第133話 思考実験
前回までのライブ配信。
アイリスは皇帝の護衛任務の直後に女神フリアエから襲撃を受けるがこれを凌ぐ。その後、カフェでメリクリウスと再会し、次の闘技会の対戦相手として鉄の巨人のことを仄めかされるのだった。
ルキヴィス先生とミカエの邸宅に戻る。
その後、私は再びローマ市郊外のティベレ川の傍に来ていた。
姿はまだ男装のままだ。
「突発ですが、昨日に引き続いて第2回対策会議を始めます!」
≫ドンドンパフパフー!≫
≫昨日の今日か≫
≫昨日は参加できなかったから助かる≫
≫議題はなんだ?≫
「鉄の巨人に勝てる方法を探すことですね。ルキヴィス先生の義手と同じ素材で出来ているとなると、剣はもちろん、暴風の魔術や散弾の魔術も効かないと思われます」
≫散弾の魔術って?≫
「氷の破片を音速で相手にぶつける魔術ですね。氷の板に暴風の魔術を当てて砕けた破片をそのままぶつけます。昨日、実験屋さんという方に提案された魔術です。あと、暴風の魔術も実験屋さんの理論で生み出されたものですね」
≫暴風の魔術と突風の魔術って何が違うんだ?≫
「暴風の方が音速を超えてそうなところですね。あと、突風は発動までに遅延があったのですが、暴風は瞬時に発動します」
≫その実験屋って何者だよ……≫
≫大学で研究してる本職じゃねえかな?≫
≫今日はいないのか≫
特に実験屋さんっぽい書き込みはなかった。
≫一応、昨日実験屋を呼んだ俺も物理専門だぞ≫
≫その割には昨日発言してないじゃんw≫
≫いいんだよ。水素結合は分かって貰えたし≫
「あなただったんですか。お世話になってます」
≫で、散弾の魔術は鉄の巨人に効かないのか?≫
「氷の板といっても薄いものですし、鋼鉄を貫くほどの威力はないんじゃないかと」
≫元々のショットガンも鋼鉄は貫けないからな≫
≫ライフル銃なら余裕だが≫
≫力を集めてライフル的には出来ないのか?≫
「工夫すれば出来るかも知れませんが、何かアイデアがないと一つに集中するのは難しいですね」
≫それこそレールガンとかになるわな≫
≫レールガンは出来ないのか?≫
≫電磁レールの機構が複雑すぎて難しいだろ≫
私も考えてみたけど、拡声器っぽい形で暴風の魔術を集中したとしても実現は難しそうと思った。
「ライフル銃の場合、弾丸の形や硬さが重要な気がします。今は近いものを作ることが出来ません」
≫そりゃそうか≫
≫銃弾は弾自体が高速に回転してるしな≫
この方向からのアプローチは変えた方が良いのではないだろうか。
「銃系統の再現は難しそうですね。またアイデアがあったら言ってください。他の方向性はそうですね……、剣での攻撃の強化はどうでしょうか?」
≫剣か……≫
≫アイリスが弾丸になって剣を突き刺すとか≫
≫可能だろうが自爆に等しいな≫
≫弾丸から離れろw≫
≫兜をぶつけるとかはどうだ?≫
「兜を全力で飛ばせばダメージは与えられそうですね」
≫使えるの1度だけだけどな≫
≫神話級の巨人だし決定打としては弱いな≫
≫水をかけて関節を凍らすとか?≫
≫凍らせることが出来れば有効だろうな≫
「私だと凍らせるのは難しいですね。気体の圧力を減らしてで温度を低くすることしか出来ないので、薄い氷しか作れないと思います」
≫セーラに教えて貰うとか?≫
≫原理は分かってるんだろ?≫
「はい。固体のブラウン運動の動きの激しさをコントロールできれば温度も変わるはずです。出来ませんけど」
≫今なら出来るのでは?≫
≫魔術そのものの原理は分かったしな≫
「そうですね。試してみるだけやってみます。ちょっと待っててください」
それから、話し合いながら水を氷に変えられないか試行錯誤してみた。
結果として、出来なかった。
セーラはどうやって広範囲を氷にする魔術を使っていたんだろうか。
シャザードさんも剣を低温脆性で鉄を切断していたと思われるので、一瞬で低温に出来るはずだ。
セーラの故郷では、貴族の中とかで代々受け継がれてきたんだろうか?
