とある日、とある所、とある男
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――こうなることは、決まっていたのだろう。
雪がちらちらと舞い落ちて、瓦礫の上と其処に立つ二人の男の頭に積もる。
――俺がこの道を、覇道を歩むと決めた時から。
それぞれの髪と肩が、静かに白くなっていく。
吐く息も白く、だが吐き出す言葉は無い。
――交わらない道を行く、その事を俺は解っていて、お前達は分かっていなかった。この悲しさは、やはりそこだな。
互いを鋭い眼差しで見詰め合う。
言葉は尽くしたから。
そこに決着は無かったから。
だから。
――もう、終わりにしよう。俺達の、全てを!!
二人の男は合図も無く駆け出した。
その手に剣を握り、それを眼前の敵に向けて振り下ろさんと気を込めて。
そして二つの剣が、音を轟かせかち合った時。
捨てたものと守ろうとしたもの、そのどちらもが、終わった。
§
空が青い。
漂う雲は大きく、正しく夏真っ盛りだ。
外の気温は30℃とのこと。
「オゾン層が回復してるって話ですよ」
「へぇ。でもこっちの方は“大発現”で文明が破壊される前から、それほど温暖化してなかったんじゃないか? 田舎だし」
「それでも今より断然栄えていた事を考えれば、少なからず影響はあるだろうな。まあ、それを数字として証明する技術は残っていないが」
「それもそうだな」
世界の文明は西暦2018年にその歩みを止めた。
西暦2018 10月17日。
後に“大発現”、“デイブレイク”、“10月の目覚め”等と呼ばれるようになるその日、人類の約10%の人間に所謂“超能力”、今で言うところの“王器”が宿った。
超常の力を持つ武器や道具などを呼び出す“超能力”。
それが一個人によって振るえる事によって、何が起きたか。
一言で言うと秩序の崩壊だった。
個人の力が急激に増幅した。
“超能力”の性能には著しく個人差があったが、特に強い能力を持つものは一人で軍隊を相手取れるほどであった。
それほどでなくとも徒党を組めば、大抵の抑止力では通用しない。
抑止力が意味を成さず、罪を証明することも、罰することも出来ない人間の登場。
それは法の意味を根底から覆し、既存の国の意味を破壊した。
世界は混沌に包まれた。
そこから300年ほど経ったが人間はまだしぶとく生きている。
強い超能力者を王として崇拝したり、神として崇めたりして出来た小国が、日本と呼ばれていたこの島に、いや全世界に無数に存在する。
ある種の戦国時代だ。
文明を復活させようと躍起になって頑張っている国も有れば、うちの様に残った文明を使いながら細々とやっている所もある。
今は、隣の国までちょっと挨拶に行ってきた帰りの道中。
修復に修復を重ね、まだ頑張って貰っているベ○ツに乗りながら窓から空を眺めていた。
ゴトゴトとかつてはキレイに舗装されていた道を、もう原型の無いほど改造した黒いセダンが走っていく。
効きの悪い空調をガンガンつけた車内で、俺の臣下たちが他愛も無い会話をしていると、先程オゾン層がどうのこうのと言っていた運転手の三島 健の気配が不意に変わった。
恐らくテレパスを感知したのだろう。
「ケン、どうした」
「旧四街道のほうで、“王器”を使う者共が現れ略奪行為をしていると」
「その連絡がわざわざ俺達まで届くって事はぁ・・・」
「ええ。数は5、うち一人は“3つ”まで使えるそうです」
今向こうに配置しているのは、じじだけか。
中々厳しそうだな。
「どうします? 覇王様」
「カンジ、どうもこうもない。城から派兵すれば良い。我々は城へと向かっているのだから・・・」
鈴宮 甘次。
降って湧いた事件に首を突っ込む気満々な俺の隣に座っている茶髪の大男。
それを助手席から窘めるのは、周防 列。
うちの頭脳担当の黒髪メガネ。
皆、至らぬ俺を支えてくれる良い臣下だ。
だがしかし。
「いや、行くぞ」
「さっすがぁ~!!」
「覇王様っ!」
良き臣下の良き進言を俺は蹴った。
「ここからなら俺達のほうが近い」
「なりません!今この一行には
「評議会の連中なんざほっとけば良いのよ」
「カンジ!!」
「あわわわわわ・・・」
俺の我が儘と甘次の態度が、列の火に油を注いでヒートアップし、ケンがおどおどする。
まぁいつも通りだ。
そして。
「分かっている。だがだからこそ、力を誇示しておいた方が良いだろう?」
「・・・覇王様」
それでも俺が我がままにあるのも、いつも通りだ。
「我が力を知らしめる事で、起こらぬ戦もあるだろう。進路を旧四街道方面へと取れ」
「・・・仰せのままに。ケン」
「承知しました!」
俺の名前は壱葉 仁。
旧千葉方面、イチハ王国を統べる王であり。
人呼んで、―――覇王。
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