55ー03
私の家来になってくれれば
どんなにいいか”
それをね。
何かしてくれといえば。
やれ
“仕事をお前などからもらっていない”
とか
“金にもならないのに
どうしてお前のためになんぞ”
とか。
全く何もわかっていないんだよ。
“立場”というモノがね。
君たちならわかってくれるね。
“立場”というモノを。
あれだけ教育してあげたんだしね。
わかってくれているよね。
あなた様のためならば
全財産なげうって。
命がけで。
そういうことだよ。
そのために君たちはいるんだ。
そのために存在を許されているんだよ。
君たちは。
それが君たちの“立場”なんだよ。
それを教えるのが
“真の教育”というモノなんだよ。
福村でもそうなっているだろう。
そうなればね。
命令するだけでね。
何でも言う事を聞いてくれる。
あの金持ちがそうなってくれれば
あの力のあるものが
あの社長が
家来になってしてくれれば
どんなにいいか。
それこそ
この私はどんなに立派になれるか。
そうだろう。
その事に気づかない。
わかろうともしない。
分かっていても
わからないふり。
果ては-----
わかった途端に
この私をあろうことか
盗人扱いする者まで。
そのせいでどんな思いをしてきたか。
そんな者たちを許してはいけないんだよ。
教育の現場ではね。
そんな者を許しておくから
教育の現場が荒廃するんだろう。
映画の○○教師もそう言って
嘆いているんだろう。
ウチの親も言っていた。
『そんな者たちは決して許すな。
思い知らせてやれ。
そんな者がいるから』
とね。
だから許してはいけないんだよ。
あの時アイツさえしてくれていればね
今頃私は-----どんなに立派に。
それを-----。
それが心の傷になって
人は犯罪に走るんじゃあないのかね。
心傷学でそれは証明されているんだろう。
この私を
犯罪に走らせたいのかね。
その責任は誰が取ってくれるのかね。
世の中が取ってくれるのかね。
そう訴えてもね。
世の中の愚か者どもは-----。
心傷学があれほど
その事を訴えているのにね。
私はね。
子供心にそう思ったものだよ。
福村を見るたびに。
映画の○○教師を見るたびにね。
君たちもそう思った事はないかね。
このように懲らしめてやれば
してくれるのか。
このように教え諭してやれば
してくれるのか。
このように自らのオロカさをわからせてやれば
してくれるのか。
甘い奴ならば
困った者どもをダシに。
私の指導に従えば
もっと多くの困った者どもを救える。
それをわからせてやれれば
してくれるのか。
荒れる子を立ち直らせるには
私の指導に従うしかない。
それさえわからせてやれれば
してもらえるのか。
そうすればいいのか。
そうして指導してやれば
あの金持ちどもが
社長、力の者どもが
私の事をわかり。
“この方、
何かある”
とわかってくれて
してくれるのか。
心傷学を使って
それを証明できれば
世の中がわからせてくれるのか。
心の傷だといえば
世の中が一緒になって
わからせてくれるんだろう。
私の家来にならない者どもを
懲らしめてくれるんだろう。
そうなれば
してくれるのか。
せざるを得ないだろう。
いくら尽川君のような子でも。
それで教育に。
心傷学に。
希望を持ったんだよ。
しかしね。
現実はね。
それで通らないんだよ。
マンガの福村の中の世の中のようにはね。。
いくらわからせてあげてもね。
教えてあげてもね。
わかってくれないんだよ。
人の気持ちをね。
そういう気持ちでね。
私はね。
子供の頃からね。
世の中の者どもを
教育してあげているのにね。
ああいう“人で無し”の子というモノはね。
それをわかっていながら。
そういう
“人の気持ち”を
わかっていながらだ。
そういう
“人の気持ち”を
平気で踏みにじる。
中には自分さえ良ければ。
自分の息子さえ良ければ
福村などどうなってもいい。
天下を取れなくても
そういう輩もいる。
この私がどうなってもいいのかね。
一生
あんな尽川君のような者たちに
アゴでコキ使われてもいいのかね。
そのような事
許しておいていいのかね。
それで子供たちは
犯罪に走るんじゃないのかね。
これは心傷学をやった者ならば
みんな言っている事なんだよ。
そのせいで人は-----
私は、福村は、荒れる子は-----
犯罪に走るんだよ。
だから人を犯罪に
走らせたくなければ
福村の気持ちを
わかるしかないんだよ。
私の気持ちをね。
トコトン分かるしかないんだよ。
トコトン福村の気持ちに
付き合うしかないんだよ。
そうしなければ
福村も私も
立ち直れないんだよ。
