躍動と出動
通常のサンタクロースと違い、ブラックサンタクロースは、いってしまえば聖夜の死神だ。死神は死神でも、悪い子を捕まえ存在を消し連れ去るという、なかなかにシビアな死神である。
サンタクロースはプレゼントを配る役目が目立つが、それはそれで部署がある。
一年間子どもを監視する部署。トナカイを育てる部署。プレゼントを作る部署。プレゼントを運ぶ部署。そのどれもが幸せなものばかりだが、そこには彼らが配属されている厳罰の部署も存在する。
聖夜の夜に悪さをするとは、聖夜への冒涜。それを許すほど、サンタクロースというのも優しくない。少々過激に感じるが、クリスマスという祭りに参加する以上、礼節とルールを弁えなければ大変失礼にあたるので、致し方ない。
しかし、この部署はサンタクロース界でも邪険に思う人が大半だ。彼らはこの日こそ活躍するものの、一年の大部分は蔑まれていることが多い。
その上、彼らは純血――サンタクロースの中から配属されるのではなく、生まれつき任務を与えられた存在だ。想像を絶するほどの軽蔑を受けてきたことだろう。
けれど、彼らはそんなことを気にしないほどに、先天性の精神が強かった。
現に、この仕事をさほど嫌ってはいない。
「純血、ねぇ。俺らは別に悪いことしてねぇのにな」
シロは遠い日を見るように目を細める。眼下に広がる星のような夜景を映しているが、彼の頭の中にあるのはまた別の出来事だ。
「·········そろそろだな。クリスマスが来る」
シロの発言を理解しているものの、クロはさして触れない。シロがこのように感傷に浸るのは、これが初めてではないし、そんな深く思っていないからだ。
山の向こう、二十四日の太陽が地平線に沈む。既に東は紺碧に染め上げられており、天頂は見事なグラデーションがされていた。
じきに夜が来る。夜が来るということは、彼らの勤務時間が来るということだ。
二十四日の日没から、二十五日の日没まで。クリスマスの時間帯が彼らの唯一活躍する時間帯。
存在はサンタクロースで霞むものの、それでも一年に一回騒げる日だ。彼らにとって、この日のために一年間虐げられたといっても過言ではない。
「日没だ。行くぞ、クロ」
「あぁ。ブラックサンタのお出ましだな」
陽が完全に姿を消し、夜が完全に訪れる。
ニヤリと笑みを深め、二人は同時にその場から消えた。
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