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「校長がマサカ」レム。
「ただの甘いだけの先公だと
思っていたが。
あんな甘い先公がいれば
尽川のような奴を
思う存分-----
教育してやれる。
そう思っていたが。
それで目をかけてやっていたのに。
福村でもそうだろう。
“福村様。
あの者が人の気持ちを
福村様の気持ちをわかって
家来になってしてくれれば
必ずや-----。
このようにすれば
必ずや家来になって-----”
そういう忠義の臣という者は
いるもんだ。
そういう者だと信じて
言う事を聞いてやっていたのに。
“ご主人様は
このようにすればきっと天下を。
私めの言う通りに
なさってくださればきっと”
そう言ってくれているとばかり
思っていたのに。
そうでもなければ
誰がアンナ奴のいう事なんか。
そうだろう。
言う事を聞いて欲しければ
どうすれば私が社長になれるか。
あの者どもを
どう懲らしめてやればいいか-----
どうやって教育指導してやればいいか
そういう事を教えてくれていればいいんだ。
そう言って
くれていると思って
言う事を聞いていてやったのに。
目をかけてやっていたのに。
それを。
そういう奴だったとは。
そんなつもりでいたとは。
それが本音だったんだ。
私も馬鹿だった。
軽く考えていたんだ。
あんな調子のいい輩は
すぐにゴマかそうとする。
私がどうすれば立派になれるのか。
このように尽川のような奴を
懲らしめてやれば。
そういうつもりで
言ってくれているんだと
信用してやっているのに。
それで目をかけてやって
言う事を聞くフリを
してやっているのに。
しかしあの校長は
すぐに-----
子供たちの信頼を裏切る。
この私の信頼を裏切る。
ゴマかそうとする。
少し困難にぶつかれば尻込みをする。
ヤレガキが万引きをさせられた。
警察ざたになった。
親がうるさく言ってきた
等と-----。
そうなればもう慌てふためいて。
全く調子がいいというか
少し困難にぶつかれば
誤魔化そうとする。
しかしそれではいつまでたっても。
それでは私の将来はどうなる。
それがわからない。
まあ所詮この校長もその程度の奴か。
しかしそんな輩でも使い方によっては
そう思っていたのに。
それで目をかけてやっていたのに。
あれじゃあ
他の教師の方がまだマシだ。
教師の中にはね
例の映画の○○教師の言うように
その場さえ誤魔化せればいい。
子供たちの気持ちを分かってやれるのに
自らの保身のため。
あるいはどうしてこんな奴のために。
そんなつもりでね。
いい加減な事を言う者も多いんだ。
私の中学時代にも
そんな先公はいた。
“コノ者さえ家来になって”
トコトン懲らしめてやれば。
そういうつもりで教育してやっているのに。
“もうそのくらいで許してやったら。
これ以上やれば
訴えられて
自殺でもされて
警察ざたにでもなればどうする”
そう言ってごまかそうとする。
“こいつも反省して。
なあそうだろう。
お前が人の気持ちを分からないから
イジメられるんだ。
これに懲りたら
これからは。
そのくらい聞いてやれ。
そうすればきっとわかってくれる。
先生の言うことを聞いて
そのくらい我慢して
なんとかしてやれ。
クラスメートだろう”
“こいつも反省して先生の指導に従って
気持ちを分かってくれると言っている。
それでいいだろう”
先公がそう言うから信用して
許してやったのに。
その程度で許してやったのに”
それで許してやった奴は
どうしたと思う。
それこそ
卒業すればそれまで。
これから
あれもこれもしてもらおう。
この私の将来のために。
それを
知らんぷり。
やればできるのに。
その時の私の気持ちが
お前たちに分かるか。
信用していたのに。
こいつさえ家来になって-----。
そのために
あれほど目をかけてやったのに。
ご主人様に対する態度を
あれほど教育してやったのに。
この私が金が欲しいと言えば
何を差し置いてでも
