初仕事
「そうだ。全体を視るのはなんとなくでいい。意識にひっかかるものだけ拾い集めればいい。それがお前の編む物語だ」
トト様はそう言うけど、そんないい加減な事で言いのかなあ?と思いつつ、巻物を読みつつ、気になった単語を組み合わせて自前のノートに書いている物語を組み合げていく。
「それでいい。仕事の肩代わりをしてくれた礼だ。神権はくれてやる。俺は野に下りて妖になる。さらばだ。達者で勤めよ」
そう言ってトト様は消えてしまった。
まったく、神の仕事を押し付けて自分は妖怪になって下界で好き勝手しようってんだから。トト様、神様向いてなかったんじゃないの?なんで私が。まあ、永遠の命あるからいいけど、とりあえず人事部出てこい。
目の前にある鏡に男が映る。ガランガランと鈴を鳴らして、手を合わせている。何やら悲壮な表情をして、お願いをしている。
あっ、そうか。神様私だった。
ちゃんと聞かないと。手元にあったイヤホンを耳に突っ込み、意識をチューニングする。すると、男の思考が聞こえてきた。
「もう駄目です。仕事も家庭も上手くいきません。毎日死ぬ事ばかり考えています。死にたくないけど、もう前を向いて歩けねえ。一生下を向いて生きて行くんだ。こんな状態じゃ死んだ方がマシだ!だから神様.......」
聞いていて、イライラしたので、皆まで言うなと、自前のノートに書かれたアッパーという単語だけみて、男の前に姿を表す私。
男は、目の前に突如現れた女の子にビビり、声をあげる。
「よ、幼女?か、神様?」
「神様アッパー」
インステップから潜りこんで、下を向いてる男の顔を見上げ、下から拳で男の顔をかち上げた。
「ぐふぅ!?」
男は、何が起こったか分からず目を白黒させている。私は、男にさっさと告げる。
「これで前向いて生きていけるでしょ?生きなさい」
「あ、ありがとうございます!」
神屋にテレポで戻りくつろぐ私。これから先あんなんばっかり相手する事になるんだろうか?初仕事を秒殺で終わらせた私は、ハアーとタメ息をつく。パジャマに着替えて1人ぼやく。
「神様なったの失敗したかなあー。嫌んなっちゃう」
その後しばらく巷では、その神社には巫女姿の幼女の神様が、お仕置きという名のご褒美がもらえるのだと、噂になった。
続く