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特訓!

「さぁ、フエルサ朝だよ~!」

「ふぁ~い。」

『アクアも起きて~。』

 そう言って、ひゅっと持ち上げると、

『う~、フエルサ~起きるの早くない~?』

『うん?なんだか、まだ外暗いね。今日は曇りかなぁ?』

『雨の匂いしないよ~。』

 気になったフエルサは窓を開け、外を確認した。うっすらと外は白み始め、今まさに朝を迎えようと言うところだった。

「母さん!起きるの早くない!?」

「今日から鍛えてあげるっていったでしょ。フエルサはヒョロッヒョロだから、筋力もつけていかないと!だから、毎朝家にある水瓶を満タンにして。そのあと、裏庭にある薪を朝食までの時間割っておいて。」

「毎朝!?薪割りって父さんの仕事じゃなかった??」

「そうだったわね。けど、昨日あなたが強くなりたいって言ったから、今日から薪割りはあなたの仕事。薪は毎日、とりあえず50本ほどを竃に焚べる事ができるくらいのサイズに割ってね。」

「は〜い。」

「アクアちゃんは、こっちで預かるわ。」

『アクア行っておいで。」

『は〜い。ところで、みんなと会話するのに念話使っていい〜?』

『じゃあ母さんに念話できる事言うから、そのあと喋ってね。』

『は〜い。』

「母さん、アクア念話できるから〜。」

「はい?そんな事あるわけ『お母さんおはよ〜』な・・・!おとうさーん!!アクアが念話してる〜!!」

「は?そんなわけあるわけ」

 家中大騒ぎになってるのを余所に、フエルサは水を汲みに行ったのだった。


「水瓶一杯って何往復しないといけないんだろう・・・」

 桶にいっぱいにし、天秤棒を使って水瓶一つを満タンにするには5往復は必要であった。足腰がしっかりとしていない、フエルサは途中で零してしまうこともあり、2往復ほど余計に往復していた。水瓶は2つあり、まだ、1つ目も満タンにしていなかった。

「おはよ!フエルサ!珍しいね、朝早くから水汲みしてるなんて。」

 家に向かっていると、幼馴染が元気たっぷりに近寄ってきた。まだ朝早い時間だと言うのに、もう土にまみれていた。

「フィリア、おはよ〜!フィリアも朝早いね!畑行ってたの?」

「うん!今日はジャガイモとってたの!ジャーン!!いっぱい採れたよ〜!けど、まだまだ採りけれてないから朝ごはん食べたら、また畑に行くんだ。今年は豊作みたいだから、後で、お裾分けしに行くってうちのお父さんが言ってたよ!」

「ありがとう!母さんも喜ぶと思うよ!後で家に来ること言っておくね。」

「夕方くらいに行くと思うから、また後でね!水汲み、頑張ってね!」

「は〜い!またね!さてと、まだまだ頑張らなきゃ!」

 そう言って、再度水汲みを始めるフエルサ。一方、自宅では。


「アクアちゃんは、体がちっちゃいからまずは大きくなることね!ってことで、朝ごはんの野菜クズとかをバンバン取り込んでくれるかな?」

『いいよ〜!なんでも取り込んじゃう〜』

「いいお返事!」

「それにしても、フエルサは珍しいのと契約したな〜。」

「本当よね。昔から生きてる個体っていうくらいだから、何かあればきっと助けてくれるわよね。」

『うん!フエルサの事、とっても大事だから僕が助けるよ〜。」

「アクアちゃんも強くなろうね!」

『は〜い!』

 そんな会話が自宅でされている中、水汲みを終えたフエルサは裏庭で黙々と薪割りを初めていた。


「薪割りもなかなか大変だな!っと。握力がどんどんなくなってきたや。」

「お〜い、フエルサどんなもんだ〜?」

「父さん、あと20本ほどで終わるよ。これって結構、大変な作業だったんだね。」

「そうだろ?木を倒す事じゃないだけまだマシだけどな!水汲みも、薪割りも足腰鍛えるのにちょうど良い訓練だからな。半分以上終わってるんだから、もう少し頑張れよ〜。」

「はい、父さん!」

 朝食の後の、母の訓練が楽しみで仕方がなく、早く終わらせようと必死でやっているが、普段からやっていなかったせいで手に豆を作っていたので思うように、捗っていかなかった。ブリージョはこうなる事がわかっていて、フエルサにやらせたのであった。自分の得物を、戦闘中に落とす事はすぐに死に直結する。足腰を鍛えるとともに、握力を鍛えさせる事も考えての薪割りであった。

