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第2話

 真弓は「皆様の無事をお祈りしております」と言い残して車を走らせ、その場を後にした。


 俺達の生活全般をメイドとしてサポートしてくれている真弓は忙しい。とてもじゃないが、俺と一緒に三人娘の無事を戦場の一番近くにて待つ事など出来ない。



 この後も真弓は食糧の買い出しに行くそうだ。

 俺は真弓を見送った後に今回の『仕事』を紹介してくれた奴に会いに行くべく、歩き出した。ナナ、フィオ、ミーシャも車から降ろしたそれぞれの『荷物』を背負って俺の後に続く。


 ここは今回の戦争を受けて急造で設置された駐屯地だ。丘陵地帯に建てられた本部の中では多くの人間は忙しなく動いている。俺達はその中を邪魔にならぬ程度に素早く歩く。


 俺は人ゴミの中を縫って歩く内に細身の男を見つけた。

 男は俺の姿を見るや否や朗らかな笑みを見せる。



「やあ、来たね。喧しいエンジン音が聞こえたから君達だと分かってはいたけれど」

「まあ、な。あんなボロ車、今でも使っているのはうちくらいのものだ」

 男の名前はロンド。見た目爽やかな、そして軟な男だ。ゴワゴワのジャケットを好んでいるらしく、夏にも関わらずロンドは茶色い暑そうなジャケットを身に纏っている。


「久しぶり。元気だったかい?」

「は。俺がこの娘らと居て元気じゃない? 馬鹿な。毎日、天国で暮らしているようなもんさ」

「違いないね」

 ロンドは朗らかに笑う。続いてロンドは三人娘へと視線を移した。



「どうだい? お嬢ちゃん達も元気にしていたかい?」

「はい、ロンド叔父さん。今日は仕事をくれてありがとう!」

「ナナちゃん、ロンドさんに叔父さんなんて言ったら失礼だと思うの。ここはロンドお兄さんって言った方が喜ぶと思うけどな」

「……ナナねぇは世渡り下手」

「う、うううるさいな! あたしだって完璧じゃないもの。間違える時だってあるわよ!」

「良いよ、ロンド叔父さんでも。僕は今、二十二歳だけど嬢ちゃん達から見れば、もう十分叔父さんだろうし。つーか、二十二歳ともなれば身体動かすのも億劫でさ。もうね、少し運動しただけで身体がぎっちぎちで……」

「ロンド、そりゃあお前、只の運動不足だと思うぞ……」

 俺はロンドへと口を挟む。



「碌な生活送ってないもんな。君にそう言われても仕方が無い。まあそんな事より……」

 ロンドは俺の首へと肩を回しつつ、三人娘に聞こえないようにか細い声で言う。


「ふふふ……。やっぱりと言うか何というか……、相も変わらず三人共ほんっと可愛いね! 皆、それぞれに味があって良い感じだ」

「ふふふ。そうだろう、そうだろうとも!」

「しかしながら……。それを君は毎日毎日独り占めしているんだろう!? いーねー、いーなー! 君みたいな夢を実現している奴が居るから、僕にお鉢が回ってこない。もう十分堪能しただろう? 僕もその恩恵に預かりたいものだよ。一日でも良いからさ」

「馬鹿を言え!」

 俺は断固たる決意の元でロンドに否の一文字を突き付ける。



「お前が俺の立場だったら一人でも手放すと言うのか! 無理に決まっているだろう!? 三人共、違う魅力がある! 皆違って皆良い! お前だって分かっているだろう」

「ううむ……確かに……」

 ロンドは力強く頷いた。ロンドは俺の気持ちを理解し、あまつさえ時には俺のロリコン度数を超えてくるロリコンの先輩だ。彼に俺の気持ちが伝わらない筈が無い。


「でもさ……君はそんな可愛らしい少女達と一つ屋根の下で暮らしている訳だろう? あーんな事やこーんな事も一緒に共有出来る中だったりする訳だ。嫉妬するのも無理は無い」

「その点で言えば確かに俺は世界一の幸せ者だ。何せ彼女らの成長を一番近くで感じる事が出来るんだから! ロリコンにとってこれ程の理想はそうあるまい!」

「ま、まさか……胸やお尻に関しても……」

「然り」

 俺はニヤリと笑った。それを見てロンドは衝撃を受けたように顔を歪ませる。



「想像してみろ。毎日毎日違う彼女らを愉しむ事が出来るこの俺の立場を。胸やお尻の膨らみが少しずつ増していく日々。中にはそれで絶望を覚えるロリコンも居る事だろう。大人になっていく彼女を見て自分の理想の姿からかけ離れていく様を感じて絶望していく奴ら。確かにその気持ちは分からないでも無い。ロリを愛でる人種である俺達は彼女達の成長に一抹の寂しさを覚えてしまう事もある。だが俺は敢えて言おう! それはロリコンとしての程度が低いと!」

