03.未修正
14日、2年6組はホワイトデーの話題で持ちきりだった。
「おっはよー!!」
瀬里はいつもよりテンションが高かった。
「おう! ぬまおから何かもらったな?」
「うん!」
「俺からも。友チョコのお返し」
南境は瀬里にお菓子を渡した。
「二人共ー」
蛇田がこちらに小走りで来た。
「蛇田、ナイスタイミング! これお返し」
南境は蛇田にも瀬里と同じ物を差し出した。
「ありがとっ! でね、楽しんでるとこ悪いんだけど、また手紙もらった!」
蛇田が手紙を見せてくれた。11日の物と同じく、ノートの切れ端に殴り書きで、差出人は〝匿名希望の男子〟だった。
『蛇田さん達なら調べてくれると思っていたよ、ありがとう。そこで注意してもらいたい事がある。今日、例の二クラスにあいつが何かするらしい。内容までは教わらなかった。そして、2年生が終わるまでにもっと大事になるかもしれない。その前に全て暴いて止めて欲しい。俺には頼む事しかできないんだ』
「手紙って何ー?」
クラスの口うるさい女子が取り巻きと一緒に割り込んで来た。
「……えっ!? やばっ!! これ、皆に言った方良いって!」
手紙に目を通した女子達がさっそく散り、各自同級生に知らせた。
「いずれ、皆気を付けないとだもんね……」
蛇田が苦笑いした。
手紙の事は学年中に広まった。そんな中、昼休みの6組には南境と蛇田の友人が来ていた。
「南境さん、3組また揉めてた」
海椰が3組で今朝起きた事を見たまま報告した。それを聞いた南境は鮎川を見舞い、彼女とその仲間達が真犯人を探すと決めたのを見届けた。予鈴と共に教室に戻り、蛇田、瀬里と丸沼に鮎川達の事を伝えた。
5校時は世界史Aだが先生が急病のため自習になった。手が空いていた3組の副担任が様子を見に来た。
「勉強中悪いけど話すね……お昼頃から変な手紙の話聞くんだけど、皆信じてないよね? 他の先生はまだ知らないみたいなんだけど、私はクラスの子に聞いたの。くれぐれも、信じないで」
「はーい」
「へーい」
クラス中がかったるそうに返事した。彼女の3組での悪評も聞いているし、元々嫌われている先生なので皆忠告を聞き流していた。
放課後、南境が教室で荷物をまとめていると美澪が来た。
「南境さん……私達も殺されたりしないよね?」
今まで知られなかった1組の殺人疑惑や盗難事件について明かさた事で不安を訴える生徒もいた。美澪もその一人だ。
「大丈夫だ。そうなる前に俺や蛇田が犯人突き止めるから」
「本当に? そんな事したら、南境さん達危なくない?」
「そうだな……確かに、美澪の言う通り危ないかもしれねぇ。けど、何もしないでお前や他の皆が何かされたらまずいだろ? それに」
「それに?」
「危なくなる前に止めるつもりでやってんだ。あいつらには何もさせねぇよ」
南境の言葉を聞いて、美澪は安心したようだ。
「良かった……私には応援する事しかできないけど、頑張って!」
「おう! あと、美澪、ちょうど良いとこに来たな」
南境は美澪にお菓子を渡した。
「部活前に渡そうと思ってたんだ」
「ありがとう!! いただくねぇ」
美澪が帰った。
(これで少しは気が軽くなったかな)
不安な状況は未だ変わらない。けど、一人でもそれが解消できたから良いかもしれない……南境はそう思いながら教室を後にした。




