第89話 アーネス皇子の決意
前回までのライブ配信。
ラデュケによって更に美しい姿となったアイリスは円形闘技場を出て護衛と共に皇宮に向かう。途中、アイリスの一人称が『ボク』だったことを「正気を疑った」と言われ彼女は今後『私』を使おうと心に誓う。
敵を欺くためフィリップスの妹フィリッパとして皇宮にやってきたアイリスは第一皇子アーネスに迎えられる。彼はアイリスを自分の邸宅へと招く。
邸宅の応接間でアイリスとアーネスが話しているとユミルがやってくる。アイリスたちは皇妃側の彼が様子を探りに来たのだと推測する。アーネスが応対に出たのち、アイリスはフィリッパとしてユミルに挨拶することを決めるのだった。
私は玄関にいるアーネス皇子とユミルさんの様子を伺っていた。
今、私が居るのは応接間だ。
空間把握で見ているのでただ座ってるだけに見えるだろう。
「そろそろみたいですね」
小声で言いながらエレディアスさんの目を見た。
彼は頷いてドアを開ける。
私はアーネス皇子に向けて歩いていった。
ユミルさんはまだお手伝いさんと話をしている。
「どうした?」
皇子が声を掛けてきた。
私は彼の耳元に近づく。
その行動に少し驚いたみたいだった。
「フィリッパとしてユミルさんに挨拶しようと思ってます。意図は後ほど説明します。それで失礼ながらいくつかお聞きしたいのですが、よろしいですか?」
「あ、ああ」
「ありがとうございます。1つ目はフィリッパ様の一人称です。『わたし』ですか?」
「フィリッパの一人称? 確か『わたくし』だったな」
「わたくし、ですね。ありがとうございます。2つ目はフィリッパ様とユミルさん最後に会ったのはいつかということです」
「私の知る限り随分前のことになるな。少なくとも5年は経過しているのではないか? 他の接点はほとんどないはずだ」
「ありがとうございました。それでは、挨拶してきます」
「待て。1人で行かせる訳にはいかない。私も行こう」
「助かります」
「ユミル。待て」
アーネス皇子がユミルさんに声を掛けた。
ここからだ。
アイリスということを気づかれてはいけない。
意識を切り替える。
以前の『ボクアイリス』の記憶を隅に追いやって、『私アイリス』として接してみよう。
実際には、『わたくしアイリス』だけど。
「ユミル。覚えているか? 彼女がフィリッパだ。挨拶だけでもということでわざわざ出てきてくれた」
皇子が紹介してくれたので、私は笑顔を浮かべユミルさんに軽く会釈した。
緊張する。
でも、本物のフィリッパさんは大人しい性格らしいし、ドキドキしてるくらいがちょうどいいと思うことにした。
「見違えましたな。まるで別人のようです」
「お久しぶりです。ユミルは変わりなく元気のようで安心いたしました」
「私のようなものを気に掛けていただき恐縮です」
「忙しいときに引き留めてすまなかったな」
「いえ、私もフィリッパ様にお目にかかれて嬉しく存じます」
「ではな」
「――はい。失礼いたします」
鋭く覗きこまれた。
一瞬、気圧される。
それでも私は首を傾けて「なんでしょう」と言った雰囲気を出した。
彼はそのまま背を向けて去っていく。
去ったあとも気を抜かずに応接間まで戻る。
エレディアスさんがドアを閉めた。
私は皇子に、フィリッパとしてユミルさんに接した経緯を話すことにする。
一応、空間把握で近くに誰かいないか探る。
いないな。
「アーネス皇子。近づくことをお許しください」
「う、うむ」
「小声で失礼いたします。今からユミルさんに挨拶することになった経緯を話させていただきます」
「あ、ああ。説明してくれるのだったな」
私は横目でエレディアスさんを見た。
彼を見た理由は最終確認だ。
皇子に皇妃のことを話したら引き返せなくなる。
私の視線にエレディアスさんは小さく頷いた。
「はい。皇子は今回の襲撃の件を聞いていますよね? 言いにくいのですが、これに皇妃が関わっている可能性があります」
「――母上がか」
長い話になるのでキチンとした敬語は諦めた。
丁寧語で皇子に話していく。
一通り話し終えると、皇子は私の目を見てすぐに反らした。
「つまり、ユミルはアイリスが居るかどうか確認しに来たと」
「私はそう推測しました」
続けて応接間でエレディアスさんと話した内容を説明する。
「――アイリスはエレディアスと親しいのか?」
「いえ、親しいというほどではありません」
「そうか」
≫嫉妬か?w≫
≫その不安をアイリスに聞いちゃうところがな≫
≫精神的な格下は恋愛対象外になっちゃうゾ☆≫
苦手だ。
この雰囲気も、コメントで第三者の認識を突きつけられるのも。
「夕方まではいかがされますか?」
エレディアスさんが話を変えてくれた。
助けてくれたのかな?
