くずやのお仕事1
「で、屑屋っていうのは何をするんですか?」
清兵衛という男の仕事を手伝うことになったが、屑屋というものをよく知らない。
「お前そんなことも忘れちまったのか? 紙くずとかボロとかを買って、それを買った値よりも高くうるってだけの仕事だよ」
「それを俺にしろと?」
「大家さんの頼みなんだからしょうがねえだろ。とりあえず手本見せるからしばらく俺についてこい」
と、言われるがまま清兵衛について回ってどのような仕事をするのかというのを学んだ。
数件の民家を回ったところで、
「おし、じゃあこのかごと種銭をやっから、回ってこい。とりあえず日が暮れて鐘が6つなる頃にまたここに集合だ」
「え!? そんな急に!?」
「急にって、手本見せただろ。」
「マニュアルもWIKIもないの!?」
「はあ? まにゅある?うぃき?んなもん知らねえよ。あ、そうだ。お前は目利きができそうもないから高そうなもんはやりとりするんじゃねえぞ、クズだけにしとけよ」
俺が呆然としていると「ほら行って来い!」と背中を叩かれた。
清兵衛はそのまま民家周りを初めてどこかにいってしまった。
はあ、そんな急にやれと言われてできるもんなのか不安だが、やれと言われた以上はやるしかないのかもな・・・。大家さんにはお世話になっているし手持ち無沙汰というわけにも行くまい。
「くず~や~、くず~や~」
長屋の一帯をくずやくずやと声を出して歩くのは慣れていないから少し恥ずかしい。
しばらくそのようにして歩いていると、
「あ、屑屋さんか、ちょっといいかい?」
ずいぶん年のいった男が、長屋の戸を開けてこちらに声をかけてきたので俺はその男に駆け寄った。
部屋の奥には若い女性がいて、部屋の掃除をしているようだった。この年の差からするに娘さんだろうか。
「はいはいなんですか?」
「この屑を買ってくれんかね?」
「あ、はい。少々お待ちを」
えーっと、やはり屑を見せられたところでどれくらいの値をつけたらいいのかさっぱりわからない。清兵衛はこれくらいでいくらって言ってたっけ・・・。
「し、七文くらい?」
「首を傾げながら言われても困るが・・・。それだけではちと生活が苦しくてな・・・。もう少し値を上げてはくれないか?」
「うーん、といわれましても・・・。あまり高く買うとですね・・・」
「そうか、それはすまんかったな。ではこの仏像も買ってはくれぬか?」