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旧校舎。
少子化の影響により今は使われていない。
近く取り壊されるという話もチラホラ。
ここへの立ち入りは禁止されてはいるのだが
問題のある生徒たちにとり格好の-----
たまり場?-----と化しているようだ。
「しかし季末の奴が
血相変えて飛び込んで来たしな。
やっぱり何かあったのかな」
「まさか-----二年前の-----。
また誰かが」
「よせよ-----そんな事。
そう何回もあってたまるか」
「だったらどうして-----季末の奴が。
それに他のクラスも全部自習だぞ」
「本当か」
他のクラスもか。
この三人。
三年二組の生徒。
季末はその担任だ。
自習になったのをいいことに-----
教室を抜け出し。
「でもな、お前。
二年前の自殺した奴」
よそのクラスの生徒の名など。
「尽川か」
「そいつと同じクラスだったんだろう」
「どうしてそいつ-----死んだんだ」
一人の生徒の表情が強張った。
「いや-----。
勉強に-----悩んでたみたいだし-----。
友人関係にも-----」
モゴモゴと。
あんな奴、
助けて何の得がある。
世の中の有難みをわからせてやろうと
クラス全員でからかったり
無視したり-----。
そんな事言えるわけも。
「なるほどな」
当時の学校側の説明そのままか。
「それより
この旧校舎の中を探検しないか。
一度やってみたかったんだ」
「一組の何とかいう奴が自慢してたが-----。
何もないっていう話だぞ」
「だいじょうぶか-----。
ここへ入ると夢見が悪くなるって話だぞ」
直角に折れ曲がった校舎。
三階建てだ。
各階教室が三つずつ。階段は二ヵ所。
一ヵ所は端に、
もう一ヵ所は折れ曲がったところにある。
現在使用している新校舎-----。
とはいえ
できてからだいぶ年数が経っている-----
からは離れている。
その中には
以前、理科室として使われていた教室もある。
いまはどうなっているのやら。
三人は中へと入った。
簡単なバリケードのようなものはあるが
無理をすれば中へ入れる。
内部は不気味な暗さだ。
人がいないだけで-----
机も椅子も残っている。
掃除用具をいれるロッカーもそのまま。
一階から二階へ。
あまりいい気は。
「なにもないな」
「まあ-----そんなもんだろう」
三人は理科室へ。
扉を開け-----中へ。
実験用の薬品類は-----全くない。
ホコリが積んでいるかとも思ったが
キレイなものだ。
その時-----ロッカーの扉が開いているのに
目をとめた。
中から何かがころげおちている。
だいぶ大きい。
一人が叫んだ。
「椰田-----どうして」
一二年次に同級生だったらしい。
頭から血を-----黒っぽいものを流している。
“死んでいる”
三人とも咄嗟にそう思った。
顔面蒼白。
三人とも逃げ出した。