27ー1
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尽川建設。
尽川は校長たちの顔を見るなり
なんともいえない表情を作った。
当庭たちは
やはりダメか
というようにタメ息を。
「尽川君。
久しぶりだね」
校長はやさしげな眼で
そう語りかけた。
尽川は-----。
「一年半ぶりくらいか」校長は続けた。
「あの時は
君も大変だったね。
息子さんがあのような事に。
私も
今でもあの時のことを思うと
心が痛んでね。
君も私の大切な教え子だ。
その息子さんが。
彼も教え子だったが。
もう二度と
あのような事が起きないようにと
心がけてきたつもりだったんだが。
今回のような事にね」
しんみりと。
尽川は何か言いたげ-----。
しかし思いとどまった。
“どうせ-----。
中学時代から
この校長はそうだった。
甘いだけの-----。
こいつらが陰で”
「それで-----。
今日ここへ来たのは
他でもない。
殺人事件の事だ」
校長は単刀直入に切り出した。
「またその件ですか。
私は本当に何も知らないですし
いくら聞かれても」
露骨に嫌な表情を。
尽川は虹口の方を。
「刑事さんたちにも
いろいろ聞かれましたが
アリバイもありますし
もうそろそろ疑いが晴れても-----
いいのでは」尽川
「警察はオマエの事を
犯人だと断定しているんだぞ。
アリバイの件は
人を使ってやったんだと。
探偵の事もバレている」当庭が。
「探偵?
あれは-----。
しかしどうしてその事を」
尽川はとまどった様に。
「そうだ。
堆村探偵社の
社長の堆村だ。
最近ひんぱんに
連絡を取り合っているようだな」虹口が。
「それは会社としては-----
興信所を使うこともいろいろあるし」尽川。
「社長が直接にか」当庭。
「それは-----」
「オマエが-----
その探偵を使って
二年前の事を
調べていた事もわかっている。
最近になって
ここ一ヶ月ほど
また調べさせていたそうじゃないか」虹口。
「どういう理由でだ」当庭。
「二人とも
そう矢継ぎ早に
尽川君をせめたてても。
ここは一つづつ
順を追って」
校長は尽川を向き直り。
「尽川君。
この二人は君の事を
心から心配して。
何とか君の無実を証明しようと
必死になって
駆け回ってくれているんだよ。
このままでは君
犯人にされてしまうかも
知れないんだよ。
そこまで追い込まれているのに
気づかないのか。
君は」
その時
インターフォンが。
来客らしい。
尽川は校長たちの方を。
「かまわない。
通して」
校長たちはけげんな表情。
ドアが開き。
「校長先生
どうしてここへ」
皆山は入って来るなり。
双風レムもいた。
刑事の質石も。
「まあいいか。
尽川社長。
少しお話が」皆山は。
校長たちは。
「皆山先生。
その件については
今、私たちが
何とか尽川君を助けようと」校長。
「校長先生のお気持ちは
わかりますが。
もう-----事ここにいたっては
警察も
尽川社長が犯人だと」皆山。
「それは-----」校長。
当庭も虹口も
何も言えない。
尽川は。
「校長先生も君たちも
警察が何を言っているかは
知らないが。
どうして私が犯人なんだね。
アリバイもあるし
探偵の件にしても
あれは-----」
「その探偵の件なんですが-----。
二年前にも
お調べになられていたようですが。
息子さんの自殺の件で」皆山。
「よく知っているね」
「それをどうしてまた
今になって
殺人事件のあった日の
一ヶ月ほど前から。
また-----どうして
探偵まで雇って
調べようとなさったのか。
それをお聞きしたくて
ここへ来たのですが」皆山。
「それは-----」
尽川は-----答えられない。
「喫茶“光対”のマスターに聞いたのですが」レム。
その言葉に尽川は。
他の者たちも。
「それで-----」尽川。
「一ヶ月ほど前。
殺人事件の起きた日からです。
マスターによりますと-----」
皆山は-----レムの言葉に
“マズイ。
その話は聞いてはいるが。
マスターから直接。
しかしそれを言うのは。
双風さんも
すでにつかんでいたのか”
「アイツ。
おしゃべりだからなあ」
尽川はため息を。
「椰田たちが
そこの喫茶店にたむろして-----
いろいろと
しゃべっていたそうですね。
二年前の自殺の件についても
自慢げに」
「アイツら-----」
尽川はくやしそうに。
「それは-----。
椰田たちが
何を言っていたかは知らないが
それはあくまで-----」当庭が。
「当庭先生は-----
甘いから。
あいつらが陰で何をしているか
言っているか」
レムはポツリと。
「だから-----それは」
当庭。校長も。
「どうしてそう取るんだ」