君たちは
私を立ち直らせたくはないのかね。
立ち直らせたいだろう。
“人の心”を持っていれば
当然そう思ってくれるだろう。
そう思わないものは
分かっているね。
“人の顔をした世の中”では
生きていてはいけない者
なんだよ。
それを分からせるのが
教育なんだよ。
それを分からせるために
学校はあるんだからね。
そうだろう。
だから学校では
子供たちを
立ち直らせるためならば
何をしてもいいわけだ。
世の中もそれを認めているしね。
それを認めなければ
世の中大変なことになるしね。
そうだろう。
子供たち
行き場をなくしてね。
福村が治める世の中になれば
どんなにいいか。
そうだろう。
人々は福村のためだけにね。
福村様さえよければ
自分たちは何をガマンしても。
福村様さえよければ。
そうなってくれるんじゃないのかね。
なるべき者が
世の中を治めなければね
人の心は荒れ
犯罪に。
実田福村では
そうなっているだろう。
ウチの親もそう言っていたしね。
“あんな奴が天下と取っているから。
どうしてあんな奴が。
福村ではなく”
よくそう言っていたよ。
それを見た時にね。
私は思ったものだよ。
そうか
それで人々は
おたがいに憎みあい
ののしりあい。
そして
犯罪に。
盗っ人
殺人まで。
貧困もある。
戦争の絶えない世の中になるのか。
どうして世の中
それに気づかない。
なるべき者がならないから
どうしてそれに気づかない。
理由はわかっている。
オロカだからだ。
そしてそれを教えるのが
教育なんだよ。
分かっていても気づかないフリ。
人で無しだからだ。
そんな者を許しておいても
いいのか。
世の中
そんな事もわからない。
なるべき者がなりさえすれば
それに気づかない。
いくら言ってもだ。
それをわからせるために
教育はあるのに
教育は無力だ。
それを証明するために
心傷学はあるのに。
その余りの
高尚さに
深遠さに
世の中の無知蒙昧の類は
者どもは
わからないんだ。
そのせいで私は
いつまで経っても
教師のまま。
この私を教師のまま
朽ち果てさせていいのか。
そうだろう。
今に心ある者が
この私の前に現れて-----
私こそふさわしい事を
わかってくれてね。
私を立派にね。
“人の気持ち”をわからない者どもをね。
私に代わって懲らしめてくれてね。
しかしいくら待てども-----
いっこうに現れない。
今にあの教え子が-----
きっと。
そう思って
一日千秋の思いで
待っていてもだ。
彼らの卒業写真を見るたびにね。
彼らがいまどうしているか。
その音信に触れるたびにね。
この子はこんなに偉くなったか。
この子はああやって教育してあげた。
だから大丈夫だ。
きっと今に。
私の前に現れて
私を立派に。
そう思って一日千秋の思いで
待っていてもね。
どこをどう-----。
あれだけ教育してあげたのにね。
人の気持ちを分かる大切さをね
教えてあげたのに。
“先生の気持ちを分かって”
そう教えてあげたのに。
何度
そう言った事か。
人の気持ちを分からなければ
どういう目に遭わされるかをね。
金持ちや社長を、その子供を指導して
立ち直らせられば
わかってくれるんじゃないのか。
福村に出てくる強欲な金持ちを
懲らしめて立ち直らせるようにね。
そうすれば立ち直ってね。
家来になってしてくれる。
そう信じてね。
そう信じて教育に
まい進してきたのに。
映画の○○教師を見てね
こうすればわかってくれるのか。
世の中も。
金持ち、社長、力のある者たちも
これで救われる。
こうすれば。
こうして懲らしめてあげれば
教え諭してあげれば
社長にでも
何にでもなれるのか
そう信じていたのに。
それを信じて
この三十有余年-----。
しかし-----
世の中-----
愚かすぎるんだよ。
人の気持ちを分からない。
私こそふさわしいことがわからない。
私が特別だと気づかない。
あの映画の○○教師は
私をだましたのか。
そう思った時もあったよ。
しかし心のどこかでは
信じていたんだよ。
今にこの子が
この教え子が
出世してね。
立派になってね。
“先生。
お待たせしました。
これからは
全て私めにおまかせ下さい。
先生様を
きっと立派に”
そう言ってくれるのを
どれだけ心待ちにしてきたことか。
私の親はわかってね。
してくれたよ。
『ウチの子は-----
きっと今に。
あの者どもを思い知らせて
きっと立派に。
そうなれば
世の中もきっと』
そう言ってね。
こうすれば分かってもらえるのか。
そう思って喜んでいたんだが。
これで分かってもらえる。
立ち直れるとね。




