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初めての女

作者: 喜久之湯

「ん~もう大好き」

 そう言いながら、女は俺に抱きついてきた。

 まったりとした時が流れている。レースのカーテンは柔らかに波をうちながら午後の日差しに揺れていた。


 こうして女の胸もとに身体を預けていると安心する。本来なら、男の俺が抱きかかえなければならないことは百も承知だ。だが、今は甘えておこう。

 俺が心から和んでいることを笑顔で伝えると、女は目じりを下げて微笑み返してくれる。二人に言葉はいらなかった。互いにその存在を求め合う関係。ただ見つめているだけで心が通う。こんなに強い信頼関係って、今まであっただろうか。

 実は、初めて親密になった女だった。当然まだ俺は童貞である。笑いたい奴は勝手に笑え。そんなことは何も慌てなくていい。

 付き合い始めてまだ半年ほどしか経過していなかった。身体が結ばれる前に俺はやるべきことが山ほどある。心だってまだまだ未熟だ。こうして、触れ合っているだけで今は充分満足なのである。女のほうも、求めては来ないし……。


 思い出した。

 乳房なら見たことある。見るどころか、乳首を口に含んで吸った。女は瞳を潤ませて俺を見つめる。その様子を薄目を開けて見返す。至福の一時。

 女は安心して身を任せてくれる。気が付いたら毎日このプレイをやっていた。そのためなのかどうかは知らないが、女は胸をはだけやすいデザインの服ばかりを着ている。俺が求めると、女は何のためらいもなく片方だけ乳房を出す。それ以上脱ぐことは決して無かったが。


 女には他に男がいる。最初からそれは知っていた。と言うか、気が付いた時にはその男と同居をしていたのである。どうやら、俺が後から割り込んだ形のようであった。俺たち三人は、ずっと一緒に暮らしているためか仲は良い。何げに顔立ちも似ていた。

 ただ女はその男と居るときだけ、何やら難しい話をよくしていた。俺にはその内容がさっぱり理解出来ない。でも、そんなことはどうでもいい。俺たちは愛で繋がっている。そう感じさせる何かがあった。


 ここだけの話だが……

 俺はその男に抱かれたことがある。最初は驚いたが、何故か嬉しかった。〈変態〉という言葉が脳裡をよぎるが、そうではないという確信がなぜかある。

 正直にツラツラと本音を告白したからなのか、気が付いたら俺は不覚にも大量に失禁していた。下腹部が気持ち悪い。泣きたくなった。思いきり泣いてしまおう……。


「急に泣き出しちゃってどうしたの……。あらあら、こんなにたっぷりオシッコしている。さぁ、オムツ替えまちゅよ~ 」


 初めての女……。

全ての男にとって、それは母である。

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