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懇願

「父さん!!明日から狩りに連れて行ってよ!」

「何をバカなことを言ってるんだ!この冬を越えてからって言っただろ。食料もまだちゃんと確保出来ていないんだぞ。」

「お願いだから〜。」

「母さん、このバカなんとかしてくれ〜。」

「あなただってそうだったんでしょ〜。聞いてるわよ〜。」

「うぐ・・・お、俺は関係ないだろ〜。」

「フエルサ、今日自分がしでかした事ちゃんと反省してるの?」

「ごめんなさい。一人で森の奥に行った事は反省しているよ。だから、父さんと一緒に行こうと言ってるんだよ。」

「母さんはそういう事で言ったじゃないの。まだ、森の奥に入ることが早いから言ってるの。冬を越したらお父さんが狩りに連れて行ってくれるって言ってくれたんでしょ。わかった?」

「・・・ごめんなさい。」


フエルサは一刻も早く強くなりたかった。だから、今日起こしたことを忘れ父に狩りに連れて行って欲しいと、嘆願した。その願いは、両親から突っぱねられ頭を垂れ、放心状態で椅子の上で縮こまっていた。すると母が。


「強くなりたいからでしょ?狩りに行きたいのは。」

「うん。」

「狩りに連れて行ってもらうことはまだダメだけど、今出来ることをしっかりとして、春に備えましょ。」

「今できること?」

「そう。狩りをして、モンスターや魔獣と戦って、鍛えるのは簡単そうに見えるわよね。実際はそうでもないのよ。怪我はするし、死ぬこともある。死んだらそこで終わり。怪我をしても、戦えなくなる事もある。でもね、それは自分を知って、敵を知ることで怪我をしないで生きていける。」

「僕ならいけるよ!!」

「聞き分けの無い子。自分がどれだけ弱いかわかって無いわね、分からせないとダメ見たいね。じゃあ、表に出なさい。母さんと立ち会いなさい、母さんに勝てたらお父さんと狩りに行っていいわよ。武器はなんでもいいわよ。母さんはこの箒でいいわ。」

「おい!母さん何考えてるんだ!子供相手に!」

「自分の息子だもん、殺しはしないわよ。」

父に向かってそう言ってウインクをして、意気揚々と箒を持って外へ出て言った。

「は〜ぁ。フエルサ、ああなった母さんは父さんでも止められないからな。」

「うん。でも、母さんを倒したらいいんでしょ?倒して、父さんと狩りにいく!」

そう言って、アクアを肩に乗せ、ナイフ片手に出て行った。

「母さんのこと誰も教えていなかったんだな〜。フエルサが生まれてからは、一切昔の姿を見せていなかったからなぁ〜。殺さないって言ってたが大丈夫だろうか。」

追いかけるように、父も表へ出た。


この夫婦は、フエルサができるまで同じパーティーで冒険をしていた。父は『飛竜使い、ビエント』と名を馳せ、母は『赤眼の槍使い、ブリージョ」と名を馳せていた。パーティーには、あと二人いるがそれはまた紹介するとして。ブリージョは名前の通り槍使いだ。彼女の眼は普段金眼で、力を解放すると赤眼になった。赤眼になると、力、素早さが3倍に上がった。こうなルト、腕に覚えがある冒険者でも中々太刀打ち出来るものではなかった、そんな彼女が、箒を持って息子と対峙するのだ。ピエントは不安で一杯だった。ウインクした時の目が金眼であってもだ。


「さあ、どこからでも来なさい。」

ブリージョは中段に構え半身になり、フエルサは左手を突き出し、右手にナイフを構えた。

「いくよ、母さん!はぁっ!!」

フエルサは掛け声とともに一気に飛び出すと、アクアに指示を出した。

『母さんに飛びかかって、注意を引いて!』

『わかった〜』

アクアはフエルサの肩から飛び出し、ブリージョの注意を引こうとしたが、歴戦の彼女に対しては何の意味も成さなかった。まるで、ハエ叩きで飛んでいるハエを落とすかのように箒の先で、"ベチン!"と叩き落とした。そのまま、下から箒の先でフエルサの顎を切り上げた。フエルサにそれを回避出来る能力があるわけがなく、身体が軽く宙に浮いた、そのまますかさず胴を薙いでフエルサを吹き飛ばした。ブリージョはまだ追い討ちをかける為、フエルサの吹き飛んだ方へ迫った。


「もう、そこまでだ母さん。フエルサはきを失ってるし、母さんは目が赤くなってるぞ!」

横から父が母の持つ箒を手に取って静止させた。

「あらやだ。ダメねついつい本気でやっちゃた。」

「はぁ〜。やっちゃたじゃ無いだろ〜。」


「フエルサ、わかったかしら?自分の実力。そして、私の強さ。フエルサが何もできなかったのは、私のことを何も知っていなかったから。もし、自分の実力がわかっていて、私の強さを知っていたら表に出て来なかったでしょ?」

腹を抑えながら、蹲ったフエルサは黙ったまま頷いた。いつも優しい母がここまで強いと思っていなかった。正直、甜めていた。

「だから、さっき今自分が出来ることを身に付けなさいって言ったの。まずは、体力とか技術とかね。次に、敵を知る事、まあ、敵を知るって言っても出来る事は限られているんだけどね。あと、そこで伸びているアクアちゃんとやっていくしか無いんだから、アクアちゃんの事もしっかりと知らないとね。」

「・・・」

黙りこむしかないフエルサだった。

「強くなりたいのはわかったわ。明日から、私たちが鍛えてあげる。私が、槍の稽古をつけて、モンスターとかの勉強はお父さんが教える。それで、いいわねお父さん?」

「俺はそれでも構わないが、それでフエルサはいいのか?」

「もちろん!!」

先ほど、コテンパンにやられた事をすでに忘れたかのように笑顔で答えるフエルサであった。

「じゃあ、みんなでお家に入りましょ。明日に備えてたっぷりとご飯食べて、疲れを癒しましょ!!」

フエルサは伸びたアクアを抱きかかえ、気持ちが晴れたように家に入っていった。


。。。


「ブリージョ、最後のは本当にまずかったぞ。」

「切り上げた瞬間ね、あの子眼が赤くなってたのよ。」

「本当かよ。あいつも赤眼になれるのかよ。」

「多分、無意識じゃ無いかな?けど、今日はアクアちゃんと契約したところでしょ、だから、10秒も持たないうちに倒れちゃうよ。」

「ブリージョもたまに魔力切れ起こしてぶっ倒れてたもんな。」

「私の場合は1日寝れば元に戻るけど、力の使い方が分からない子が使うと2、3日まともに動けなくなるのよ。だから、明日から力の使い方も教えてあげる事にしたのよ。」

「そういう事か。狩りに行く前に色々と教えておいても悪いことも無いからな。」

「よろしくね!」

「はいよ〜。」


。。。


『アクアごめんね、僕のせいで』

『大丈夫だよ〜。加減してくれてたよ〜。だから、この通りピンピンしてるよ〜。』

『僕、焦り過ぎたね。君の事何もまだ知らないし、自分の事何もわかってなかった。』

『僕もフエルサの事何も知らないからいっぱい教えてね〜。』

ベッドの上で反省するフエルサとアクアであった。


2日に一度は上げようと思っていた矢先、娘がおたふく風邪にかかり、

面倒を見るため断念しました。

回復してきたようなので、これからは頑張って書きあげるようにします。

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