くずやのお仕事3
俺は先程の男の使いだという男に案内され部屋に上がった。
「おお、来たか。どれ、仏像を見せてくれ」
俺はカゴから仏像を取り出し、男に手渡した。
男はそれを様々な角度に傾けながら仏像を観察していた。
「いかがでしょう?」
眼の前で品定めをされると少し緊張するな。
「ほうほう、すこし古いがなかなか立派な仏像だ。ん?」
男はなにかに気づいたようで、耳元で仏像を振り始めた。
「ほう、腹籠りか。これはいいな」
「え!? この仏像妊娠してるんですか!? どうやって!?」
「何をバカなことを言っておる。この仏像の中には小さな仏像が入っているのだ。実に演技がいい。よし、これを買おう!いくらだ?」
「いくらといわれましても・・・。そうですね、これはつい先程200文で長屋のご浪人から買ったんです。ですからそれ以上であればいくらでも」
「そうか、あまり欲のない男だな。では、300文でどうだ?」
「ええ、ありがとうございます!これでご浪人と50文ずつ折半できます!」
「なんだ、そのような取り決めまでしているのか。つくづく欲のない男だ。気に入った、これから贔屓にしよう」
商談を終え、屋敷を出た俺は何時になく気分が良かった。
まさか仏像がこんなに早く売れるとは、それも100文も利益を出して。
やはりこの時代の人達は信心深いのかな。
すこし遠くで鐘がなり始めた。そういえば、清兵衛が「日が暮れ始めて鐘が6つなるのが聞こえたら戻ってこい」といっていたな。
千代田さんにお金を渡すのは明日でも遅くはないだろう。今日はひとまず帰るとするか。