23
23
尽川建設。
その周囲には
見慣れた顔の刑事たちが
そこかしこにいる。
数台の自動車が交替で。
今回の事件は連続殺人
犯人はまたやるかも。
そうなれば警察の面子も-----。
疑わしい連中全てを
マークしているのだが、
マークから漏れた者が
もしいれば
どうなるのか。
レムはその刑事たちに
見つからぬように
謎の男たちの監視を続けた。
夜間とはいえ
あまり長くは停めてはおけないが
どのくらい時間が-----。
そう長くはない。
ドアウィンドウをノックする音。
レムはハッとした。
「虹口さん。
係長も」
レムはしまったという表情。
「双風。
オマエ、ここで何をしているんだ」虹口が。
「とにかく中へ入れてくれ」日掘係長だ。
二人は乗り込んで来た。
「さっきから見てたんだが。
あの自動車を監視しているようだが
何かつかんだのか」虹口。
「いえ-----」
レムは言ったものかどうか。
「尽川社長をマークしていたのですが-----。
我々以外にも
尽川社長をマークしている者が
いたものですから」
「あの連中が-----
尽川社長を」係長。
「はい」
レムは皆山の事は
まだ伏せておいた。
「さっきのバーで偶然。
尽川社長のあとを
つけ回しているのを見かけて
それでそのあとを」
「ウチの連中も
尽川をマークしていたんだがな」係長。
「はい。
ですから-----そのあとを」
日掘係長は考え込む風。
「ニ三日前から
不審な自動車が
このあたりに駐車しているので
気にはなっていたんだが。
どう思う」
「はい。
二課でも地検でもないようですし-----
いったい誰が」虹口も。
「二課と言いますと」レムが。
「オマエも知っているだろう。
例の汚職事件。
何ヶ月か前に
あったやつだ。
しかし-----
あの件は」
「尽川建設と-----。
確か文科省の官僚との間の
あれですか」
“あれか-----
記憶に新しい。
確か皆山君。
局長と-----”
レムは。
「もう手を引いたと
聞いていたんですがね。
二課の知り合いから」虹口。
「私もだ」係長。
「当たってみますか」虹口。
「制服警官を呼んで
職質をかけさせますか」レム。
そうすれば身元がわかるかも。
係長は少し考え。
「警戒させるのも-----
このまま泳がせて」
「その方がいいですか」虹口。
「そうしよう」
「ですがバーで尽川社長と会っていた
もう一人の方は」レム
「あれか。
あちらの方は
ちゃんとマークしている。
すぐに身元もわかるだろう。
ん?
あっちにも-----か」係長。
レムはしまったという-----。
「はい-----。
二三人の男がそのあとを」
「バカ野郎。
どうしてすぐに報告しない。。
係長」虹口。
「そうだな。
すぐにむこうと連絡を取って
その連中の身元を確めさせろ。
気づかれんようにな」
レムは。
“皆山君が事件に関わっていたら-----”
「この連続殺人。
何か裏があるかもな。
-----
何せ-----五人もだからな」
警察の面子も-----。
課長も係長も
上から相当しぼられている。
尽川が姿を現した。
帰宅するのだろうか。
すでに深夜。
土曜日だというのに。
自動車で。
そのあとを刑事たちが。
そして-----
不審車両も-----そのあとから。
「二台ですか」虹口が。
不審車両は二台だった。
一方には三人。
もう一台には二人の男が。
そのあとを
レムの運転する自動車が。
「まいったな」係長。
「相当大がかりな
組織か何かですか」レム。
尽川はまっすぐ自宅へ。
尽川の自宅近くには。
自宅を見張れる場所に
マンションの一室を
すでにかりている。
レムたちはそこへは行かず
不審車両を自動車の中から
マークしていた。
すでに応援も何台か用意されている。
謎の男たちは-----
ナンバーはすでにひかえてある。
照会したところ
個人所有の自動車だ。
新たに自動車が一台。
尽川の自宅のある通りに入って来た。
レムは自動車を。
尽川の自宅から
通り三つほど離して
停車させていたのだが-----。
その横を通り過ぎ-----。
他にも
この近所の者の自動車だろう。
二三台停めてある。
不審車の方へ-----その自動車は。
中には二人の男が。
不審車の後ろに停車した。
交替のようだ。
最初の不審車は
そのままスタート。
携帯でやり取りをしているようだ。
「つけますか」レムが。
「いや。
このまま追えば
新手の自動車の横を通る事になる。
少し待って迂回していこう」
すでに別の刑事たちの自動車が数台
今、出て行った不審車にはついている。
レムは自動車をスタート。
うまく脇道に入り
不審車を。
日堀係長が携帯で
先行する自動車と連絡を
追いついた。
「どこへ行くつもりだ」虹口。
不審車は霞ヶ関へ。
官庁街へ。
その巨大な建物の一つへ。
駐車スペースへ。
三人の男が自動車の外へ。
建物の中へと
飲み込まれて行った。
「どういう事だ」係長。
「どうして」虹口も。
その建物には
“文部科学省”
と書かれた-----。
いかに
“桜”
の代紋と言えども相手が-----
“文”の代紋では。
特に学校という所は
○○の所管する場所。
教育云々と言われれば
ウカツに手は-----。
「自分の縄張りで殺人事件が。
それで出張って来た。
という事ですか」レム。
“じゃあ
皆山君はいったい”
「中学生が五人もだからなあ」虹口も。
「しかし-----
どうして文科省が
探偵まがいの事を。
しかもこれほど大がかりに」日堀。
「役人というのは
そういう事をするのですか」
レムも信じられないという風。
「さあーーー」
“そう言えば皆山君。
局長とか言っていた。
局長と言えば-----”
それを思い出した。
あの時は
聞きマチガイかとも思ったのだが。
「どのあたりのレベルで
動いているのだろう」係長。
「例のバーで話しているのを
聞いた限りでは-----。
“局長”
と言っていましたが」レム。
「局長?
まさか」係長も。
「それじゃあ。
文科省丸がかえで」虹口。
「その可能性も」レム。
係長も。
「それと-----
警察の上の方とも-----
何か話がついているような」
レムは言いにくそうに。
「何-----。
どうして
そんな事が」虹口。
「相手が文科省では-----
そういう事も。
とにかくこの事は
課長とも相談してみないと-----」
係長。
顔がこわばっている。
「聞き違いかも知れませんが」
レム。慎重に。
「今回の殺人事件について
“上”同士で話し合っているだけ-----
という事じゃあないのか」
「それは-----」レム。
「まさか-----。
例の汚職事件の」虹口が。
「まさか。
あの件はもう終わって-----。
しかし-----その可能性もあるか。
しかし-----
もしそうなら」
「まさか
それで中学生五人を」レム。
「ウチの“上”が
どうしてそんな事を」
皆山たちの会話の件も気になる。
中学生三人が
どうの-----と。
その後
あの三人の中学生は-----。
レムは
言い知れぬ不安に。
しかし-----だまっていた。
もう少し調べてから。




