対戦開始
「皆さん大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ」
「さすがのタイミングです。マリン」
マリンの光の壁で皆無事だったようだ。孝雄とマリンは胸をなでおろす。
「ついに現れましたね。待ちわびましたよ」
「ああ、ムカつく魔王軍がな!」
魔王軍・・・孝雄はまた何かを思い出す。
このゲームは魔王を倒さないとクリアできない。つまり相手の大将を倒さないと元の世界に
帰れないのではないか?
「そうだ。俺は魔王軍筆頭バルバラ!貴様らを葬るために来た!」
高らかに声をあげたバルバラはこちらに向かって突進してきた。
早すぎて魔法は当たりそうにない。孝雄は剣を取り出しバルバラに切りかかる。
しかし、剣は空を切りバルバラの突進が直撃する。
「・・・かはっ」
腹部に激痛が走り、息が上手くできない。
距離が離れていた3人が素早く敵に攻撃を仕掛ける。
「いつも通りのフォーメーションでいくぞ」
「あははー、分かったよ」
「【火炎弾】!」
エイルハルトの掛け声とともにシェインが魔法を放つが、バルバラがひらりとかわす。
「そんな攻撃が当たるとでも思っているのか?」
「あははー、思ってないよ」
「さっさとくたばれ!」
コリスがナイフを複数投げつけ、エイルハルトが槍で乱れ突きをするも
バルバラの硬い両羽に阻まれる。
「効かんと言ってるだろう」
今度はコリスに向かって突進してくる。先ほどよりも速い!
「【光の壁】!」
コリスに当たる直前でタイミングよくマリンが壁を出すとバルバラは勢いよくぶつかる。
「【爆撃】!」
シェインが壁から爆発をおこす。バルバラは爆発をもろに受け、爆炎から出てこない。
戦闘のさなか、キャルルは孝雄を木の陰に隠した。
「大丈夫!?」
「これは・・・かなりきついな・・・」
いまだ息が安定しない。これほど戦いが激しいとは思っていなかった孝雄は
考えが甘かったと心底思い知らされた。
「ごめんなさい。魔族が来るとは予想外だったわ」
「エイルハルトに言われたの。これは俺らの戦いだから逃げてくれって」
孝雄は痛みを堪えながらスッと立ち上がる。
「いや、ダメだ。今後も魔族とは戦わないといけない。俺らも一緒に戦おう」
「私もそのつもりよ。行くならこの回復薬を飲んで」
キャルルは瓶を渡してくる。飲むと腹部の痛みが大分和らいでいく。
「ありがとう、大分良くなったよ」
「そう?それじゃあ行きましょうか」
2人は戦場に戻っていった。
爆炎を見ながらエイルハルトが喋りだす。
「やったか?」
「いや、あの程度で倒れるなら相当楽なんですが」
シェインの予想が当たり、強風が爆炎を一気に吹き飛ばす。
「ふざけるな!俺人族の攻撃を食らっただとぉぉぉ!」
不気味なオーラがバルバラの周りを包み込む。
「どうやら向こうさんも本気を出したみたいだな。気を抜くなよ!」
エイルハルトが号令を掛けた直後、バルバラが突進してきた。
「早くなったが、それでかわせると思うなよ!」
エイルハルトが乱れ突き、バルバラの体に槍が数発刺さるもお構いなしに突進する。
「かはっ」
突進を受けたエイルハルトが吹っ飛ばされる。
「コリス!私と連携で倒します。マリンはエイルハルトの回復を!」
「あははー、りょーかい!」
「わかりました!」
体制を立て直し3人が応戦開始。そこに孝雄とキャルルが加わる。
「すいません協力できなくて」
「私たちも戦うわ」
シェインは指示を出しながら答え、
「ありがたいですが、今はあなたたちを守り切る余裕はありませんよ」
「大丈夫。今度は倒れませんから」
孝雄の心は決まっていた。バルバラを倒す。そして必ず元の世界へ帰る。
「そうあることを願ってますよ。孝雄君は前線でコリスと一緒に戦って、キャルルさんは
私と一緒に後方支援をお願いします」
孝雄はバルバラに向かって走り出す。
「【火炎弾】!」
「【毒の弓矢】!」
バルバラは全弾避けるが、間を縫ってコリスがナイフで切りかかる。
しかし、硬い羽根でガードされてしまう。
その隙に真後ろから出てきた孝雄は剣をおもいきり振り下ろす。
バルバラはもう片方の羽でガードしたが羽が真っ二つに切れた。