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警視庁裏海警察署。
校長と当庭は
当庭のマイカーで乗りつけた。
光対中学のある所轄署ではないため
初めての来訪だ。
受付で。
そして担当の部署へ。
生徒の両親がいた。
刑事にどうも事情を聞かれているようだ。
当然か。
この二人の親。
当庭も校長も顔見知り。
問題の多い生徒だったため
しょっちゅう顔を合わせていた。
当庭たちの顔を見るなり。
「先生、これはどういう事ですか。
ウチの子は」母親が泣き崩れた。
「母さんまだ-----自殺と決まったわけでは。
事故の可能性も」父親が。
「あの連中のせいに決まってます。
もし事故だったにしても
危ないところを連れ回したに決まっています。
だからあれほど頼んでおいたのに」
当庭も校長もその顔には苦渋の色が。
この生徒の両親は二人とも-----。
“あの子たちが金目当てに
自分の子を連れ回した”と
思い込んでいる。
しかしあの子たちはそんな事はしない。
当庭は信じたかった。
子供たちとも何度も話し合った。
あの子たちにかぎって。
それより気がかりが。
この両親の話を真に受けた警察が-----
あの子たちに疑いの目を。
その事で壊れやすいあの子たちの心が
どうなるか。
それが原因で-----。
さらなる問題行動に走る事にでもなれば。
「仏さんの中学の先生ですか」刑事が。
「いろいろご両親にも
話をお聞きしているのですが」別の刑事も。
「はい、担任の当庭です」
「校長の野里ともうします」
「校長先生」
まだ事件か事故か。
自殺と決まったわけでもないし、
刑事にしろあまり乗り気ではないらしい。
「それで遺体はごらんになられましたか」
「いえ、まだ」校長。
「ではこちらへどうぞ」
遺体の安置室へ。
死体は-----峰月護夫-----のようだ。
水死体は身体がふやけて-----わかりづらい。
今はやりのDNA鑑定とやらもするらし。
「まだ死因ははっきりしませんが
これから司法解剖にまわしますので」
「死亡推定時刻は」校長。
「それもその時に」
その時、
校長の携帯が。
「失礼します」
校長が部屋の隅で携帯を。
きっと学校からだ。
マスコミへの対応やらなにやらで。
「何だって」校長が思わず叫んだ。
「それで警察に
連絡したものかどうかだって」
校長は当庭の方を。
「当庭君、どうしよう」
その顔は真っ青。
携帯を握ったまま。
そばにいる刑事も。
当庭が校長から携帯を。
相手は教頭だった。
「教頭先生。
何か」
「エッ?何?
何ですって。
旧校舎に死体が。
頭から血が。
椰田-----椰田ですって」
むこうも相当あわてている。
要領を得ないがだいたいの事は。
当庭の表情からも血の気が。
“どうしよう”。
椰田輝雄。
彼は峰月護夫-----ここにある死体の名だ-----
といつも-----。
その六人の中の一人。
その場にいた刑事も
びっくりした様に。
「警察へは-----連絡は」当庭。
“しっかりしなくては。
ここで動揺しては。
気をしっかり持て”
当庭は自らに言い聞かせるように。
「どうしていいのかわからない。
それで校長先生に連絡を」
当庭がオウム返しに。
当庭は校長を-----。
校長も少しおちついたよう-----。
顔色は真っ青だ。
「とにかく警察へ」校長。
「どうしよう」
当庭は刑事と目が合った。
「ここは-----警察だった。
刑事さん-----」
校長も-----刑事を。
刑事は。
「ウチでは。
所轄が違うので-----」
どうしていいのか。
「そちらで110番を」
当庭が教頭へ。
「そちらで警察へ」
「すぐに帰ると教頭先生に」校長。
二人はあたふたと。
“どうなっているんだ”