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決意

 契約をしたフエルサはアクアと一緒にご飯を食べていた。

『美味しいね〜!!』

「うん!これを食べたらみんなの元に帰るからね!!」

『は〜い!』


 食べ終えて、立ち上がると上空から小型の竜、ワイバーンがバサバサと音をさせながら迫って来た。その上には恰幅の良い男性が乗っていた。


「フエルサ!!こんなところにいたのか!探したぞ!」

「父さん!!」

「一人でウロチョロするな!」


 ゴン!!


 フエルサは頭に父の大きな拳骨をもらった。何も言わずに勝手に離れ、ちゃんとした装備もせずに森の奥まで来ていたのだから拳骨をもらっても仕方がなかった。


「お前は森の怖さをわかってない!たまたま、魔獣たちがいなかったからよかっただけで!!」

「ごめんなさい。心配させるつもりはなかったんだ。」

 目に涙をいっぱい為、謝った。フエルサの父は反省してるのを見てそれ以上多くは言わなかった。

「みんなの元へ送ってやるからこいつに乗れ。ところで、その丸っこいのはなんだ?スライムに見えるが。」

「さっき、怪我していたのを助けた。このまま放っておくと、死んでしまうと思って契約した。」

「は〜あぁ??最弱のスライムと契約って何を考えているんだお前は!!」

「父さんこの前言ってたでしょ?一緒に強いモンスターと戦ってそれを従えろって。そいつも契約するから問題ないでしょ?」

「はぁ~。やはり、わかってないようだな。そいつと契約したせいでごっそりと魔力を持って行かれてるんだぞ。モンスターテイムってのはだな、普通に魔法を使ったみたいに休んだら元通りって訳にはいかないんだ。元々持っている魔力の大本部分を切り取った感じになってるから、次にモンスターを手懐けようと思うと大本の部分を増やしてからしか無理なんだよ。」

「えぇー!!じゃあ、僕は当分アクアとやっていかないといけないの!?」

「お、そいつの名前はアクアって言うのか、宜しくな!まあ、そういう事だな!はっはっはっは!」

「うぅ~、どうしよう。」

「落ち込むのはまだ早いぞ!魔力量を増やす方法はまだあるからな。モンスターや魔獣を狩りまくって強くなればいいんだよ!この冬越えたら、毎日、俺と一緒に狩りに出よう!と、その前にあそこにいるはぐれたワイルドボアを!」


 そう言うと、父はすっと剣を抜き、ワイバーンと共に3メートル程の大きさのワイルドボアに一気に迫った。ワイバーンでまず、ワイルドボアの気を引き付け、父は背後へと回った。ワイルドボアはワイバーンに突進を仕掛けに行くがひらりと右へと旋回をされた。父のワイバーンは非常に賢く、躱しながらワイルドボアの左目に向かって爪を立て引っ掻きえぐっていた。父はその機を逃すわけがなく、一気に回り込み、心臓に向かって剣を立てた。なんの抵抗も無いかの様にスルスルと心臓に届いたようだ。剣を抜き去ると、大量の血が溢れた。

「ピギーーー!」

 大きな鳴き声と共に大きな身体はズドーン!!と音を立て倒れた。


「フエルサがこんな所まで来たおかげで、いいのが狩れたな!こいつ重そうだし、もう一体ワイバーンを呼ぶか。」

 父はそう言うと、念話を飛ばしもう一体を呼んだ。どうやら、上空に待機させていたようで直ぐに来た。ワイバーンに対し、ワイルドボアの運搬を頼み。僕らは最初に来たワイバーンの背中に乗り、皆の元に帰った。


『お父さん強いね〜!』

『そうだろ!!自慢の父さんさ!!』

 アクアはフエルサの父の強さに感動していた。フエルサは強い父に憧れていた。フエルサもワイバーンなどの竜種を従えるのを目標にしていた。少しでも父に近づくために。父は集落の外で有名であった。冒険者であった父は、フエルサが出来た時に引退をし、この集落へ帰ってきた。フエルサは幼少の時から父の冒険の話をいっぱい聞かさ、父に憧れたフエルサは、成人した時に集落を出る事を決めていた。父の背中を追いかける為に。アクアと契約したことで、父と一緒に毎日狩に出れる約束が、とても嬉しくワクワクし沈んでいた心も晴れていた。


 そうこうしていると、森で開けた場所へたどり着いた。

「おーい!みんなー!!」

 声を出し、手を振って、休憩をしていたみんなに無事を知らせた。

「無事でよかった。勝手にどこかに行ったらダメじゃないか。」

「これからは心配させるなよ!」

 大勢の人たちに心配をかけさせ、父以外にも捜索もさせてしまっていたようだった。

「ほら、フエルサ謝るんだ。」

「皆さん心配させて、ごめんなさい。」

 深々と頭を下げ謝った。すると、集落の長が、

「頭を上げぇ。生きていたんじゃ。無事ならええ。次から気をつけるようにの。」

 そう言って、この場を収めてくれた。

 すると、周りの人たちがフエルサの肩に乗っているアクアに質問やヤジが飛んだ。

「お前、もしかしてスライムと契約したのか?」

「よくそんな最弱なやつをパートナーに選んだな〜」

「もしかして、そんな弱っちいモンスターと契約する為にみんなと離れたのか?」


 フエルサはただでさえ、皆に心配をかけた事で弱っていたのに、追い打ちをかけるように、アクアとの契約をボロクソに言われて涙を流してしまった。


『フエルサ〜。ごめんなさ〜い。僕のせいで〜・・・』

『いいんだ。僕が決めた事なんだから。そして、今僕は決めたよ。』

『うん?何を決めたの〜?』

『僕は、君と強くなる。ただ、強くなるだけじゃない。みんなが君を、いや、スライムと契約したくなるようにしてやる!だから、アクア!今日のことは絶対に忘れないようにしよう!!』

『わかった〜!フエルサ、絶対に強くなろうね〜!僕は弱いけど死なないよ〜死なないから僕なら強くなれるよ〜!』


 皆から受けた屈辱がフエルサたちを強くさせた。

 今日の決意が彼らを英雄へと導く始めの一歩となった。

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