依頼
私は立ち直っていた。
そんなに会えなくても、タケルが憶えてくれていて、私がタケルを忘れなければ大丈夫だと。思えてからは、私は神様業に精を出していた。あんまりダラダラ、ゴロゴロはしなくなった。あんまりだけど.......。ちょっとぐらいわねえ?
日々、忙しく過ごしていると、1人の見知った訪問客が訪れた。
「こんにちわ」
「流!」
私の初めての歳の離れた友人。名前は流。女だてらに、陰陽師を生業にしている。切れ長、狐目の黒髪ロングの美人さんだ。可愛らしい幼女スキーの変態だ、ぺっ!
「久しぶり。陣中見舞い。ゴディバ買ってきたよ」
「もーいいのに!そんな気を使わなくても」
と言いながら、ガシッ!と受けとって、リシにこの神社の一番高いお茶入れてきて。と指示する。
「傷心してると想って、慰めてあわよくば彼女にしようとしに来たんだけどね」
何でコイツが知ってんだ!やっぱり一番安いお茶入れてきて。死んだレイプ目で、背すじがゾクゾクと寒いのを我慢しながら、指示し直す。
「冗談よ冗談。そんなどっ引かないでってば」
私は、汚いものを見る目で
「何しに来たの?ゴディバに罪はないから、帰っていいよ?」
「ごめん!ごめんって!とにかく上がらせてよ。せっかく来たんだから!それでさー」
「恋バナ聞かせてよ?」
──乙女の瞳がキラリと光った。
「そんでね!そんでね!「また会えないか?」って!もー最高潮!クライマックス!でもなあ......タケルが仮にだけど巫女って呼んでくれた時!そっからかなあ。もう何時もの私じゃなくなって気がするのよ。んでね!んでね!ちょっと聞いてるの流?」
「あーはいはい。聞いてますよー。たくっ、何で恋敵とのノロケを聞かなきゃいけないのよ。これで、応援したら私、負けフラグ立つじゃないの。」
頬杖ついて、耳をホジリながら、けっ!と美人のキャラ崩れている流。仕方ない。巫女のボルテージが高すぎて衰えないのだ。
「もー流ったら意味分かんない!とにかく巫女って呼ばれただけで心臓がキュン!ってしたの。キャー」
「ふうん......。しかし、巫女か。いいセンスしてるじゃない。悔しいけどさ」
真面目な顔に戻る流。良かった。美人キャラに戻った。
「どったの?流ってば難しい顔しちゃって。巫女服着てたから巫女なだけじゃない?」
「いや何でもないよ。んじゃ私もタケル君に習って巫女たんって呼ぼうかしら」
「たんは止めてー!」
普段より高級なお茶菓子をつつきながら、キャッキャッとはしゃぐ乙女達。平和そのものだが、やはり平和は続かない。平和が続きすぎるとダレる。
「それで流。何の仕事を持ち込むつもり?」
「おっと。さすが、成りたてでも、こんなに小っちゃくて可愛くても神様か」
「おだてても承けるとは限らないわよ」
「こないだまで死ぬー死ぬー言ってたのにw」
ジロリと一瞥すると、リシは笑うのを止めて神妙な顔になる。コホンと咳払いまでして、わざとらしい。後でお使いに行かせよう。
「呪願って知ってる?巫女」
流の目がひときわ切れ長に見えた。私も帯びを占め直して話を聞こうと思った──
続く