それならローマには教えたくないだろうな。
クルストゥス先生に聞けば何か知ってるかな?
――いや。
ここまでのやり取りで、鉄の巨人に対抗できる何かがあった気がする。
思考をさかのぼっていく。
貴族の中で受け継がれてきた?
いや、関係ないか。
氷を水……。
――あ、低温脆性か!
「も、もしかしたら鉄の巨人の突破口が分かったかも知れません」
≫は!?≫
≫いきなりなんだよ!≫
≫やっと気付いたか……≫
≫聞かせて!≫
≫はよ!≫
コメントが激しく流れていく。
「さっきのやり取りで思いつきました。低温脆性が使えないかって。以前、反乱を起こしたシャザードさんという方が、剣を『切断』してたんです」
≫低温脆性?≫
「私もコメントで教えて貰ったんですけど、鋼鉄ってマイナス何十度かで急に割れやすくなるみたいなんです。タイタニック号の沈没理由だとか」
≫なるほど≫
≫鉄の巨人も低温脆性で破壊するって訳か≫
「はい。低温脆性の状態に出来ればそれこそ散弾の魔術も効くと思います」
≫よく思いつくな≫
「皆さんとこうしてお話させて貰っているお陰です。関節を水で凍らすという話がきっかけでした。そもそもの低温脆性もコメントで教えて貰った知識ですし」
≫やり取りを生かしててえらい!≫
≫完璧な計画だな!≫
≫その魔術が使えればだがな!≫
「確かにそれが問題なんですよね」
≫やっぱりセーラ嬢に教えて貰うとか?≫
「個人的にはあまり気が進みません。あの魔術が彼女にとって特別なものかも知れないからです」
≫魔術が特別なものって?≫
「貴族の間だけで代々受け継がれてきた魔術だったら特別かなって」
≫なるほど≫
≫綺麗事だな。まあ、嫌いじゃないが……≫
≫アイリスが頼めば断りにくいだろうしな≫
≫ならいいのでは?≫
≫そういうことじゃないんだよなあ……≫
「あの魔術の位置づけがどういうものか、セーラに聞いてみます。誰にでも教えて良い魔術かも知れませんしね」
≫コミュニケーションは必要だな≫
≫方針は決まったな。今日はどうするんだ?≫
≫セーラのとこに行くなら早い方が良いだろ≫
≫だな≫
≫対戦相手に鉄の巨人以外が出てきた場合は?≫
「他の怪物なら、今分かっている魔術を使えるようになれば勝機はあると思っています。ヘルクレスさんは……、分かりません」
ヘルクレスさんの名前を出しながら、手が少し震えていた。
私でも名前を知っている神話の英雄。
ゼルディウスさんよりも強いはずだ。
でも、ヘルクレスさんは神だ。
死なない。
闘技会でなら神を倒してしまっても失礼ということはないはず。
私の持っている何もかもをぶつけられるのではないか。
そう考えると震えてしまう。
「ヘルクレスさんが対戦相手だったときのことも考えて、剣術方面の魔術の応用も考えておきます。皆さんも何か思いついたらコメントしてみてください。役に立たないと思っていても、良いアイデアの元になるかも知れないので」
≫おけ≫
≫剣術かぁ≫
「剣術のことじゃなくても大丈夫です。思いつきでコメントして貰えたら助かります。命が掛かってるので必死です!」
軽めの口調で言う。
≫確かにな!≫
≫そりゃ必死にもなるか≫
≫OK。考えとくわ≫
「早いですが、今日の会議はこの辺で終わりにしたいと思います。ありがとうございました。セーラのところに行ってみます。運が良ければ長官も居るかも知れないので」
ティベレ川を見ながら暴風と一体化して駆けた。
外壁は人気のない場所を飛んで乗り越えた。
まだ、以前みたいに飛び続けるのは怖い。
皇宮へは親衛隊員として門から入り、その足で親衛隊の控え室に向かう。
長官は居なかったけど、エレディアスさんが居たのでセーラと会いたいと伝えると場所を用意してくれた。
