15
15
車中。
私はハンドルを握る当庭に。
「当庭先生。
あの尽川という社長に
会われての印象はどうでした」
「わからん。
わからんが-----
全く二年前と-----。
いや中学時代と変わっていない」
吐き捨てるように。
「と言いますと」私は。
当庭先生。
どうするつもりだろう。
それが気になった。
“この危ない先生。
ヒョットしてまた-----”
「いや。
こういう事を言っていいのかどうだか
わからないが。
自分の息子が自殺したのは
あの子たちのせいだと-----
今でも思っているようだ」
「では-----
あやしいと。
ですが二年もたった今
どうしてあのような事を」
「それは-----あるか」
当庭は黙った。
「例えば
誰かに何かを吹き込まれたとか。
そういう話は
お聞きになられませんでしたか」
「いや-----。
そういう話はないねえ」
当庭も考え込む様に。
「そうですか。
アリバイも完璧ですし
動機もそれでは-----
警察も。
例えばあの夜。
峰月が殺害された夜です。
なぐるけるの暴行を受けて
倒れた峰月を見つけて-----。
偶然そこに通りかかった
尽川社長が
二年前のことを思い出し
思わず。
というのならばわかりますが。
なにぶん-----アリバイが。
もしそうなら
そのようなアリバイ工作をして
殺人を犯すような
状況ではありませんし」
私は考え込む。
そのあたりを洗ってみるのも-----。
「誰か他人を雇って犯行を。
それならアリバイも。
あれだけしっかりとしたアリバイがある。
しかもあの二日間に限り。
それを偶然と片付けるのは
どうかね」当庭。
「では自分のアリバイを作るため
ワザと会議に静岡へ」私は。
「いや。
その日を狙ったのかも」
「ですが-----」
「君の言うとおりだよ。
二年も経って
どうして。
当時の関係者に
それとなく当たってみようと思う」
当庭は考えるように。
「他の容疑者の
可能性はないですか」
「ンー。
君はどう思うね」
「それは-----
わかりません」
「では
今日会った尽川の印象は
どうだった。
君の感想を聞きたい。
皆山先生」
「何か-----。
私たちの顔を見るのもイヤだ
という感じでした。
しかし事件の話になると-----」
「君もそう思うかね。
何か悪さをして
バレそうになると
奴はよくああいう態度をね。
これは私の直感だが-----」
「あやしいですか」
私は-----。
やはりこの線が正解か。
「あいつの親の事も
よく知っているが。
小さな建設会社をやっていてね。
甘やかしすぎたんだろう。
それであんな風に」
「エッ?
小さな建設会社」私は。
「そう」
「じゃあ。
あそこまで大きくしたのは
尽川社長が」
「あいつの事だ。
人には言えないような事をして-----。
いや。
よそう」
「それは-----」
「私はあいつの事を
まだ友だちだと思っている。
だから信じたいのだが
向こうはどう思ってくえているのか」
当庭は。
そのまま押し黙ってしまった。