「アイリスはこれからどうするつもりだ? 何か予定はあるのか?」
「皇宮内の別の場所で待ち合わせをしております」
「どの者だ?」
「カーネディアというクルストゥス様に仕えている者です」
「クルストゥスか。様々な『仕事』をしていると聞く。危険はないのだろうな?」
「ご心配ありがとうございます。養成所でも彼に魔術を教わってもいるので危険はないかと思います」
「分かった。エレディアス。彼女に専属の護衛などは付けられないのか?」
「恐れながら、私人に専属の護衛を割り当てることは私の一存では出来かねます」
「そうか」
「専属は叶いませんが護衛に関しましては1個中隊で任に当たらせていただいております。また、日が落ちた後には更に1個中隊が追加され2個中隊となります。余程のことが起こらぬ限り心配はありません」
≫中隊は百人隊が2隊分ですね≫
≫久々に丁寧語氏の解説見たなw≫
≫2個中隊ってことは400人か≫
≫いや百人隊は80人だから320人だぞw≫
≫百人隊(100人とは言ってない)≫
親衛隊が320人か。
それなら『蜂』が100人居ても大丈夫かな。
「――母上はどうする? 私が言うのもなんだが、何をしてくるのか、何を考えているのか全く分からないぞ」
皇子の声のトーンが一段落ちた。
「皇妃は日が落ちるまで皇宮へはお戻りになりません。それまでは関連する事柄はユミルの判断になると愚考いたします」
「ユミル単独であればそれほど無茶なことはしてこないか」
エレディアスさんは黙っていた。
「あの、アーネス皇子は今回の話に皇妃が関係すると信じておいでなのですか?」
「関わっていても不思議ではないと考えている。元々、私を皇帝にするためには手段を選ばず何でもしてきた方だ。それに、アイリスにしてきたことを考えればな」
≫ん? 今、何でもって≫
≫ん?≫
≫ん?≫
≫ん?≫
≫お前らw≫
「そうですね。最初、娼館に売られそうになりましたし――」
「娼館――だと!」
ガタッとイスを倒しながら皇子は立ち上がった。
エレディアスさんが素早くそのイスを受け止める。
皇子を見ると少し震えている。
「だ、大丈夫ですよ? そのときは助けて貰ってなんとか逃げられたので。――あの?」
皇子には私の声が届いていないみたいだった。
「ユミルは関わっていたか?」
「ええと――、関わっていました」
話すかどうか迷ったものの、ここにきて誤魔化しても仕方がない。
私は正直に話すことにした。
「他には何があった。隠さずに話して欲しい」
私は巨人を1人倒したあとに皇妃が慌てて席を離れたのちに追加で3人出てきたことを話した。
また、討伐軍に参加させられる前に呼ばれたことも話す。
討伐軍のことは皇子も知っているはずだ。
あ、討伐軍と言えばケライノさんが皇妃に気をつけろみたいなこと言ってたな。
ボクを――私を襲った怪物のことも気になる。
これは話してもいいのかな?