さすがに私とセーラの2人きりというのは難しく、エレディアスさんが付き添ってくれることになる。
ただ、気を遣ってくれたらしく、私から少し距離を取ってくれた。
「気を利かしてくれてありがとうございます」
お礼を言うと、彼は軽く手を挙げて応える。
控え室で待っているとセーラが隊員に連れられてやってきた。
私は隊員が去るまで、声を出さずに腕を組んで不機嫌な顔をしていた。
去るのを待ってからセーラに笑顔で話しかける。
「おはよう、セーラ。何か変わったことはない?」
「おはようございます。エレディアス様、ラピウス様。気にかけていただきありがとうございます。良くしていただいております」
彼女は私たちに微笑みかけてきた。
私の正面に座って貰る。
「それなら良かった。早速本題だけど、首謀者探しは作戦通りに進んでるよ。でも、私が行方不明になってる件で手を打たれてる」
「手を打たれてる、ですか?」
「相手が闘技会を開いてアイリスを強制参加させる手を打ってきた」
「――それは素晴らしい一手ですね」
「うん。しかもその闘技会の対戦相手というのがやっかいで、頭を悩ませてる。あ、いつも通りに話して貰って良いよ。エレディアスさんは事情分かってるし」
「うん、分かった。話を戻すけど首謀者探しはどこまで進んだの?」
「食事を邸宅の人に預けるようにしたところ。まだ向こうのリアクションはないけど」
リアクションというのは、向こうが砒素を仕込むということを言っている。
「そう。それで闘技会の対戦相手っていうのは?」
「神話に出てくる怪物で、私じゃ勝てそうにない感じだね。それで1つ、セーラに確認しておきたいことがあって」
「何かな?」
「魔術の話。セーラが使う凍らせる魔術って特別なものだと思って良いんだよね?」
「そうだね」
「あの魔術って私が使ったり解析したりしても良いもの?」
「え、もちろん良いよ。気にしなくても良いのに」
「そう言ってくれるだろうと思ってたけど、セーラと直に話しておかないと全力で取り組めないから」
「損な性格だね」
「そうかも」
軽く笑いあう。
「もし、ローマに――ううん、条件付けるのは違うかな。貴女なら喜んで教えるよ、凍結の魔術」
「いやいや、大事な魔術なんでしょ? それこそ国の外に出しちゃダメなくらいの」
「もういいの。私の国はなくなっちゃったし。それよりも貴女の方が心配。その次の相手って凍結の魔術がないと危ないんじゃないのかな?」
「それはそうだけど」
「凍結の魔術って難しいよ? これまで私の国以外の人で同じ魔術を使えるのを見たことないから。あ、でもアイリスは粒の動きと熱さの関係は知ってたね」
分子の動きと温度との関係のことだろう。
「もしかして、凍結の魔術ってセーラの国の貴族しか使えない?」
「貴族と言うより、王族にだけ伝わる魔術だね」
「王族!?」
私が言うと彼女は頷いた。
≫セーラ嬢って王族だったのか……≫
≫セーラ姫様!≫
≫じゃないと戦争の作戦なんて立てられないか≫
「王族なんて初耳だけど?」
「ごめんね。隠してる訳じゃなかったんだけど」
「謝らなくて良いよ。話してくれてありがとう。それで、王族で魔術が使える人はみんな使えた?」
「魔術の能力がそれなりにないと難しかったみたい」
≫ふむ。興味をそそられる話だね≫
≫ん? 『ふむ』?≫
≫もしかして実験屋?≫
≫僕以外に『実験屋』が居なければそうだね≫
≫そんな希少属性、あんた以外に居るかよw≫
≫キター!≫
≫興味ってなんだ?≫
私も実験屋さんが何に興味を持っているか気になる。
≫凍結の魔術を他で見たことないという話だね≫
≫難しくない話に思えるのだが≫
≫マジか……≫
凍結の魔術が難しくない?
