もう一人の女
3話目です!
「上原ね…分かった、覚えとく」
「ああ…別にどっちでもいいよ?」
「一応人の名前くらいは覚えておかねえとダメだろ」
俺は隣のベッドに座りながら上原を見る。服を着替えているせいか、パジャマなので少し肌が見えている…ったく…少しは考えろよ…俺は目をそこから逸らし、保健室の入り口の方にへと目を向ける。何もないふりをしていたが、彼女は気づいたのか、すぐさま見えないようにと布団をかぶった。
「大丈夫だって、見ねえから」
「そんな事言ったって安心できない…一応お前男なんだし…」
「一応って何だよ…それとさっきと微妙に口の聞き方変わってね?」
「まぁ…しょうがないだろ…普通は敬語だ」
いや…そりゃそうだけどさ…男みたいな口の聞き方だな。言う気はねえし関係ないがな。
俺はもう体調は大丈夫だなと思い立ち上がる。
「大丈夫そうだし…俺もそろそろ行くよ。お大事にな」
「ああ…悪いな、ここまで運んできてもらって」
「大丈夫だ、気にするな」
俺はあまり気持ちのこもってない言葉を言うと上原は俺を入り口まで見送ろうとしたのか立ち上がろうとするので俺は止める。
…危ないのに無理すんなよ…俺なんかのために無理してさあ…。顔だって赤いし。
「じゃあな」
俺は最後に失礼しましたと言って、あいつらの元へ戻ろうとしたが、今どこにいるかが分からない…何処に行ったんだあいつら?あの時聞いとけば良かったな…とにかくサボるついでに探しに行くか。
「おい上本ーこっちだ!」
俺が資料室や理科室やと色々回っていると、原田達は空き教室にいた。まあ…思ったより早く会って良かったな。
「悪いなお前ら」
「おう、大丈夫だ。つーか何してきたんだよ?」
「あぁ?そうだな…知らない奴の看病」
「はい?意味が分からねえよ上本?」
いや正確には看病はしてなくて運んできただけどな…ほら、思った通り一馬達は何言ってんのみたいな顔してるしな。適当に言ったから仕方ねえか。
「そういう事だ。もうこの話は関係ないだろ」
「はぁ…まあいいよ。じゃあこれから話するからついていけよ!」
風早はすぐさま話を乗り換えてみんなをまとめる。といっても話題は悪い話ばっかだけどな。俺と一馬はほとんど喋らずただただ見ているだけ。別に会話に乗り込む事も必要ないし、今は風早達も俺たちがいる事を忘れているだろう。
「おい…駿…抜けるか?」
「一馬がいいなら…」
だから俺たちはこうなると、いつも一馬と俺で途中から抜ける。
「ごめん!俺たちもう抜けるわ!」
「はぁ?んだよ原田と上本ー!付き合い悪いじゃん!」
「いやさー、そろそろ授業には出ておこうかなと思ってな!」
「しょうがねえな…じゃあまた一緒に抜けようぜ!」
「ああ!悪い!」
何とか関谷達を説得させ、俺たちは空き教室を出る。俺あのざわざわした空気が嫌いだ。静かな空気がいい。だって…あの空気にいても俺の話題など出しもしないだろう。…他人の話なんか興味がない。何故他人の事に興味を持つのかが分からない。
「どこいく?」
「授業に戻るんじゃねえのかよ?」
「お前あれ嘘だって知ってるだろ?」
「まあな」
俺と一馬は適当にどこかふらつこうと決めて歩く。特に行き先もなく会話もないので暇しかなかった。…これだったら授業に戻る方がいいんじゃないのか?
「なぁ、一馬…二時間目には戻らないか?」
「ああ…そうだな。これだったら時間の無駄だ。適当にチャイム鳴るまでここで座っていようぜ」
俺たちは自分達の教室に近いベンチに座りまたしんと空気が流れる…
「おい、駿…お前さ、高3になってから好きな人は出来ましたかー?」
いきなりの質問はそれかよ。
んなに人の事が気になるのかてめえは?
「いねえよ。そもそも作らねえ」
「そう言って奴が作るんだよ」
「あのな…一馬。俺は普通のやつらとは理由が違うと思うぜ?ただ単に俺は自分の空気を乱されたくない」
その瞬間チャイムが鳴り俺は立ち上がる。
一馬はそこのベンチから動く気配は無かったので俺は一馬を置いて一人で教室に戻るのであった…。
題名はかなり悩んでこれにしました…。そして今で新ヒロイン登場です。名前は上原希です。これからたくさん出してくるのでどうぞよろしくお願いします。