「どうした? 隠さずに話せ」
「承知しました。ハルピュイアの『黒雲』ケライノを知っていますか?」
「もちろんだ。虹の女神イリス様の姉妹だったな」
「反乱軍との戦いの最中に彼女と戦いました」
「戦った、だと? 怪物と言っても神そのものだぞ」
「はい。強かったです。それで彼女と和解する形になって聞いたのですが――」
「待て。和解とはどういうことだ」
「彼女は死なないみたいで、もう1人の協力者と完全に動けなくなるまで攻撃してから一晩看病して和解しました」
「なんだと! そんな神話級のことをさらりと流すな!」
後ろではエレディアスさんが自分の腕をつねりながら声を殺してプルプル震えている。
そういえばこの人って笑い上戸だっけ。
「申し訳ありません」
「――続けてくれ」
「はい。最後に彼女は『この国の妃に気をつけろ』みたいなことを教えてくれたんです。それが皇妃のことではないかと」
「どういうことだ?」
「推測でもいいですか?」
「構わない」
「ケライノさんを焚きつけたのが皇妃ということです。これには理由があります」
「どんな理由だ?」
「話をケライノさんを倒した時点に戻します。その後、私は別の怪物に襲われて意識を失いました。恐らくケライノさんよりも強かったと思います」
「またか。今度はどんな怪物だ……」
皇子は絶句していた。
「姿は分かりません。遠くから何度か強力な炎を撃たれてやられました。ただ、最後まで姿を現さなかったんです。想像ですが、ずっと私を観察していたのだと思います。ケライノさんですら私を倒せなかったので攻撃してきたのかと」
「なるほどな」
「怪物が私を観察していたと仮定します。私を観察する必要のあった人物。私を殺したい人物は誰でしょうか」
「――母上か」
私は頷いた。
「あくまで推測ですが、私の考えは以上です」
「非常に納得のいく説明であった。アイリスは頭も切れるのだな」
「ありがとうございます。必死なだけではありますが……」
「しかし、この推測を抜きにしても母上は本当にアイリスを――亡き者にしようと考えているのがよく分かった」
皇子はどこかを怒りのこもった目で見つめる。
「許されるものでない。エレディアス。こんなことが許されて良いのか?」
「申し訳ございません。残念ながら私にはお答えしかねます」
「今回のことも母上が首謀者の可能性がある訳であろう。これは反逆ではないのか?」
「申し訳ございません」
エレディアスさんは目を反らして応えた。
親衛隊の隊長という彼の立場では下手なことが言えないのだろう。
皇子は怒りに震える拳を開いて肩を落とした。
「――すまない」
「いえ」
皇子が謝るとエレディアスさんはそれだけ言った。
身分の差はあるんだろう。
でも彼らには互いに信頼している雰囲気がある。
「だが、もしも母上が今回のことに関わっていた場合、私は責任追及に動こうと思う。聞いただろう。アイリスこそ次代の英雄に相応しい。その英雄を守り、私も隣に並び立ちたい」
「――皇子」
≫並び立ちたいって既にプロポーズだなw≫
≫一皮剥けた――のか?≫
≫男の子の決意表明って感じか≫
≫暴走してる可能性もあるがなw≫
≫アイリスはどうすんだ?≫
何か大変に居心地が悪い。
私が大きく関わってることのはずなのに蚊帳の外で口も出しにくいからだろうか。
それとも、考えたくないけど、皇子の動機が私にありそうなところだろうか。
何か問題になりそうなら視聴者やフィリップスさん、カトー議員に相談すればいいか。
私はこの件を考えるのを止めた。
それに今は他に重要なことがある。
カトー議員に皇妃の傍にいるかも知れない『怪物』のことを伝えてなかったことだ。
今の今まで頭から抜け落ちていた。
これだけは絶対に伝えないとマズい。
私はそう決めると大人しくしているのだった。
その後、皇子の邸宅から場所を移動してカーネディアさんの元にやってきていた。
ローマに来た翌日に、巨人の前で気を失ったあと気づいたら居た場所だ。
初めてクルストゥス先生とカーネディアさんに会った場所でもある。
「そのお姿素敵ですね。アイリスさんの魅力を存分に引き出していると思います。どちらで装って貰ったのですか?」
挨拶を交わしたあと、カーネディアさんが私の姿を誉めてくれた。
彼女自身は鎧に身を包んでいる。
「闘技場の更衣室です。化粧や服を選んでくれたのはカトー議員の奥様専属の方でした」
「カトー議員の奥様ですか! いつも素敵な装いをしてると噂の方ですよ。カトー議員が奥様を溺愛してるのは有名な話ですし」
あのカトー議員が愛妻家?