「ふ〜。ようやく終わったー。それにしても、手が痛いな〜右手の豆が潰れた。」


 やっとの思いで薪割りを終えると、アクアが玄関でお出迎えをしてくれた。

『おかえり〜。』

『ただいま!』

『フエルサも〜念話使わずに普通に声かけてくれたらいいのに〜。』

『そっか、母さんたちにアクア喋れる事伝えたんだった。』

 ピョンピョンと跳ねながら、フエルサの肩に乗ってきたアクアに対し、

「ちょっとだけ大きくなった?」

『いっぱい食べたからね〜。まだまだ、本来の大きさじゃないけどね〜。取り敢えず、お母さんからは大きくなってって言われたよ〜。』

「ワイバーンくらいまで大きくならないでよー。」

『そんなに大きくはなれないよ〜。』


 雑談をしながら家に入って、テーブルに着くと、今までの朝食の倍くらいの量がテーブルに並び始めた。

「母さん、多くない?」

「何を言ってるの!これでも少ないくらいよ!これからは、体を大きくしないといけないんだから、いっぱい食べていっぱい訓練するのよ。」

 フエルサは、少し引き気味でビエントに小声で、

「父さん、母さんどうしたの!」

「お前のやる気がそうさせたんだよ。どんな訓練になるかわからんが、死ぬなよ。」

「はい、そこの二人!コソコソ喋らない!お父さんも、殺すような訓練今からするわけないでしょ!」

「今からしない、って事は今後はするのかよ・・・」

「それは、フエルサの成長次第ね。」

 母の話を聞いてゾッとし始めるフエルサであった。


 朝食を食べ終え一息つくと、ブリージョが食器棚を動かし始めた。

「フエルサおいで。」

 そこは6畳くらいの大きさの小部屋になっており、傷ついた鎧などが並べられていた。

「ここはね、父さん達と冒険をしていた時の装備をしまっておいた場所。」

 そう言うと、ブリージョは槍を二本掴んだ。

「この二本は私が引退するまで、折れずにいてくれた槍なの。フエルサにはまだ、長槍を扱うのは無理だからまずは、短槍を使って。」

「いいの?そんな大事なもの使って?」

「大事なものを渡すんだから、大事に扱うでしょ?」

「うん。」

「じゃあ、次は槍の練習するから、裏庭に出て。」

 短槍を渡され、目を輝かせるフエルサ。久々に自分の槍を持ったブリージョは笑顔になっていた。


 裏庭に出てまずブリージョは、庭にあった木に向かって、連撃を見せた。突き、薙ぎ、上段からの袈裟切り、下段からの切り上げ、回転しながらの薙ぎ、飛んでから縦への一線、最後に投擲。一点を集中的に寸分の狂いもなく、また、目にも止まらない速い連撃だった。

「やっぱり、長い事戦いから離れていると、自分の思っている感覚と少しズレるわね。最後の投擲はいいとして、フエルサにはこれくらい出来るようになってもらいます。」

「はい。」

 一線から離れたとはいえ、寸分違わない技を披露したブリージョに驚き、感動したフエルサは返事しか出来なかった。

「とは言っても、いきなり的を狙うような練習しても当たらないし、槍を振るう練習と、型を練習しましょう。」

 まず初めに槍の握り方を教え、突きなどの槍の使い方をブリージョは丁寧に教えた。昼食までは槍の振り方だけで終わ理、型の練習は昼食後となった。型の練習になると、ブリージョはさらに丁寧に教えた。

「実戦になると、まず型通りにいく事はないんだけど、こういった下地がある事で咄嗟に体が反応してくれるの。」

 足の運び方、体の動かし方を一緒にやって言った。夕方までずっと。この訓練は、冬が終わるまで毎日やるように伝えられた。


 初日で、一通り教えてもらったフエルサの体は気がつけば、ボロボロの状態だった。手のひらの豆をいっぱい作り潰し、足の裏も豆が潰れてしまってた。握力もなくなり、腕も上がらない状態になっていた。

「フエルサー、来たよ〜!なんだか、疲れてるね〜?」

「あ、フィリアが来る事母さんに言うの忘れてた!ごめん!」

「いいよ、いいよ!今日は、ジャガイモ持ってきただけだしね!」

「ありがとー。ちょっと家に上がって待ってて。母さーん!フィリアがジャガイモ持ってきてくれたよー!」

「こんなにいっぱい!ありがとね、フィリアちゃん!じゃあ、昨日採れたワイルドボアのお肉持って行って。」

「ありがとうございます!この子?フエルサが昨日契約したって噂のスライムは?」

 着替え終わって部屋から出てきたフエルサに尋ねた。

「そうだよって、なんだよ噂って。」

「昨日みんなでフエルサの事探してたでしょ、それで連れて帰ってきたのがスライムだったから、みんなが話しててね。」

「あぁ〜、それはみんな話するよね。よいしょっと。」

「なんか、イス座るのも辛そうだけど大丈夫??」

「全身が悲鳴あげてる。手と、足見て。」

「うわ!ズルムケじゃん!再生の魔法かけてあげるよ。」

 フィリアがそう言ってフエルサに手をかざすと、豆が潰れて、赤く露出していた部分がみるみる間に傷が塞がれていくのであった。

「やっぱり、フィリアの魔法は便利だよな〜。」

「ちょっとした、傷しか塞ぐ事出来ないけどね。疲れを癒す事とかまだ出来ないし。」

「フィリアちゃん、お肉用意できたよ〜。また、お母さんによろしく言っておいてね。」

「ありがとうございます、フエルサのお母さん。また、遊びに来ますね。」

「ただいま〜。お!フィリアちゃん、こんばんは。帰るところかい?」

「こんばんは!フエルサのお父さん!ジャガイモが豊作で持って来て、お肉頂いてありがとうございます。」

「いやいや、構わないよ。フエルサ家まで送ってあげなさい。」

「いいですよ!目の前じゃないですか家は!」

「そうだな!はっはっはっ!じゃあ、玄関で見ているよ。家に入るまで!」

「そうしてください。ではまた来ますね。お邪魔しました。バイバイ、フエルサ。」

「バイバイ!またね!」

 そのあと、夕食を食べたあと、モンスターや魔獣に関する勉強が始まった。疲れが溜まり、夕食をとったあとだったので、眠気がフエルサを襲うのであった。だが、これも春が終わるまでずっと続くとの事であった。


 。。。


 その夜。ベッドの上で。

『フエルサ〜大丈夫〜?』

「もう、体が痛すぎる。」

『じゃあ、僕が助けてあげるね。』

「どういう事?」

『僕達が、今まで生きていけた秘密の一つかな〜?それに、一緒に強くなろうって約束したよ〜。』

「うん?うん?」

 ベットの上で混乱するフエルサであった。

アクアの秘密とは、なんなんでしょう?


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