用意をする。
それが家来というものだろうう。
できなければ-----死んで当然だ。
死んだ詫びを入れろ。
そうだろう。
それを毎日毎日教えてやったのに
その私の努力はどうなる。
特に尽川は。
コイツはひどかった。
人を盗人扱い
強請りたかり扱い。
この私をだ。
それよりもひどいのは
その先公どもだ。
“もうそれだけ教育してやれば十分だ。
これ以上やれば
警察ざた
そうなれば
あなた様の将来は”
そう、親身になって言うから
それで許してやったのに。
騙しやがって。
こんなやつ。
尽川のような奴。
いくら金をとろうが
脅して盗人をさせようが
いじめ殺そうが
ビルの屋上から突き落とそうが
大丈夫じゃないか。
学校でなら。
いくらやってもなんとかなるんだろう。
まわりの大人たちが
それこそ慌てふためいて
何とかしてくれる。
やればできるんだ。
先公も警察も。
それをわからなかったせいで。
それさえわかっていれば。
あの時
この尽川なんぞは
トコトンにやって
いじめ殺してやったものを。
いじめてやって
自殺させれば。
そこまでやってやれば
それで済むんだしな。
死にたくなければ
人の気持ちを分かればいいんだ。
人の気持ちを分からない
コイツが悪いんだしな。
しかし
これだけ懲らしめてやたんだし
教育してやったんだし
これでもう大丈夫だ。
これで一生
こいつにしてもらえる。
そう信じたせいで。
先公たちもそう言っていた。
それを信じて-----
そのせいで
どんな思いをしてきたか。
お前たちにはわかるか。
それをしなかったせいで
-----。
それが心の傷になり。
あの時そうしていれば
今頃。
こんな奴の一生-‐---。
そう思うと。
それにもっとひどい話もある。
その先公。
私がこの中学の教師になって
しばらくしてからの話だ。
その時もこの中学は荒れていたんだ。
荒れて当然だろう。
そんな奴ばかりなんだから
生徒も先公も。
荒れる子が
人の気持ちを分かって欲しくて
それで教育してやっているのに。
この者さえ分かってくれれば。
そういう思いで
訴え続けているのに。
それを
なんと言ったと思う。
その先公
“迷惑な話だ。
どうしてイジメなんぞにいちいち
手を焼かされなければならないんだ。
あんな奴ら
うまく-----言いくるめて。
イジメられたくなければ
金くらい少しくらい。
言う事を聞くふりをして
うまくごまかしてやればいいんだ。
それを教えてやっているのに。
そうしないといじめられるぞ
と言ってやっているのに
馬鹿な奴だ。
そんなだからいじめられるんだ。
親にしてもそうだ。
オヤジは金持ちだろう。
息子がいじめられたくなければ
馬鹿な息子がそんなに可愛ければ
金くらい少しくらいくれてやれ。。
子供のすることだ。
その程度で済む。
そうやって乗り切ってきたんだ。
学校とはそういうもんだ。
そうやって三年間
上手く乗り切れば
死なずに済むのに。
まあ金持ちなんぞは
少しくらいイジメられた方が
人の気持ちがわかるようになって
いいかもな。
大きな声では言えないが
ざまあみろだ”
そんなことを言うんだ。
その先公は。
その時の私の気持ちがわかるか。
信用していたんだ。
その先公を。
それで一応
言う事を聞いていてやったのに。
それを。
このような者は
このように教育してやれば
将来きっと。
それで
いろいろアドバイスをしてくれている。
私の将来のために
あの者たちが家来になってしてくれれば
一生安泰だしな。
そう思っていうことを聞いていたやったのに。
その時の私の気持ちがわかるか。
私が中学の時も
そんなつもりで
あんなことを言っていたのか。
“その程度で許してやれ。
きっと人の気持ちを。
警察ざたに”
全て嘘だったんだ。
尽川のような奴は
卒業すればそれまでだ。
そのことも分かってやったんだ。
それを
その先公の言葉を信じて-----
許してやったのに。
もし私の家来になって
私の将来のために。
一生してくれないとわかれば
あの時分かっていれば
