08 ー2
8ー2
私はその時TVドラマを見ていた。
その手の時代劇だ。
毎回欠かさずに見ている。
DVDに撮って。
元領主の若君様が落城寸前-----
その城から忠臣に守られ落ちのび
どこかの村か山里で秘かに育てられ
大きく立派に成長し、お家再興を。
よくある話だ。
そして世直しを。
主人公の名は
実田福村。
戦国時代、
中部地方で覇を競った戦国大名の子供だ。
しかし世は
関が原の戦いを経て治まり。
いや、まだ大阪城には秀頼が-----
豊臣秀吉の子がいる。
その様な中でこの福村君
世直し旅を-----。
諸国を巡り
自らの家来となって
自らの天下取りを助けてくれる者を-----。
というものらしい。
ある時は-----。
ある回は。
村の荒くれどもを教えさとし-----
役人から救い
家来として手足のごとく使い。
荒くれどももこの福村の家来となり
天下取りの手助けをする事で
立ち直るわけだ。
荒くれどもは
自分たちが何をなすべきかをわからずに
力をもてあまし-----。
そのために荒れているわけだ。
この手のマンガ必ずそうなっている。
彼らの存在理由を。
何をなすために生まれてきたのかを
わからせてやれば。
それを教えてやれば
立ち直るわけだ。
福村の家来となり天下取りの助けを
という目標をだ。
この手のマンガで立ち直るとは
も・ち・ろ・ん・福村様の家来となり-----だ。
片っ端から
金持ちどもをこらしめ
福村の家来にしていく。
そして福村の天下取りの手助けをさせるわけだ。
福村様のために。
福村は熱く語るわけだ。
“おまえたちが家来となってくれれば必ずや”と。
“後悔はさせない”と。
後悔はさせない-----とは。
この手のマンガでは
福村様が天下を取ればいいわけだ。
家来は自分の事のように喜ぶわけだ。
福村様が天下を取れなければ
家来は-----後悔する-----わけだ。
私の力不足により
あの時、
私めが、
お力になってさえいれば-----
と。
福村が立派になった姿を見て感動するわけだ。
そう思わない奴は
この手のマンガでは
“人で無し”
の
“生きていても仕方のない奴”となっている。
心ある者が世の中にいれば
そういう輩を
懲らしめてくれる。
福村の家来になるように教育してくれる。
という事らしい。
そうならない者は
どうなるのか。
まあいいか。
またある時は。
金持ちにもいろいろいる。
村人たちのために力をつくす金持ちがいれば
この福村君。
私の家来となり-----
この金持ちがだ-----
私の教育指導に従えば-----
もっと多くの人々を救えると
教え諭すわけだ。
“オマエがいたらぬせいで
あの者もこの者も救われなかった。
私の家来になれば
私が指導して救わせてやったものを”
-----と。
それでこの篤志家の金持ち。
目を開かされ-----。
この方の家来になれば
世の多くの人々を。
もっと多くの人々を-----救えたのか。
そうして立ち直り。
私は何と愚かだったのだ
福村様の家来になれば-----。
そうすればよかったのか。
それを悟り
福村君の天下取りのために-----というわけだ。
そして今回は-----。
このパターンで一年間もたすのも○○だなあ
TVドラマの制作サイドも。
今回は
村人が困窮し
それを見ても助けない
極悪非道の商人-----を。
私利私欲のかたまりのような奴だ。
立ち直りご主人公様-----
福村君の手足となって働く-----
元荒くれどもを使い
こらしめるというものだ。
福村君が
村人に訴えるわけだ。
「あのような強欲な悪徳商人。
村人が困っても助けない。
私腹を肥やす事だけにまい進する。
村人よ、立て。
この福村とともに。
そうすればきっと世の中良くなる」
そこでこの村人ども
ハッと気づくわけだ。
福村君とともに立ち上がれば-----と。
そして立ち直り-----。
この手のマンガで立ち直るとはそういう事だ。
福村とともに-----村人も協力し。
村人の中には協力する者もいる。
心のキレイな者たちは
立ち上がるわけだ。
服村とともに。
しかし中には-----
悪徳商人にベッタリで-----
私腹をこやす者。
あるいは悪徳商人を怖れて見て見ぬフリ。
そういう者も多い。
私は見ていて
どうして主人公の福村を助けない。
主人公こそが-----
こんないい方が天下をとれば-----と。
そして心のキレイな者たちは生き残り、
福村の天下取りのために働く。
それこそ命がけで。
心のキタナイ
人で無しどもは一掃され。
世の中は治まり福村の天下に。
メデタシメデタシ。
こういう回もあった。
市井にまぎれ村人の中にいる
福村君に対し
ある忠臣が現れ言うわけだ。
“あの商人め、金持ちめ
福村様の困窮を知りながら
見て見ぬフリ。
福村様はいずれ天下を。
それを-----。
このようなあつかいをするとは。
これは福村様の徳を妬んで。
このように村人にしたわれている
福村様を妬んで。
いや-----
いずれ福村様のものとなる
天下を乗っ取ろうとして。
これでは福村様-----。
私めがこらしめて福村様の家来に。
あの者が家来になりさえすれば。
つきましては福村様
私めはあの商人めを懲らしめに
あの者の屋敷へ行ってまいります。
ころあいを見計らい
福村様のご威光を示すために
私めが手を振ります。
それを合図に
あの山の上に旗をおあげください。
そう言われて-----
福村君は。
逆に福村様に-----だ。
そう言われて
村人全員がその気になって-----
旗をあげるという回もあった。
商人は-----忠臣に懲らしめられ
その上、福村の旗ざしものを見て
観念して-----家来に。
そういうモノもあった。
“人の心を持った”
“人の顔をした”
世の中ならば
そうなるわけだ。
そうしてやれば-----。
まあマンガだ。
現実世界でこれをやれば-----
どうなるか。
制作サイドもうまく造っている。
もし仮にこのようなつもりで
そのまま大人になった者がいればどうなるか。
その人物はどうするか。
私はニンマリと-----。
まあ冗談だ。
チャンネルを切り換える。
私はハッとした。
そこにはニュースが。
“光対中学”
“殺人事件”と。
私の出身中学だ。
私は固まってしまった。