す私だった──



続く

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