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ある中学校教師の殺人事件簿  作者: 維己起邦
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 車中。

 私はハンドルを握る当庭に。

 「当庭先生。

 あの尽川という社長に

会われての印象はどうでした」

 「わからん。

 わからんが-----

全く二年前と-----。

 いや中学時代と変わっていない」

 吐き捨てるように。

 「と言いますと」私は。

 当庭先生。

 どうするつもりだろう。

 それが気になった。

 “この危ない先生。

 ヒョットしてまた-----”

 「いや。

 こういう事を言っていいのかどうだか

わからないが。

 自分の息子が自殺したのは

あの子たちのせいだと-----

今でも思っているようだ」

 「では-----

あやしいと。

 ですが二年もたった今

どうしてあのような事を」

 「それは-----あるか」

 当庭は黙った。

 「例えば

誰かに何かを吹き込まれたとか。

 そういう話は

お聞きになられませんでしたか」

 「いや-----。

 そういう話はないねえ」

 当庭も考え込む様に。

 「そうですか。

 アリバイも完璧ですし

動機もそれでは-----

警察も。

 例えばあの夜。

 峰月が殺害された夜です。

 なぐるけるの暴行を受けて

倒れた峰月を見つけて-----。

 偶然そこに通りかかった

尽川社長が

二年前のことを思い出し

思わず。

 というのならばわかりますが。

 なにぶん-----アリバイが。

 もしそうなら

そのようなアリバイ工作をして

殺人を犯すような

状況ではありませんし」

 私は考え込む。

 そのあたりを洗ってみるのも-----。

 「誰か他人を雇って犯行を。

 それならアリバイも。

 あれだけしっかりとしたアリバイがある。

 しかもあの二日間に限り。

 それを偶然と片付けるのは

どうかね」当庭。

 「では自分のアリバイを作るため

ワザと会議に静岡へ」私は。

 「いや。

 その日を狙ったのかも」

 「ですが-----」

 「君の言うとおりだよ。

 二年も経って

どうして。

 当時の関係者に

それとなく当たってみようと思う」

 当庭は考えるように。

 「他の容疑者の

可能性はないですか」

 「ンー。

 君はどう思うね」

 「それは-----

わかりません」

 「では

今日会った尽川の印象は

どうだった。

 君の感想を聞きたい。

 皆山先生」

 「何か-----。

 私たちの顔を見るのもイヤだ

という感じでした。

 しかし事件の話になると-----」

 「君もそう思うかね。

 何か悪さをして

バレそうになると

奴はよくああいう態度をね。

 これは私の直感だが-----」

 「あやしいですか」

 私は-----。

 やはりこの線が正解か。

 「あいつの親の事も

よく知っているが。

 小さな建設会社をやっていてね。

 甘やかしすぎたんだろう。

 それであんな風に」

 「エッ?

 小さな建設会社」私は。

 「そう」

 「じゃあ。

 あそこまで大きくしたのは

尽川社長が」

 「あいつの事だ。

 人には言えないような事をして-----。

 いや。

 よそう」

 「それは-----」

 「私はあいつの事を

まだ友だちだと思っている。

 だから信じたいのだが

向こうはどう思ってくえているのか」

 当庭は。

 そのまま押し黙ってしまった。




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