意外すぎる。
「私はカトー議員本人しか知らないので、ちょっと想像できないですね。次会ったときにでも聞いてみます」
「えっ、そんなこと聞いて大丈夫なんですか?」
「カトー議員は性格こそ悪いですけど、話自体は気安くしてくれるので大丈夫ですよ」
そういえば、カトー議員ってこっちの言うことはちゃんと聞いてくれるんだよな。
考えてみれば、名のある貴族が奴隷の言うことを聞くだけでも珍しいことなんじゃないだろうか。
人をおちょくるような態度はするけど、あれは身分関係なくしてそうだし。
嫌な人物ではないのかも。
そのあと、お茶を出して貰ってクルストゥス先生がセーラさんに付いて行ったことなどを話す。
他には、カクギスさんの養女のリーシアさんのこととか、討伐軍で出会った人たちのことを話した。
コメントではまとめサイトの更新が捗るとか書かれている。
≫そっちはもう夕方頃じゃないか?≫
そんな時間か。
「そろそろ夕方ですね」
「もうそんな時間なのですか?」
素直に驚くカーネディアさんがかわいい。
「夕方以降はどう聞いてます?」
「カトー議員の使いの方が来ると聞いています」
「使いというとドゥミトスさんかな?」
「お知り合いですか?」
「昼頃にも待ち合わせして少し話しました。身体が大きくて威圧感もありますけど、冗談も言ったりすする方ですよ」
「そうなんですか」
「一見、怖いですけどね」
そんな風に話していると、そのドゥミトスさんがやってきた。
ドアの外から「カトー議員の使いだ」と声がしたのでカーネディアさんが出迎える。
「変わったことはあったか?」
部屋に入って早々、私にそう聞いてきた。
「その前に1つ重要な情報をいいですか?」
「――聞こう」
「皇妃の傍に神に近い怪物が居る可能性があります。討伐軍に参加しているときに襲われました。長い射程の強力な炎を吐く怪物です。念のためカトー議員に伝えておいて貰えますか?」
「――分かった。その怪物について他の情報は分かってないんだな?」
「はい。皇宮に居るかどうかも分かっていません。ただ、万が一に居た場合、知っているといないのとでは大きく対応に差が出ると思ってお伝えしました」
「伝えておこう。それで、皇宮に来てから変わったことはあったか?」
「アーネス皇子の家に連れていかれました」
皇子の家にユミルさんが来たので、フィリッパとして挨拶だけしたことを話す。
「そのユミルが皇子の邸宅にやってくる頻度は聞いたか?」
「あっ――、申し訳ありません。そこまで気が回りませんでした」
頻度の多い少ないで重要度が変わる。
ユミルさんが皇子の家にたまにしか来ないなら重要な用件になる。
それを確認しなかったのは痛い。
「謝ることが出来るだけまだ見込みがある。次に生かせ」
「は、はい」
頻度、頻度か。
よく覚えておこう。
「だが挨拶したことは良い機転だ。意図が読めず迷うだろう。迷いは判断を違えることに繋がる」
「ありがとうございます。さっき頻度の話がありましたが、フィリッパ様はあまり皇宮にはいらっしゃらないのですよね? 疑問を持たれませんか?」
「問題ない。フィリッパ様はともかくフィリップス様はアーネス殿下の邸宅に頻繁に訪れるそうだ。本日夜にご兄妹共々食事をする約束になっていた。その約束はキャンセルされたがな」
「そういうことでしたか」
「さて、ここからお前はフィリッパ様として一度フィリップス家に戻ることになっている。その後は自由にしていい。どう選択する?」
「自由ですか。一番、激戦になりそうな場所はどこになると想定していますか?」