「……ふむ。中々に興味深い。では久しぶりに聞かせて貰おうでは無いか。君のロリとしての超理論を! ロリコンとしての戦果を!」

 ロンドは喉を鳴らして俺の言葉を待つ。俺は彼に対して理論の主張を行った。



「ロリとしての魅力はその未成熟な身体に宿る『可能性』にあると俺は思う。彼女らの現在を愛で、そしてまだ見ぬ未来に夢を抱く。その過程に宿る大人への不安、初々しさ、子供故の純粋な悩み。その全てがロリの魅力を引き立てる素晴らしいエッセンスだ。ならばどうして彼女らの成長を嘆く必要があるのだろうか。むしろ一緒になって彼女らの成長を喜ぶ事こそ真のロリコンだと言えるのでは無いだろうか!」

「ふーむ、一理あ――――」

「――――聞こえているわよ」

 突然、俺達の語り合い(通称ロリ愛)に割り込んでくる声があった。


 俺達は声の聞こえてくる方――――首を十センチ程傾ける。

 視線の先。そこには青筋を立てるナナの姿があった。



「え、あ、……ナナ、ちゃん。僕達の話…………どっから聞いていたのかな?」

 ロンドは冷や汗を掻きながら、ナナに対して自分の罪の程度を訊く。


「全部よ、全部! ロンド叔父さん、『あたし達』の事、知っている癖して侮り過ぎ! そんな風に声を細めても『あたし達』には丸聞こえなの! 全く…………全く全く全くもー! お兄ちゃんもあたしの事、そんなエッチな目で見てたの! この変態、見損なったわ!」

「待て。ナナ」

 俺はナナに対して、言う。



「お前は一つ勘違いをしているぞ?」

 そう――――彼女は少しばかり勘違いをしている。


 間違いは正さなければならない。僕は真摯な面持ちで彼女と対峙する。


「だからお兄ちゃん、あたしは二人の会話、一言一句漏らさず聞こえちゃってるの! 今からどんな申し開きをしたって無駄だからね!」

「そうじゃない。そうじゃないんだよ、ナナ」

「…………? じゃあ、何よ」

 俺は息を吸い込み告げる――――真実を。


「胸やお尻が成長しているのはフィオやミーシャの話であって、決してお前の事じゃ無いぞ?」

「なッ!?」

 少女は口をあんぐりと開けて暫く唖然としていたが、すぐに言葉の意味を理解して首をぶんぶんと振って俺の言葉を否定した。



「し、してるもん! 気付いていないと思うけれど、あたしだって成長しているんだからね! お胸やお尻だって日々おっきくなっているもん!」

「いーや。俺の心眼を騙そうたってそうはいかん。俺のロリに対する観察眼は他のロリコンよりも飛び抜けて優れているという自負がある。そんな俺が太鼓判を押そう。ナナはこの二年というもの、そう言った部分に関して少しでさえ成長していない!」

 俺の見たところナナは三人の中で一番年上の癖して一番子供な体型。正にロリとしての理想体型。決してそれを勘違いして欲しくは無いのである。


 だがナナはその素晴らしい真実に気付けないのか尚、顔を真っ赤にして首を振り続けていた。



「してるもんしてるもんしてるもんしてるもんしてるもん!!」

「ナナ」俺は優しく少女の肩を叩く。


「ナナ。自分を……ロリを偽ってはいけない……。お前は否定するかも知れないけれど、お前のそれは、俺達的にはそれはもう良いもんだ……。もっと自信を持って良い……。お前の身体は価値ある身体だ!」

「うわああああああああああああああん!!」

 ナナは俺に背を向けて、走り出す。恐ろしいまでの脚力を見せるナナは一瞬にして遠く彼方に消えていった。



「ナナ……」

 呼び止める事は――――出来なかった。


 だが、これで良い。少女にとって成長への葛藤は付き物だ。こういう時があったって良い。



「お兄様……」

 などと俺がナナの理想の身体について想いを馳せていると、不意にかけられる声があった。


 …………いや、まあ。ナナに聞こえた時点で二人にも聞こえているって分かっていたけどね?



「あの、お兄様はフィオの身体について、……その、えっと……興味がおありなのです?」

「ええと…………」

 言葉をぶつ切りにしながら聞いてくるフィオは今や顔を火達磨のように真っ赤にしており、おずおずと震えている。フィオは人一倍、そういう話に関して抵抗が無いのだ。



 ――――だが俺は自分に嘘を吐けない。


 嘘を吐けば一人前のロリコンとしての沽券に係わる。それだけは……出来ないッ!



「ああ。俺はフィオの劇的な迄に成長している胸やお尻にものすっごい興味がある!」

「――――ッ!」

 フィオは羞恥心が限界を迎えたのか目に涙を浮かべていた。



 その顔を見て俺の中に罪悪感が生まれたが、それでも俺は俺に嘘を吐けない。

 それは俺のロリコンに対する誇りなのだ!