私もマジか……という気分だ。
「――でも、貴女なら凍結の魔術もなんとかしちゃうかも」
セーラは私の顔を眺めるとそう言った。
何か表情に出てただろうか。
「なんとかしてみる。元々、そのつもりだったし」
「――分かった。闘技会まで何日?」
「正式な発表はまだだけど、10日以内くらいだと思う」
「かなり近いね。参考程度に聞いて欲しいんだけど、私が教わってから役に立つレベルになるまで2年は掛かったから」
「セーラで2年て……」
「言ってくれればすぐに話すから早めにね」
彼女は少しいたずらっぽく笑った。
「お手を煩わせないように頑張らさせていただきます」
私は冗談っぽく礼儀正しく頭を下げた。
「ふふ。どちらにしても貴女のことは応援してるから」
「ありがと」
私は親衛隊の控え室をあとにした。
歩きながら視聴者と話す。
「実験屋さんはまだ居ますか?」
≫居るが、先ほどのことを聞きたいのかね?≫
「是非、教えてください。『凍結の魔術がそれほど難しくない』という話です。さっき少し試していたんですけど、全く分からなくて」
≫ふむ。試した内容を話してくれないかね?≫
「はい」
私はさっきのティベレ川でのことを話した。
≫なるほど。液体ではかなり難しいはずだ≫
「え、そうなんですか?」
≫動く分子の重心はわかりにくいだろう?≫
≫特に水は液体でも水素結合で繋がるからね≫
「固体ならいけるということですか?」
≫その目算が高い≫
「試すなら剣の刃のような単一の原子のものが良いですか?」
≫身近なものでは金属が良いだろうね≫
「分かりました。ミカエルの邸宅に着くまで少し試させてください。セーラに言ったこともあって、自分でも考えてみたいので」
私は腰の剣を抜いた。
剣の刃を見ながら、分子レベルに解像度を高くする。
原子への理解度が高くなったからか、やっぱり良く見える。
鉄は水分子とはかなり違った。
軌道が全体的に共有されている。
その上で内側の軌道同士がぶつかっていた。
鉄って1つの大きな分子みたいな感じなのか。
私は鉄原子の内側の軌道に焦点を合わせた。
軌道といっても電子同士がぶつかっている残像だ。
それでも震えているのが分かる。
この震えを遅くすれば温度も下がるはずだ。
現在は原子がランダムに衝突しあってるだけので、これを望む方向に寄せてあげれば片方の震えが遅くなりもう片方は速くなる、はず。
セーラのときは、2対1でぶつけて温度を高くしたけど今回はそこまで必要ないと思う。
私は単純に剣の震えを一方行に動かしてみた。
「あっ」
動かした方に少しだけ剣が動く。
強く握ってなかったから剣が落ちそうになった。
≫どうした?≫
「いえ、原子の震えを一方だけに動かしたら、剣そのものが動きました」
≫そういうことになるのか≫
≫面白いな≫
≫それで吹き飛ばすとかできないのか?≫
「やってみます」
何度かやってみたけど僅かに負荷があるくらいだ。
吹き飛ばすにはほど遠い。
「一瞬だけ負荷がある感じですね。何億分の1秒だけ原子が一方に寄る感じなので、これ以上は難しいと思います」
≫なるほど≫
≫説明が理系的だなw≫
≫温度は変わってないか?≫
「やってみてすぐに触ってみます」
≫直接触るのは危なくない?≫
コメントを見る前に触ってしまった。
「すみません。もう触れてしまいました。特に温度は変わっていません」
≫おい!≫
≫気をつけろw≫
「気をつけます……」
≫素直でよろしい!≫
≫しかし、そんなことも可能なんだな≫
≫役には立ちそうにないがな≫
≫今は温度を変えることに集中しようぜ≫
「そうですね。ただ、このやり方だと温度は変えられそうにないんですよね」
≫セーラ嬢はどうやってたか覚えてないのか?≫
「彼女の魔術で覚えているのは温度を上げる方ですけど、外から内に向けて順番に使っていた気がします」
≫それだろ≫
「やってみます」
それから波が伝わるように原子の振動をコントロールしてみたりしたけど上手くいかなかった。
≫実験屋はなんかヒントないのか?≫
≫アイリスはヒントが欲しいのかね?≫
「考え方のヒントみたいなのがあれば是非」
≫ふむ。では、『思考実験』をしてみよう≫
「思考実験ですか?」
≫要素だけで単純なモデルを作る方法だね≫
≫そのモデルでいろいろ想像してみる訳だ≫
要素だけか。
今回のケースだと、全体としてくっついているけど、個々はランダムに動いているケースかな。
「例えば満員電車で全員がもがいているけどどうにもならないみたいな状況ですか?」
≫そこまで現実に合わせる必要はないだろうね≫
≫だが、良い状況設定だ≫
≫その状況で動けない者を作ってみようか≫
「動けない者を作る。周りからの圧力で潰してしまう。――あと、疲れさせて動けなくしてしまうというところですか」
≫ふむ。それを魔術として考えてみよう≫
「魔術として……あっ。まず固体を可能な限り圧縮すれば良いんですね。その上で生まれた反発を外に逃がす。なんだか出来そうな気がします」
≫そうだね。さぁ、現実での実験の時間だ≫
「はい」
≫温度の判定には水滴を使うのが良いだろうね≫
「あ、上手くいっていれば凍るので、それで判定する訳ですね。創水の魔術を使って水滴を落としてみます」
私はまず刃の原子全体の距離を圧縮した。
外からの見た目はほとんど変わらない。
それでも原子レベルで見ると、瞬きの回数が増えている気がする。
その状態で片方向だけを解放していった。
上手くいったかな?
