起きたらそこは江戸時代3
「おいおい急に表へ飛び出してすのはやめてくれよ。いやな、お前さんを悪く言うつもりはないけどよ、珍しい格好してるから不審がられるんだよ」
ふと俺の服装を見てみると、就寝用に使っている上下黒のジャージだった。たしかにこの場には不釣り合いかもしれないが・・・。
状況から判断するにここは昔の日本、しかも江戸時代である線が濃厚だ。
俺は全身の力が抜けた感覚に襲われとぼとぼと座敷に上がり、布団の上に座り込む。
「まあいいいや、飯食いたきゃ食え。俺は用があるから失礼するぞ」
そういって男は表を出て引き戸に手をかけ、
「ああ、そうだ。この部屋は俺の長屋のひと部屋だ。どうせ空いててだれも使ってないから調子が良くなるまでつかってくれ。それじゃあな」
そう言い残して扉を閉めて姿を消した。
俺は江戸時代にタイムスリップしてしまったのだろうか。
そんなこと突拍子もなさすぎて、最初はそんなわけ無いとは思ったが、外を見てその考えはあらたまった。
男がどんなに名優でも、ここがいくら良くできたセットでもビル一つ見えず騒音一つしないなんてありえない。
それに、俺は昨日の夜寝ただけなのに、こんな大掛かりなだましをしても何もいいことはない。
途方にくれている俺の目に、布団の下敷きになり、鱗片を少しのぞかせている和紙を見つけた。
布団の下から引っ張り出すように出したそれは、瓦版だった。
そうだ、日付を・・・
天明7年
第十一代将軍徳川家斉様誕生
どうも、昨年死んだ家治の跡継ぎとして家斉が江戸幕府の将軍に就任したという記事のようだ。
納得できないが納得するしかない。俺は、何かの理由で江戸時代に飛ばされたのだ。
「あーあ、どうしよ」