「カルラ……君も立派になったな……」

 うんうん、と頷くロンド。彼の顔はこう言っている――――ロリ巨乳は人類の宝だ、と。

 俺は彼に向かって親指を突き立てる。


 悔いは無い……そう、悔いは無いさ……。



「フィオ、その、恥ずかしい……です。でもお兄様がお胸に興味があると言うなら、その……揉んで戴いても、別に構わ――――」

「揉まれると、痛い……よ」

 ――――と。今まで黙って成り行きを見守っていたミーシャが不意に声を発した。



「……え?」

「フィオねぇ、お胸、揉まれる、と痛いんだ……よ?」

「え……本当なの、ミーシャちゃん。でもナナちゃんによく揉まれるけど、別に痛く……」

「男の人、に、揉まれると痛い……らしいよ」

「……そう、なの?」

「それどころ……か、フィオねぇくらい……大きい、とブチッと……取れ、て……それはもう……想像を絶する、程だと、か」

「や、やっぱり駄目ですぅ――――ッ!」

 フィオは首をぶんぶんと横に振った。それを見てミーシャは微笑を浮かべる。



「その点、ぼくのお胸やお尻はフィオねぇ程、おっきくも無い……よ……。揉んでも取れるなんて心配は無い、はず……」

 それに、とミーシャは付け加えた。その顔には勝者の微笑みを携えている。


「お胸やお尻の成長……の点で、言えばぼくは……ナナねぇより、は大人、だよ……」

「ミーシャぁ……」

 幽鬼のように微かだが静かに響き渡る声が辺りに響いた。ミーシャはビクッと肩を震わせる。



「あ、えと……ナナねぇ……お帰り、なさい。いつからそこ、居たの?」

 ミーシャの横、少し離れたところにはいつの間に遠くの彼方より帰ってきたのかナナの姿があり、ミーシャを妬ましい目で睨んでいる。


「ついさっきよ! ちょっと聞いてりゃ好き勝手な事言ってるじゃない! もー! 誰が無乳よ! 誰が無い乳よ! 誰が歳だけ大人なのよぉおおおおお!!」

「落ち、着いて、ナナねぇ。そこまでは……言ってない、よ」

「ナナちゃん、元気出してです。大丈夫、フィオも段々大きくなったんですしナナちゃんもこれから成長しますから…………多分」

 ボソッと弱弱しい言葉を発するフィオ。ナナはそんな彼女をキッと睨み付けた。



「ああッ、もう! おっぱいオバケは黙ってなさい!」

「お、おっぱいオバケ!? ううぅ……おっきいの気にしているのにぃ……」

「うるさい! フィオったらおっぱい大きい癖して気は小さいんだから!」

「それを、言ったら……ナナねぇだって、お胸小さい癖、して……気だけやたら大きいよ、ね」

「言うじゃないの、ミーシャぁアア! 少しおっぱいがあたしより大きいからって良い気にならないでよねぇえええええ!!」

「ハハハハハ!!」

 三人娘の喧々諤々足る言い合いを見ている内にロンドは高らかに笑い声を響かせた。



「ほんっと君んとこのお嬢ちゃん達は元気だな。こっちまで楽しくなってしまうよ」

「当然だ。どうだ? 俺んとこの娘達はもんのすげえ可愛いだろう!」

 これだけ可愛い子達を前にして、その圧倒的なまでの可愛さに悶絶しない奴は気が狂っているとしか思えない。


 本当に俺はナナ、フィオ、ミーシャの三人と一緒に居られる事を誇りに思っているよ。



「……いやいや、カルラ。娘では無いだろう」

「良いんだよ! 一緒に暮らしているんだから娘も同然だ! それに俺の愛はそんじょそこらの親達よりも深い! これはもう父親を名乗っても支障は無いだろう!」

 俺の父性は最早、本物を凌駕するレベルには達している。



 偽物は本物よりも愛が浅いなんて道理は無い。なら俺は父親を名乗っても支障は無い筈だ。



「いや、君の愛が深いってのは僕とて知っているけれども……。しかしお嬢ちゃん達は君に対して娘、と言うよりももっと違った感情を覚えていると思うが……」

「違った感情? どういう事だ?」

「うぅむ……。まあ良いか、別に。僕の口から軽々しく言って良いものでも無いし……」

 そう言うとロンドはそれ以上の説明をしてはくれなかった。 



 ……違った感情。少しばかり熟考を巡らすが……はて。何ら思いつかない。

 一体何だと言うのだろうか。そもそも父と娘の間に生まれる愛情よりも強い感情がこの世に存在するものだろうか。



「ではお嬢ちゃん達、そろそろ仕事の時間だ。僕は今回の作戦指揮に携わる者にお嬢ちゃん達を紹介してやらなきゃいけない」


 ロンドは手を叩きつつ、和やかな雰囲気から一転、引き締まった表情を見せる。




 それを見て三人娘も先程とは違った、子供らしからぬ刺すような緊張感を帯びた顔になった。

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