私は創水の魔術で出した水を手のひらに落として、指先から水滴を刃の根元に落とす。
何秒かで凍った。
≫お、成功か?≫
≫やった!≫
上手くいっているけど、何か違うな?
水を凍らせることは出来てるけど、低温脆性まではいかない気がする。
思考を巡らせる。
圧縮して片側だけに放出させるか。
ホースの口を絞る。
違うな……。
思考実験……要素……。
――あ。
私はチューブ状の容器に入ったハンドクリームを思い浮かべていた。
ああいう容器の中身を最後まで使うとき、圧縮を口まで移動させていく。
そのイメージを反映させた。
――ッ!
刃の根元の空気が今までとは明らかに異なる。
なんというか、周りに冷気が漂っているし、触ると危険な雰囲気がある。
私はもう1度、創水の魔術で水を手のひらに垂らし、指先から刃の根元に水滴を落とした。
ジッ!
音がしつつ水蒸気が出る。
凍った氷の粒がコロンと地面に落ちた。
更に水滴を落としていく。
ジージー言いながら氷の粒になり、地面に落ちるのと、水蒸気が広がる。
「出来たみたいですね」
≫なにい!≫
≫何が起きたw≫
≫出来たみたいってなんだよ! 出来てるわ!≫
≫完璧だろうが!≫
≫反応がクールだな! 凍結だけに!≫
≫どうやったんだよw≫
私にチューブ容器に入ったハンドクリームを絞り出すイメージを伝えた。
≫さっそく思考実験を応用したのか≫
≫さすが≫
≫1から思いついたセーラ嬢の国がすげえ≫
≫チューブとかまだ存在してないだろしな≫
≫アイリスもすげえけどな≫
「古代時代の知識がバカに出来ないことは分かっていますが、この魔術を作った人はすごいですね。そもそも、温度が原子の動きの激しさとか知らないでしょうし、よほどの人だったのでしょう」
≫ところで低温脆性ってどう試すんだ?≫
「長官に折れてる剣とかないか聞いてみます」
≫その手があったか≫
「分かってしまうと、思ったより簡単かも知れません。広範囲に使うのは難しそうですけど。あとは、鉄の巨人の鋼鉄部分に凍結の魔術が使えるかどうかですね。ルキヴィス先生に聞いてみます」
≫それが良いかもな≫
≫実験屋はなんかコメントないのか?≫
≫ふむ。非常に素晴らしいね≫
≫発想の瞬発力に驚かせて貰ったよ≫
≫感心していろいろ考えさせられた≫
≫だろ?≫
≫なんでお前が偉そうなんだw≫
≫後方彼氏面w≫
「ありがとうございます。お陰様で鉄の巨人対策もなんとかなりそうで安心しています」
≫セーラ嬢も帰り道で出来てるとは思うまい≫
≫意外性の化身!≫
「あはは」
そんな感じでミカエルの邸宅にたどり着く。
私もコメントもテンションが高いままだったけど、今日はゆっくりとお風呂に入ってからちゃんと寝ようと決心するのだった。