「ここ、皇宮になるだろうな」
「いち組織が親衛隊に守られた皇宮を攻撃するんですか? 正気とは思えませんが……」
「皇宮に内通者がおり、その者が親衛隊に指示を出せる人間であれば可能だろう」
「そうですね。こちらの計画としては、彼女に指示を出させるように仕向けるということですか?」
彼女というのはもちろん皇妃のことだ。
「そうだ」
「彼女を炙り出すということですね」
「どうだろうな。そこまではカトー様に聞いていない」
言葉とは裏腹に彼は笑顔だ。
聞いてはなくてもドゥミトスさん自身確信しているように見える。
「分かりました。彼女が親衛隊に出す指示というのはどのようなことだと想定していますか?」
「襲撃の目標とは別のものを親衛隊に守らせるというような指示になるだろうな」
襲撃の目標は私だ。
「確かに皇族を守れと指示するだけで目標を守る戦力を減らすことが出来ますね」
≫なるほどな≫
≫戦力の分散か≫
「恐らく1個十人隊だけ残して、他は皇族を守るといった配分になるだろうな。要人でもない人物だ。1個十人隊でも十分過ぎる」
「ですね。贅沢だと思います。それで、どう『彼女』を罠に掛けるつもりですか?」
「さあな」
「分かりました。ありがとうございます」
ドミトゥスさんの表情は全く変わらなかった。
ただ、わざわざリスクを取って皇宮を戦場に選んだくらいだ。
皇妃を罠に掛けるくらいのことはしている気がする。
「情報は以上だ。フィリップス様の邸宅を訪れたのち、お前はどうする?」
「戻ってきます。囮にでも使ってください」
「ふっ。話が早いな。ならば暗くなってから親衛隊の兵士の姿で戻ってこい」
「親衛隊ですか」
「親衛隊の服や装備は帰りの馬車に積ませよう。正門の勝手口の護衛に話掛ければ入れるようにしておく」
「はい。お願いします」
私は馬車でフィリップスさんの家に『戻る』ことになった。
ドミトゥスさんはこれから親衛隊の中隊長と話をするそうだ。
「またここに戻ってきたら私は誰を頼ればいいでしょうか? クルストゥス先生はセーラさんに着いていますよね?」
「戻ってくるまでに決めておく。私も詳しい事情を知らないのでな。現状判断ができない」
「お願いします。ドゥミトス様はどうされるのですか?」
「私はただの連絡役だ。用件が済み次第ここを去る」
クルストゥス先生の話もしたので、現状、私の知り合いがローマのどこに居るかという情報も聞いておく。
ついでに親衛隊の配置状況についても聞いておいた。
まず、養成所にはカクギスさんとマリカが居る。
親衛隊は1個百人隊が配置されているそうだ。
セーラさんが連れて行かれた留置所にはクルストゥス先生とルキヴィス先生が居るらしい。
留置所は元々護衛が居るので親衛隊はいない。
そして、ここ皇宮には親衛隊が2個中隊が居る。
私も居るし守るだけなら十分なように思える。
ただ、守るだけで終わるとは思っていないし、終わらせるつもりもない。
皇妃が『蜂』に依頼したという証拠までたどり着きたいと考えている。
皇妃に関しては憎んでいる訳じゃないけど、いい加減構わないで欲しい。
彼女は自分が安全圏にいると思ってるから私に嫌がらせをしてくるんだろう。
動機がなんなのか分からないし、嫌がらせに権力を使ったり暗殺の依頼までするのは異常だ。
ふつふつと怒りが沸く。
私に嫌がらせをすると彼女の身に危険が及ぶかも知れないくらいには思って貰おう。
ただ、ふと、アーネス皇子の力は借りたくないなと思うのだった。