あの時
いじめ殺してやったのに。
そうしていれば
こんな事にはならなかったんだ。
そうだろう。。
映画の○○教師も言っているだろう。
子供たちをこのまま放っておけば
いつか爆発して大変な事になる。
今何とかして-----
人の気持ちを分かってやらないと。
そうだろう。。
その通りなんだ
この尽川さえわかってくれていれば
こんなことには。
もしわかってくれないのなら
あの時いじめ殺しておけば
こんな事には。
そうだろう。
それを
あんないい加減な
先公の言葉を信じたばかりに。
いや
いい加減じゃあない。
明らかに私をダマしたんだ。
騙していたんだ。
わかっていながら
その場さえゴマ化せればいい。
そんなつもりで-----。
信じた私はどうなるんだ。
それを-----。
そんなやつの言葉を信じたせいで
一生あんな奴らに顎で。
そんなこと許せるか。
あの先公
“あんな荒れる子と言う奴らは
その程度だ。
そうやって三年間。
うまくてなずけてやっていく。
それが教育だ。
先生という商売も苦労が絶えないよ”
そう言って笑いやがったんだ。
”君にも苦労させられたが。
これからは君も
教師の苦労というものが
どういうものか
よくわかるようになるさ。
まあこの私に任せておきたまえ。
私の言うとおりにしておけば
なんとかなるよ。
今年も色々と問題があってね”
そう言って-----
嬉しそうに。
その時の私の気持ちが-----
お前たちに分かるか。
こんな奴を信じたせいで。
あの時
もっと教育してさえいれば。
この尽川を。
他にもパシリは何人かいたがね。
あんな先公にごまかされずに。
それが悔しくて悔しくて。
それでも
まだ野里がいる。
この先生ならば。
そう思っていたのに
野里まで。
お前たちどう思う。
そんなヤツらを。
警察だろう
そんなヤツらを取り締まるのが
警察じゃあないのか。
-----
言っても無駄か。
それで私も大人になってね。
考えたんだよ。
どうすれば
人の気持ちを分かってくれるのか。
口で言ってもダメ。
やはり懲らしめてやるしかない。
しかし教師になって懲らしめてやれば
ヤレ体罰だ
なんだと
ワケのわからん連中が
騒ぎ立てる。
全く
映画の○○教師も言っているだろう。
そんな教育にたいする
熱意も知識も経験も
何もない輩が
いらぬ口を出すから
日本の教育は歪められてきたんだろう。
それもわからずに。
それで仕方なく
荒れる子を立ち直らせるためだ。
なんとかしてやれ。
クラスメートだろう。
荒れる子という者は
幼少期
人の気持ちをわかってもらえなかった。
それは親かもしれない。
先生かも。
クラスメートかも。
それが心の傷になり
荒れ出すんだよ。
世の中の理不尽さ。
自分自身ではどうしようもない
そういうものに対して
その絶望感から
荒れ出すんだよ。
これは心傷学でも
証明されていることなんだよ。
文句があるか。
これを否定するということは
心傷学に喧嘩を売るということだしね。
そうだろう。
そんな荒れる子を立ち直らせるには
人の気持ちを分かってやる。
それしかないんだ。
それを分からない。
クラスメートだろう。
トコトン分かってやるしかないんだ。
そうだろう。
そう言って金持ちやこの尽川を。
その息子を娘を
思う存分教育してやったんだ。
人の気持ちを分からないから
イジメられるんだ。
このままではイジメ殺されるぞ。
先生の気持ちを分かって。
そう言って。
そうやって教育してやれば
きっとわかってくれる。
そう信じて。
しかし-----それでもわからない。
このモノならばきっと。
そう思って
一日千秋の思いで待っていても
いつになっても
誰も私の前に現れて
“先生
この私が先生を立派に”。
そういう者は一人として現れなかった。
ただの一人もだ。
この尽川にしろそうだった。
人づての社長になった。
そう聞いて。
あの時
中学時代にあれだけ
懲らしめてやったんだ。
今に私の前に現れて。
そう期待した時もあった。
しかしこいつと来た日には。




