母の実家へ行こう!
アクアを取り込む事によって回復力が上がった、フエルサは朝食までの水汲み、薪割りがスムーズに終わる様になっていた。自宅の分の薪割りが春まで乗り切る分を全て切り終えてしまったフエルサは、フィリアの家の分をやる様になっていた。
「フィリアー、終わったから帰るねー。」
「今日もありがと!フエルサ!おかげで、お父さん助かったって言ってたよー。」
「こちらこそありがとう、だよ!訓練の為にやらせてもらってるんだから。」
「それにしても、腕が特に大きくなったよね!」
「そうかなー?よくわかんないや。じゃあまたね!」
「またね!」
毎日の水汲み、薪割りはフエルサの身体を着実に大きくさせていた。細かった3ヶ月前が嘘の様に。そのおかげで、朝食後の特訓では短槍から普通の槍の長さを扱う様になっていた。
アクアもこの3ヶ月間で拳大だったのが、サッカーボール大に成長していた。一度は、サッカーボール2個分くらいまで大きくなったのだが、動きづらいという事で分裂してこのサイズにしたみたいだ。アクアがここまで大きくなったのは、母さんが集落中からアクアの栄養となる生ゴミを集めたかららしい。
便利だからという理由で、別れた分体は集落のゴミ箱として大活躍中である。
昼食後は、母との訓練である。最近は素振りは止め組み手をする様になった。
「は!」
掛け声とともに、フエルサは突きを繰り出す。
「そんなんじゃ、当たらないわよ!フン!」
そう言いながらブリージョは、上段から斬りつけた。フエルサは、そうくるのを予測していたかの様に、横へ飛びながら躱した。
「あら、読んでいたようね。まぁ、型どおりの動きに近いからね。じゃあ、そろそろ単調な攻撃はやめましょうか。」
と、言い出すと動きが明らかに変わり、型にはなかった動きをし出す様になった。
「モンスターはどんな動きするかわからないでしょ。ふふ。」
そう言い放つと、突然スイッチが入ったかの様に、急に死角、死角へと動く様になった。そして、執拗に足を狙う様になった。
「そら、そら、そら、早く躱さないと当たるわよ!!」
「ちょ、ちょ、ちょ、母さん!本当に危ないよ!」
「槍での立ち回りは、型でちゃんとやってるでしょ。自分で考えて、応用して動きなさい!ほい!」
最初のうちは回りながら躱していたのだが、ブリージョのスピードに対処できなくなっていた。完全に死角になった時に、石突きでフエルサの膝裏をついて転けさせた。
「いてて・・・」
「さあ、すぐに立って!次やるわよ!」
こうやって、午前中は母と立ち会うのが続いた。
「やっぱり、母さんは強いや。」
「当たり前でしょ。まぁ、型どおりの動きができる様になってきたし、そろそろ次のステージに行くにはいいのかもね。」
「うん?次のステージ?」
「そうよ〜。私とばっかり訓練していても仕方がないでしょ?さ、昼ごはんにしましょう。」
「??」
昼食が終わると、型を丹念にやっていた。これは、型は反復が必要とのことで欠かすことはなく、ブリージョも丁寧に教えた。
。。。
家族で夕食をとっていると、ブリージョが
「ねぇ、お父さん。」
「うん?どうしたー?」
「近々、家族全員で実家に行きたいのだけどいいかしら?」
「どうしたんだ、急に?」
「フエルサを、父のところで修行させたいと思って。」
「待て待て待て!義父のところで修行だってー!」
「ええ、そうだけど?何か拙いことでもあるの?」
「いや〜。それ、俺も確実に修行させられるだろ?義父、帰った時俺を見るなり、道場に連れて言って道場生と乱取りやらすんだぞ!俺は、モンスターを使って戦うのが得意なのに。」
ブリージョの実家は、格闘技を教える道場を営んでおり、道場生もたくさん抱えていた。ビエントは、近接格闘は苦手で道場生にいつもいい様にされていた。
「仕方がないじゃない。私達家族を守るためには強くなくてはいけないじゃない。父さんはあなた自身にもっと強くなってもらいたいだけなのよ。」
「う〜。」
「と、いうわけでフエルサ、来週父のところに行くわよ!」
「アクアはどうするの〜?」
「もちろん連れて行くわよ。だって、家族じゃない。それに、アクアちゃんにも強くなってもらわないと。」
「よかったね!アクア!」
『うん!一緒、いっしょ〜!』
こうして、フエルサの家族はブリージョの実家に行く事となった。春になる前に、徹底的にフエルサを強くさせるために。




